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第10章 5 ベゲモート

 高揚した気分のまま戻ってきたコーリャを家で迎えたのは、シロンと、何とアリーに石を投げたベゲモートだった。マリヤが大声を上げ、彼の肩を抱いた。

「また来てくれたんだね? ベグ!」

 彼女の後ろでアリーがおののいている。マリヤに歓迎されて満更でもなさそうなベゲモートだったが、アリーと目が合うとぷいと顔を背けた。

 事情を知っているシロンが、笑いながら説明する。

「皆が出て行って十分ぐらい経ってから、マリヤに会いに来たんだよ。彼女は留守だから、お茶を飲んで待っていてもらったんだ。そしたらベゲモートはね、僕をからかいにきた同級生を追っ払ってくれた! 本当に助かったよ。あいつら、虫の死骸を割れた窓から流し込もうとしてたんだ」

「いや、まあ、ガラスを割ったのはおれだから……」

 ベゲモートはちいさな声で言った。

「それにあいつら、おれのことも馬鹿にしてきたしな」

「やるね、ベグ。それで、あたしに用事って?」

「別に……何か話があるわけじゃないけど……」

「そうかい。この子にはあるんじゃないの?」

 マリヤは、隠れているアリーを前に出した。すっかり怯えて震えているアリーと向き合い、ベゲモートは固まった。

「アリーも、ベグに言いたいことがあるよね」

 マリヤが静かに促すと、アリーはゆっくりうなずいた。

「……ごめんなさい」

 頭を深く下げるアリーをじっと見て、ベゲモートはマリヤに問いかける。

「こいつは悪くないって、あんたは言ってたじゃん」

「それでも、謝りたいんだってさ。事務所や母親の代わりに」

「わたし……クラブに入った人のこと、よく考えもしてなかった。ただ自分が辛いばっかりで……」

「もう、いいよ」

 ベゲモートは溜息をついた。

「おれが怒ってるの、あんたじゃないみたいだ。孤児院におしかけてくる婆さんがおれを勝手にクラブに入れるのが一番むかついたんだ」

「ベグ、あんたもアリーに言うことがあるね」

 ベゲモートはマリヤの厳しい顔を見上げて、アリーに向き直った。

「おれも、ごめん。石投げたりして」

 アリーは小さくうなずいた。

「皆部屋に入ったら? 沢山歩いて疲れているでしょ……コーリャ?」

 シロンが心配した。

「コーリャ、どうしたの?」

 その言葉で我に返ったコーリャは、にへへと間抜けな笑みを浮かべて応じた。

「なーんでもないよ……」

 マリヤがコーリャの足を踏む。

「この、色ボケ!」

「何があったのか聞きたいな」

 シロンが苦笑いしながら言った。

「ジナイーダって、そんなに恐ろしい人だったの?」



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