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 ひよこに転生して、ささやかな喜びを感じた。

 俺は絶賛・絶世のハーフ美女の膝枕を堪能中だった。

「親が見つかるまで、保護しよう」

「あ、ありがとうな」

 人形のような目に、俺は赤面してしまった。学内をとてとて歩いていたところを、白くなめらかな手ですくって休ませてくれた。彼女は俺が喋っても、全く動揺しなかった。

「自己紹介まだだったな。俺は、リューガ。ここでは親じゃなくて人探しをしている」

「自分は、(もり)エリス。本学の文学部日本文学(にほんぶんがく)国語学科(こくごがっか)教員である」

「そうなのか、エリス、でいいか?」

 構わない、とエリスはうなずいた。

「エリスの同僚に、宇治(うじ)紘子(ひろこ)がいるはずだ。どこにいるか知っているか?」

 文学の先生だから、これだけで「俺が探している人物は、宇治紘子だ」と分かるだろう。

「宇治なら、研究棟にいると考えられる。二限は講義が入っていないため、個人研究室または共同研究室にて事務を行っている可能性が高い」

 儚げな容姿をしているのに、固いしゃべり方をするよな。シンドーク(9の世界で会った仲間だ)と馬が合うかもしれない。

「研究棟に連れて行ってくれ」

 エリスはまばたきをせずに、俺をハンカチに包み、立ち上がった。早くに「金時(きんとき)」を助けてやれそうだ。

森君(もりくん)、そこにいたのかね。心配したのだよ」

 色気をわざとにおわせている声。いけすかないロマンスグレーのおっさんが、走ってきた。

「出勤時に女性達に囲まれ、君と離れ離れになってしまって……抜けるのに手間取ったのさね」

 男の勘がはたらく。アイツはとんでもない「好色男(こうしょくおとこ)」だと。三千人斬(さんぜんにんぎ)りは少なくともしているな。

「上司の近松(ちかまつ)である」

 エリスがそっと教えてくれた。いい香りだ。ずっとそばにいられないのが、惜しくなる。

「ふぬ、そやつは?」

 長身にして筋骨隆々な近松が、俺を今すぐにでも叩っ斬りそうな気を放ってにらんだ。

「リューガである、宇治先生を探しているとのこと」

「捨てなさい、そやつは欲情の匂いが漂う」

 アイツは、俺の女性遍歴を察しているみたいだ。

異類婚姻譚(いるいこんいんたん)が成立すると、先生はお考えなのだろうか」

 エリスもあっさり官能的なことを言う。

「君の身を案じているのだよ。私にひよこを渡しなさい、トマト煮込みにしてくれる」

 近松が腰に差した物を抜いた。

「おい、短刀じゃねえか! 捕まるぞ!」

「口を慎め、ひよこ。帯刀許可(たいとうきょか)は役所から下りている。なに、痛みは与えぬよ、士族(しぞく)の誇りにかけて、私が責任を持って(さば)くゆえ!」

 刀が俺の胸に迫る!

本朝(ほんちょう)は、殺生(せっしょう)を禁じる教えがあると聞く」

『……!!』

 俺と近松の目が点になった。エリスが金属の百合(ゆり)で刀を防いだのだ。

「リューガ、逃げよ。自分は案内ができない。『日本文学(にほんぶんがく)課外研究(かがいけんきゅう)部隊(ぶたい)』に頼ることを勧める」

「お……おう、すまん!」

 ここはエリスに任せよう。「日本文学課外研究部隊」だな、しっかり覚えたぞ!!

 リューガ君、申し訳ない、エリスor近松には憑依させてやれないのです。どちらに憑依してもかなり得をするのだが……近松が許してくれない、そしてトマト煮込みにしてやれない。とにかく小さなあんよで走るのだ、あのヒロイン達と邂逅を果たすのだ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんにちは! 早速遊びに来ました!! そういやリューガの本名は灰谷勇でしたね。 うっかり忘れてました。 エリスとリューガの掛け合いが面白いです♪ さて、笹本はどんな形で登場するかな?
[一言] 拝読しました。 リューガに嫉妬してしまう近松先生。 ここで、食われるかと思えばエリス先生が助けてくれましたね。 さて、次に出会うのは誰でしょうか。 チキンのトマト煮も採用さて貰えて少し…
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