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第10章 2 手紙の主に会いに行く

「……何で?」

「どうやら、彼女はあんたに深く関わりがあるらしい。国際郵便なんて金のかかる手段を使ってまであんたに手紙を送り続ける理由を知りたくないか?」

「知りたいけど……手紙にはなんて書いてあるの?」

「それは、あたしの口からは言えない」

 困惑するコーリャの脳裏に、初めて手紙を読んで唖然としていたマリヤの姿が浮かんだ。

 そうだ、あの時だったんだ。マリヤがモスクワに行こうと言い出したのは。

「このために、僕たちはモスクワに来たの?」

 コーリャの声は、少し震えてはいやしなかっただろうか。

 マリヤは、黙ってうなずいた。

「おかしいよ、マリヤ。そんなに大事なことなのに、どうして肝心の中身は教えてくれないの?」

 コーリャは珍しく腹を立てていた。

「答えてよ、マリヤ。そんなに教えたくないなら、モスクワなんか来ないで、手紙を燃やしちまえばよかったじゃないか!」

「無駄だ。また何回も送られてくるだけだから」

「このジナイーダがどんな人か、マリヤは知っているの?」

「知らないけど……」

「コーリャ」

 アリアズナがおずおずとコーリャを宥める。

「手紙に書いてあるのは、とてもこんな昼間に外で話せないようなことばかりなの。コーリャに傷ついてほしくないから、マリヤもシロンも黙っていたのよ」

「じゃあ、何で今から彼女に会いに行こうとしてるの? 意味が分からないんだけど」

「そいつの企んでいることを、あんたと一緒にあたしらも知りたいからだよ」

 マリヤが呻くように言った。

「そいつは、あんたを自分の手が届くところにおびき出そうとしている。いつかあんたがロシア語を読めるようになってから一人で手紙を開いた時、彼女によって地獄に引きずり込まれるのがあたしは怖いんだ」

「そんなにやばいの……」

 コーリャは手の中の封筒が毛虫にでも変わったように恐る恐るつまみ上げた。

「今のあんたには、あたしたちがいる」

 マリヤは、そっとコーリャから手紙を取った。

「仲間が側にいる方が、できることは多いよ」

「ジナイーダと戦うつもり?」

「まだ……分からない」

 アリーが、アカトヴァ邸は十軒ほど先だと告げた。マリヤが駄目押しのようにコーリャに尋ねる。

「どうする。引き返す?」

 今更何を言うか。

「まさか。二人ともついててくれるんでしょ?」

 そしてコーリャは肩を怒らせて歩き始めた。慌ててマリヤたちが追いかけてくる。



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