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4・私の前世の女性には、ちょっと慎みが必要かもしれません

「お前、魔法使えたんだな。助かったよ」

「でも、なんか手から光が出ただけ、だったよ・・・」


「光以外の物が出てたら、今頃、俺の目どうなってたんだよ・・」

「目玉・焼き?」

「怖えーな!!」


 とりあえず目くらまし程度にしかならない魔法だったが、遊び疲れたところに二連発したせいか、山を下りるころには歩けなくなってしまい、今はディージャーの背中に乗せられている。・・・確かに魔法は体力がいるようだ。


 家に帰ったら父にこっぴどく怒られる。いくら私がぐったりしてるからって正直に全部話すな、あほの子め。明日あほっ! て言ってやる。


 と思ったが翌日も起き上がれなかった。緊張したうえに、能力を超えた魔力を使ったらしい。身も心もぐったりだ。心配した母に優しく撫でられて気持ちよかったが、母を心配させてしまったのはよくなかった。もっと体力をつけて魔法をちゃんと使えるようにならないと!!


 二日目には元気になった! 子供の回復力には感心するね! さて元気になったらトレーニングの再開だ!と意気揚々と家を出ようとしたら父に呼び止められた。


「お前がこんなに早く魔法を使えるようになるとは思わなかった。お前がやる気ならちゃんとした人に教わったほうがいい。お母さんはあの通りだからほかの人に頼んでおいたよ」


 さすが父。なにがさすがにかかってるのかはイマイチだが、なんでも教えてもらうのはありがたい。母のためにも魔法を磨くのだ!

 ということで、さっそく言われた教会に向かう。治安のいい町、というよりは、全員家族のようなところなので、幼女が一人でホイホイ歩いていても特に心配はない。


町の真ん中にある、こんな町には若干ふさわしくない立派な教会にやってきた。


 この教会には、司祭ひとりにシスターが二人。親子なのか?と思うががあんまり似てない。となるとどっちかは嫁か? 司祭ってのは結婚していいのか? よくわからないがこの世界ではアリなんだろう。とりあえず、娘ということにしておく。

娘の一人に声をかける。


「こんにちわ! お父さんにまほうを習ってこいと言われてきました!」


元気いっぱい幼女のフリで声をかける。いやフリも何もなくこの身は幼女か。中身にアラサー・フヒヒ女の記憶を持つ私は、本当に幼女なのか?


まあいい。心はいつも乙女だ。


 尻が振り返る。いやシスターの尻なのだが、あまりに尻がでかいのでシスターの尻というより、尻がシスターなのかというほど尻がでかい。前かがみになっていたシスターが振り返るとぶおんと音がした気がするほど尻がでかい。どんだけ尻がでかいといったかわからなくなるほど尻がでかい。しつこい。


「リリーナちゃんね! まあ可愛い! まだ小さいのに魔法使えるなんて優秀ね!」

尻がとてもいい笑顔で近づいてくる。いや、今は前を向いているからおっぱいか。おっぱいもでけぇ!!



そう、私の名前はリリーナだ。


 なんだか名前だけだと、どっかのお姫様みたいだが、私の容姿は父と同じ濃いめの金髪に茶色の目。あんまりお姫様っぽくはない。しかしそれぞれの配置や形は母の容姿を受け継いだので美少女らしい。らしいという理由は、ロクな鏡がないので実はちゃんと見たことがないからだ。


 さて、尻に案内されて教会に入るとそこには、線の細い柔和な笑顔のおじさまと、もう一人のシスターがいた。おじさまのほうが司祭様だ。たぶん。


シスターのほうが司祭様だと、このおっさん誰だ?


「しさいさまこんにちわ!」

「おお、リリーナちゃんこんにちは。魔法を教えてほしいとのことだね。私も大したことはできないが頑張って覚えようね」

よかったこっちが司祭様だ。いや知ってたよ! 狭いんだよこの町は!


