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第5章 1
葬式が終わり、コーリャはぼうっと会場の隅っこにいた。先ほど伯父に言われた事実が彼にあまりにも重くのしかかっていた。
妹は、ずっと死にたかったんだよ。伯父はそう言った。コーリャが生まれる前から。コーリャの父親は名も知らないロシアの兵士だ。街から避難する母親を捕まえ、路上で犯して逃げたのだ。叔父はそこまでコーリャに説明した。
今、コーリャの手元には、2枚のメモがある。男の客と、シロンの連絡先だ。コーリャを案じながらも。ただの観光客はロシアに帰るしかない。連絡先を交換したけれど、いつ会う算段もつけられない。
シロン。彼とその母親がマリウポリに何をしに来たのか。コーリャはそれを心配していたはずだったけど、すっかり頭から吹き飛んでしまった。アカトフ。それが男の客の名前だ。モスクワに住んでいて、いつか遊びにおいでと、呆けているコーリャに言った。




