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第10章 6 夜の公園

 夜、ジナイーダと二人きりで会う約束をした__そう報告すると皆が反対した。ベゲモートでさえ怪しいと言ってコーリャを憐れむような目で見た。

「夜に、一人で来いだなんて! とんでもない女だ」

 マリヤはかっかしている。

「罠かもしれないわ」

 アリーも真面目にそう言った。

「あの子は、罠なんて仕掛けるような子じゃないよ」

「すっかり騙されちゃって! あんたがそんなに馬鹿だとは思わなかったよ!」

「まあまあ、マリヤ……」

 シロンがいきり立つマリヤをなだめる。

「コーリャを彼女に会わせたがったのはマリヤじゃないか。取りあえず相手の出方を見るのも手なんじゃない?」

「だけど、もしコーリャに何かあったら……!」

「おれがこっそりついてくよ」

 ベゲモートが名乗りを上げる。

「おれも、その女の顔が見たくなってきた。お前もだろ、シロン?」

「僕は……うん、まあね」

「どいつもこいつも!」

 マリヤはすっかりふてくされてしまった。まだぼんやりしているコーリャにシロンが提案する。

「僕とベゲモートがついていく。彼女と合う間は、隠れてるよ。それなら問題ないだろう?」

「でも……約束を破ることになる……」

「ばれなきゃいいだけだろ。何も、お前の逢い引きに顔突っ込みやしないぜ」

 ベゲモートの明け透けな言い方にコーリャはどぎまぎした。

「決まりだね。マリヤが残ってくれるなら安心して家を空けられるし」

 シロンが、そっぽを向いたままのマリヤに笑いかけた。

 公園を見つけるのはさほど難しくはない。ジナイーダの家の周辺で公園といえば一つしかなかったからだ。公園内の林の中に文豪の作品を模した銅像や、滑り台などのいくつかの遊具が点在している。夏祭りの時期には出店が立ち並び、白夜を徹して賑やかに人々が浮かれ騒ぐ舞台となる。しかし今は、ランニング中の大人や良い気分のカップルがたまに通り抜ける程度で、公園全体がしんと静まりかえっている。

 公園に辿り着いたコーリャは時差を直した腕時計を見た。8時50分。ジナイーダがせっかちな子ならもう到着している頃だろうし、逆に、スタンダードな女の子として、コーリャより遙かに遅れてくるかもしれない。

「どこで待ち合わせるって? 公園ったって広いぜ」

 ベゲモートが囁いた。

「あ、聞いてなかった」

「まあせいぜい頑張って見つけるんだな。おれたちこっそり見張ってるから」

 ベゲモートはそう言うなり、シロンを引っ張って木立の向こうに姿を消した。道中、ベゲモートがしきりと話しかけてくるのには少し辟易した。今じゃ、彼が育った孤児院の食事のメニューまで知っている。

 九時になった。コーリャは酸で表面が少しただれた銅像の側のベンチに腰掛けた。ジナイーダに会うと思うとどきどきする。少しだけ猶予があるのが今はありがたかった。

「__やっぱり、ここにいると思ってた」

 美しい声が急に響き、コーリャは飛び上がった。

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