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短編(恋愛)

目が覚めたら牢屋でした。

作者: aki.

前半:主人公視点。

後半:???視点。


 





「あの、…貴方は誰ですか?」

「それは此方の台詞だ」




 気が付いたら、薄暗い牢屋の中に居た。


 隣には金髪碧眼のイケメンさんが腕を組みながら壁に背をくっ付けて立っていて、若干イラついているのか時々舌打ちが聞こえてきている。



 えーと、どうしてこうなってるんだっけ?

 よし。よーく思い出してみよう。


 まず、私の名前から。

 私の名前は"セリカ・ワインレッド"。

 年齢は十九。

 髪は薄く茶色の混ざった赤色で、目は澄んだ水色。

 うん。ここまでは大丈夫。

 どうやら記憶喪失ではないようだ。



 次に、今日の私の行動。

 今日、私は何をしたのか。




 ……………。


 あれ?



 私は今日、………、何してたんだっけ?




「んん?」



 眉間に皺を寄せて、一生懸命考える。


 うーん?

 何故だ。何も思い出せない。



「あの、つかぬことをお聞きしますが、…貴方のお名前を教えていただけますか?」

「……………」



 聞くと、彼は横目で私を見て小さく舌打ちをする。


 ただ名前を聞いただけなのに舌打ちされました。イケメンさんに舌打ちをされると凄くショックです。



「………アッシュだ」



 めんどくさそうに肩で息を吐いて、アッシュさんは言う。


 彼の名前は"アッシュ・ライトグレー"

 年齢は私より二つ上の二十一歳で、さっきも言ったけれど、金髪碧眼のイケメンさんだ。


 どうやらアッシュさんも自分の名前以外は何も思い出せないらしい。

 だからイライラしているんですね。理解です。



「…私たち、何でここに居るんでしょうか?」

「さぁな。わかれば苦労はない」

「ですよねー」



 はは。と、力なく笑う。



「……………」



 牢屋全体を見てみる。


 牢屋の形は、一般的な真四角タイプで、真正面にある石壁には小さな窓が一つ。背後には鉄格子の扉と、両端の石壁に松明が一つずつ設置されている。


 天井は高くもなく低くもなく。

 人一人を収容しておくには十分すぎる広さの牢屋だった。



 はあ。と、息を吐く。


 今の季節が冬だという事もあってか、吐く息は白く、牢屋の中も少しだけ寒かった。



「…この扉、鍵掛かってるんですか?」



 身体を反転させて、扉の錠前を見てみる。

 その錠前は奇妙な形をしていた。

 なんか、…ぐにゃってるっていうか…、(ねじ)れてるっていうか…、見た目、これ明らかに何やっても開かないだろうなと思えるくらいの奇妙な形の錠前。


 鉄格子の間から手を伸ばして持ってみると、それは結構な重量感があった。



「壊したり、は…出来なさそうですね?」

「剣があればそうしていただろうな。…だが、生憎取り上げらたのか今は持ってない。剣があれば、こんなとこさっさと出てる」



 アッシュさんは言う。


 私は、鉄格子を握ってガチャガチャと音を立てた。音が牢屋に外に響き渡ってエコーが掛かる。



 私たちの他には誰も居ないようで、シーンとしていた。



「…………、はぁ」



 ずるずるとその場に座り込み、顔を足元へ向ける。


 一体誰が私たちをこんな所に閉じ込めたのかわからないけれど、せめて閉じ込めた理由だけは紙ペラ一枚でいいから説明して欲しい。



「…何か策を考えないと、俺たちずっとこのままかもな」

「えっ、それは困る!」



 アッシュさんの言葉に、顔を上げる。


 確かに、彼の言う通りこのまま何か行動を起こさないと私たちずっとこのままこの牢屋で二人永遠に暮らしていかなければならなくなるかもしれない。

 それは非常に困るよ。食べ物どうするんだ。あとお風呂と着替えも。



「な、何か、ここから出る方法はないんですか?」

「…お前、さっきら聞いてばかりだな」



 はぁ。と、溜め息を吐かれる。


 …しょうがないじゃないですか。

 不安なんです、こっちは。



「残念ながら、これといって何も思い付かないな。試せる方法はあらかた試したし。八方塞がりだ」

「………………」



 八方塞がり。


 その言葉が、ドシンと重くのしかかる。

 どうしよう。顔面蒼白だ。

 顔を両手で覆う。あ。なんか泣きそう。



「ま、これも"フォルトゥナの導き"なんだろうな。大人しく受け入れようぜ」

「……どうしてそんなに冷静なんですか?」



 指の間から、アッシュさんを見る。


 さっきまでのイラついた表情は何処に行ったのか。今の彼は、何かを諦めたかのような、そんな表情を浮かべていた。



「なら、他に何かいい方法があるなら教えてくれ。考えられればだけど」



 言いながら、アッシュさんはその場に座り込む。


 私は再び鉄格子をガチャガチャと鳴らす。

 まぁ、煩いだけだ。



「………、」



 本当に、このまま何もしなければ、私たちはずっとここで二人で暮らしていかなければならない。


 アッシュさんを見つめる。

 アッシュさんは目を閉じていた。



 眠ってしまったのか。





「……………」




 ………、何も考えられない。



 私も、アッシュさんと同じく目を閉じる。

 突然、眠気が襲ってきた。

 いけない。このままでは眠ってしまう。



「……何か、考えなきゃ」



 考えなきゃ。ここから出る方法を。


 考えなきゃ。考えなきゃ。


 考えなきゃ。考えなきゃ。考えなきゃ。



 考え、なきゃ…。


 この牢屋から、出るためには、何を、すれば…いい…?









 +




「被験体A。セリカ・ワインレッド。被験体F。アッシュ・ライトグレー。催眠ガスにより一時的に眠りに入りました」



 数台あるモニターを見つめ、私は被験体二名の様子を静かに眺める。


 セリカ・ワインレッド。

 アッシュ・ライトグレー。


 この二人は、今までの被験体とは比べ物にならないくらいに優秀な人材だった。


 一回目、二回目、三回目、四回目。と、様々な実験を繰り返してきたが、とうとう私は最高傑作を生み出してしまった。そう言っても過言ではない。



 この荒廃した世界で、あの二人は新たな世界を造るアダムとイヴになるだろう。




「主任。どうされますか?」

「……次の実験の準備をしろ。"果実"を忘れるな」

「わかりました」



 眼鏡を押さえて、私は考える。


 あの二人が造り出す世界とは、一体どんなものなのか。



 私は考える。


 あの二人が造り出す世界では、一体どんな事が起きるのか。




「……ふふ」



 私は考える。


 口元を緩ませて、私は、これから訪れるであろう新たな世界に思いを馳せた。





ここまで読んでいただいてありがとうございます!


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【補足:人物設定】


セリカ:小さな村の農民娘。

アッシュ:とある王国の第二王子。


二人は誘拐されて、それから長い間ずっと牢屋に閉じ込められている。

目が覚めると名前以外の記憶がすべてリセットされるようになっているため、本人たちはずっと初対面を繰り返している。



フォルトゥナの導き→運命みたいなもの。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 様々なことを予想させる物語ですね まず思ったことが、実際に起こりそうなものですね 人間種を残すという目的 戦争……核戦争が起きて荒廃した地球 パンデミックが起きた 地殻変動など天変地異が…
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