始まりの「死」
よろしくお願いします。
――なるほど、これが死ぬという感覚なのか。
体の至るところから感じる熱と痛み、立っているのもやっとで徐々に呼吸が苦しくなり視界も焦点が定まらない。ぼやけた視界に映るのは、大柄の体格をした男。険悪な顔で見つめている。
その中でも特に大柄な男の持つ大太刀からは、自分のものと思われる赤々とした血が付着している。
――ずいぶんとあっけないないな俺。
逃げようとも抗おうともしない、ただ目の前の『死』を受け入れようとそっと目を瞑る。
「逃げないで!」
耳元に聞こえてくる、聞き覚えのない声。だがその一言以外聞こえてくる気配がない。空耳か、もしくは走馬灯の一種か、そのようなことを考えながら大男が近寄ってくるのを目を閉じて再び待つ。
「向き合って!」
――うるさい。
「抗って!」
――うるさいうるさい。
「戦って!」
――うるさいうるさいうるさい。
目を閉じると聞こえてくる声、女性の声だろうか。どこから誰が語りかけてくるのかは分からないが、その言葉の数々はとても胸に刺さった。
――静かにしてくれ、もうこれでいいんだ。
「お願い……」
――うるさい、いやなんだ。
「私を……」
――うるさい。
「たす……けて……」
――っ!
今までの投げかけとは打って変わっての突然の言葉に、目を見開く。先程同様視界はぼやけているが、少し異なったぼやけ方。
その正体は、上唇に付着したしょっぱい味で梨花することが出来た。
「なん……で俺……ないて……いるんだ……?」
そんな疑問をしていられたのも束の間。視界が暗くなり上を見上げた瞬間、目の前に鋭い刃物が姿を現し胴体に大きく斜めに切り込みを入れる。
急激に呼吸、意識が遠のく。
「大丈夫、あなたならできる」
走馬灯の如くうっすらと見える、白い人影は一言発した後、無言でこちらに手を差しのべる。
「絶対に……はな……さ……ない……」
その手を握るために手を伸ばす。
「君が……いて……くれるなら……」
なぜあんな言葉が出たのか、定かではない。ただ、彼女のそばにいたい。ただそれだけが彼の心の中を支配した。
だがそんな彼女の手を握る寸前、彼佐々木 研二は息を引き取り、人生で二度目のしを迎えた。
読んでいただきありがとうございます。人気次第で連載しようと考えています。
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