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7・私が好きになった男の人は、やっぱり趣味が悪いかもしれません

 とはいえ、言った本人もニコニコしながら少し赤くなってる。まあ私がこんな反応をしてるから、ちょっと恥ずかしくなったのだろう。


「少し、見に来ないか?」彼は話題を変えるように、そういって町の中心部を指さした。来ないか? ということは、彼の隊商が店を開いているのを、見に来ないか? ということだ。


 辺境伯領からここまでの道のりは山を越えてくることになる。そのため、山を越え終わったところにあるこの町で、馬を休ませるそうだ。そして山道を通ってきたので荷馬車の修理も必要。そんなわけで、いつもラルの隊商はこの町で2・3日過ごしていく。そのついでに持ち合わせたものを売ってくれるのだ。


 あまりよそとの交流のないこの町では、そうやってやってくる隊商の品はだいたい珍しいものが多く、町の住人たちの楽しみの一つだった。


 辺境伯領に荷を運ぶ隊商は、ほかにもまれーに通るが、だいたいは通り過ぎるだけだ。そりゃあここより向こうの辺境伯領で売ったほうが高く売れるだろう。しかしラルがいるこの隊商は、大きなもの以外は結構多くの品を、ここで商品として並べてくれる。

薬や服、光ったり音が出たりする魔道具、アクセサリーやまじないの品。私が気になるのは、最近のニュースが書かれている本だ。


 枚数は8枚くらいのものだが、売るほど刷られるものではないようで、こういう隊商が持って、回し読みさせてお金を取る。というものなのだが、そもそも識字率が高くないのでこの町で読めるのは領主様や司祭様、あとはうちの一家とあと数人くらいかな?


 内容は前世の新聞って感じだが、王政の検閲を受けてるらしく、誰かの醜聞などはかかれていない。王家や上位貴族の婚姻、貴族のだれが大臣になったとか。あとは外国どうしの小競り合いやどこかの災害とか。あとは教会に降ろされた啓示などが書かれている。まあそれだけ書いてあれば十分だ。

 とはいえ一年に4回くらいしか発行されないので情報はちょっと古くなる。人づてに聞く噂話のほうが早かったりもする。


 私はお金を払って早速その本を読ませてもらう。回し読むものなので持って帰れない。ここで読む。


「アクセサリーや綺麗な石なんかより、そういうのをまず手に取るってのも、おまえらしいな」

「情報は宝石よりも大事な宝だからね」


もっとも、この町に住んでれば宝石でも情報でも、どんな宝も持ち腐れになるのは間違いないが。



せっかく彼がきてるのに、こんなものを読んでるのは、さっきのがまだちょっと恥ずかしいからだ。


一通りざっと読み終わったので顔をあげ、本を返す。もういい加減顔が赤いのは収まったろう。


ラルは木箱の上に敷かれた黒い布の上に置かれる綺麗な石達を見ていた。


「綺麗な石ね」

「おひとつどうだい?お嬢様」

「そうねえ・・」


石は綺麗なものが多いが、ここに並べられているものはさほど高いものではない。手が出ないというほどではないが、欲しいというほどにはならなかった。


「ふむ・・じゃあこれはどう?」

と、ラルがいつの間にか持っていた石を手のひらに載せて見せてくれる。深い青色の石で、水滴を縦に二つに割った形をしている。小指の先ほどのそれはシルバーの台座に収まり鎖が付いている。ネックレスかな?


「とても綺麗だけど、そんな高そうなもの買えないわ」


「プレゼントするよ」

「ええ!?」


「実はもう、買っておいたんだ。今まで俺にトレーニング法を指導してくれたお礼だな」

「そんな! その程度でこんな高そうなもの貰えないわ!」


「いや・・コレはそんなに高いものじゃないよ。ね?」

ラルは店番をする隊商のメンバーに話を振る。


「あー、そっすそっす。坊ちゃんの言う通りで。へへ・・」

「あ・・怪しい!」あからさますぎるやり取りに胡乱な目を向ける。

だいたい、隊商の護衛に坊ちゃんってなんだよ!


「まあまあ、あんまり気にせず受け取ってよ。軽いものだからさ」

と差し出してくるが、私が、ジトッとした目を向け受け取りを躊躇しているのをみると、口の端を持ち上げたまま、顔を寄せ、笑いの質をニヤリに変えた。



「なんなら俺から、腕相撲で勝って、奪い取る。とかは?」



軽口で勝負を混ぜてきた。しかも自分が負ける前提なのはなぜだ!

いや、きっと私が勝つけどさ!!


 そう、今や私は有り余る体力を、つねに魔力に変換しており、その魔力で常時身体強化をしている。こうすることで普段から身体に負荷をかけ、さらに自然と魔力をひねり出す訓練にもなっている。

見た目の筋肉もなかなかだと私でも思うが、その筋肉が産みだす魔力のおかげで、さらにそれ以上の大パワーを産み出している。私の強さはこうやって日夜磨かれているのだ!! これも漫画で見た知識だけどな!


そうやってパワーアップしてることを彼には伝えてないが、過去の経験から自分が負けることには確信があるのだろう。


「ふーん・・じゃあ勝負しましょう?」

「いいね」


ということで結構本気で倒した。というか投げた。腕相撲だけどなんかそうなった。ごめんラル・・・。私ってばやるとなったら手加減できない女なんだ・・・。

ラルもかなりいい筋肉してるが正直私の敵ではなかった。私以外の筋肉で一番好きなのがラルの筋肉だ。しかしごめん。私ってばチート野郎なの。


ということで無事、私の勝利のあかしとして、石は私の首に下がることとなった。



ラルは負けたのにとても嬉しそうだった。


これでいいのか?


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