「わたくしはお茶を入れてまいります」


司祭様といた、きつそうな顔ながらも綺麗な顔のシスターが立ち上がり、奥に下がっていく。

こんな町にふさわしくない綺麗な所作だ。元は貴族の娘とかだろうか?



 司祭様に聞いて驚いたのは、魔法というのはそんなに使える人はいないそうで、貴族の人の半分くらいと、平民では1000人に一人くらいとのことだった。この町で今使えるのは司祭様と母、そして私だけだそうだ。この町の人口比で考えるとかなり多めだ。

 あとは年に一回、お祭りのときに外から魔法使いが何人かやってくる。彼等は、大道芸的な魔法を披露してくれる。人形を触らずに動かしたり、花火のようなイリュージョンをはじけさせたりして、祭りを盛り上げてくれるのだ。


 今は強めの懐中電灯みたいなのが手から出ただけだが、花火みたいなのが出せたらお母さん喜んでくれるかな?


「魔法は大きく分けて三種類あるよ。光の魔法と、動きの魔法と、癒しの魔法だ」


「光の魔法はリリーナのお母さんも使えるから知ってるね。動きの魔法はこんな感じ」


 司祭様が手を握って、人差し指だけを立て、額の前に持っていき何やらぶつぶつと唱え始める。


「我が意のままに、動け!」と最後に指を突き出すと、その先に立てかけてあったモップがビーンと立ち上がった。


すると、ゆるゆるとモップは動き出し、石造りの床を磨いてゆく。


「おおー・・・」微妙な感動だった。思ってたのと違った。

もっとこう火の玉が出たり隕石が振ってきたりするのかと思ってたがそういうものではないらしい。


 しかし司祭様が振り返ってもモップは掃除を続けているので意外とすごい魔法かもしれない。


「あとは癒しの魔法だけど、私は使えなくてね。だからこういう地方に飛ばされて、妻を二人もあてがわれてるわけだけど・・私はあまり体が強いほうじゃなくてね・・」

「司祭様っ」お尻が、それ以上はダメ!って感じの声をびゅっと絞り出す。


「おっと話しがそれてしまった。とりあえず、魔法を覚えるには勉強だ。読み書きから教えるね」


 おお、今なんか聞き捨てならない会話があったが、幼女なのでニコニコ笑顔で表向きスルーしよう。尻がなんだか赤い顔になってる。あれか? 癒しの魔法は使えないけど魔法使いではあるので、血を残すために、教会から半強制的に派遣された嫁に、アレしたりコレしたりするのか!? あの貞淑そうな淑女と、このケシカラン尻にアレしたりコレしたりするのか!? アレしたりコレしたりするのか!!


いや待って。いま、私の中のアラサーフヒヒ女子をちょっと撲殺してくるから。・・・よし死んだ。


 とりあえず、読み書きを教えてくれるとはありがたい。実は母から少しは習っていたが、母はあまり教え方がうまくなかった。とはいえ魔法を使うのにはまず勉強? よくわからないので司祭様にそのへんを聞いてみると、魔法というのは頭で練り上げるものだから、そのためには勉強が一番近道なんだ。とのこと。


 なるほどー。魔法って体力だけじゃないのかー。よっしゃ司祭様、いっちょよろしく頼むわ!!


とアラサーフヒヒ女子が復活してびっと敬礼した後、チョップのように手を前に突き出す。もちろん幼女・リリーナはその暴挙を許さず、不埒な女子を撲殺し、子供にふさわしい真面目な顔をさせ「よろしくおねがいします!」と両手をおなかの前で、大げさにそろえさせて頭を下げさせた。


「んー!可愛いですねえ司祭様!」

「そうだねぇ」


狙った反応が得られて、頭を下げたところでフヒヒ顔が出てしまう。


何度殺してもよみがえってくるなフヒヒ女子。


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― 新着の感想 ―
[一言] シスターがいつの間にか尻になってて草 Hey!尻!
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