会議の裏で
短いです。
オーディンとギュイオットが二人きりの会議を開き側近も外され、それぞれの側近四人で話す機会があった。新人騎士パウエルとマルコムは犬猿の仲らしくお互いをいないものとして扱っている。パウエルはもともとが寡黙な質だからそう気にならないが、マルコムは神経質さを隠せていない。
その影響かメイドのシドニーもおどおどしていた。
「お茶はいかが?」
シーラが年長者としてその場を納めようと努めてみる。
「俺の分はシドニーが淹れろ」
「……はい」
あくまで彼女はオーディン付きメイドであって、マルコムに雇われているわけではないのに、シドニーを己の従者として扱う姿に違和感を覚えた。それでも騎士とメイドであればメイドが茶を淹れることのほうが自然なことだし、シドニーが一番年若いこともあって強く言えずにいる。
ただ今この時不機嫌なだけ、単にシドニーの淹れる紅茶が好きすぎるだけ、などもありえる。
「どうぞ、ホーランドさま」
「ありがとうございます」
シーラのほうがパウエルより歳上とはいえ、この最低限のやりとりが普通だろう。なのにすぐそこでは無言でティーカップの受け渡しがなされていた。
「厨房に行ってお茶請けをいただいて来ます。シドニーさん、選ぶのを手伝ってくださいませんか?」
「はい、ご一緒します」
シドニーの表情がほぐれた。
男二人を残して部屋を出て、ゆっくり歩く。
「騎士の方々は苦手かしら。ベッキングハム公爵さまは冷たくてらっしゃる?」
「ベッキングハム公爵さまはお優しいです。難しいこともおっしゃいません。その……」
出てきた扉を見つめるシドニー。
ではやはり問題はマルコムか。
「なにをされた、というわけではないのですけれど」
「アルノさまはいつもああいった態度で?」
「いいえ、いつもというわけでは。ときおり……不機嫌になられてあのように」
「それはなにかとやりづらいでしょう。シドニーさんが困ったりお話したくなったら、いつでも声をかけてくださいね」
少女は殊勝にお礼を言った。