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27・マッスルレディ現る! 正体は私かもしれません

 またなにか権利関係に触れた気がする。


 権利関係の問題は異世界にまでは及ばないはず! 法律の専門家は帰れ! ついでに今は非常事態だ!


 目の前の男たちに一瞬動揺が走った気がするが、すぐに立ち直ってお互い目くばせをする。おお、さすがプロ。しかし、私も、たいがい変な格好だと思うが、あっちも結構たいがいだ。全身黒づくめで足は素足だ。黒いのは何かを塗っているのだろうけど。


 私のこの、変な格好は仕方ないのだ。飛び出したときに着ていたのが、ひらひらしたシフトドレスだけだったのだ。そして裸足。部屋着でこの場に出るのはどうかと思ったので、そのへんに干されてた服を急遽失敬したのだ。後で洗って返します。あとは、おばあ様の屋敷の応接室にあった謎の仮面を呼びだし装着したわけだ。


 え? 私が変なのは服じゃない? 女性にあるまじきこの筋肉だと? ひさしぶりにこの姿に戻ったらなんとしっくり来ることだろうか。やっぱり筋肉がないと、ベキベキのボッソボソで・・・おっと余計なことを考えていたら暗殺者たちが向かってきた。


 態勢を低くして2人が左右にふくらみ走り込んでくる。その間に後ろの2人がなにか棒手裏剣のようなものを私に投げた。お? この棒手裏剣から、ものすごく嫌な感じがする。きっと毒だな。しかしそんなもので私の筋肉に傷がつけられるとでも?


 カキンカキン。身体をひねって前に出した左肩の三角筋が棒手裏剣を弾き飛ばす。人体に当たったようには思えない音がした。我ながらどうかと思う。本当に私の筋肉は鋼なのだ!


 私のもとに走り込んで到達した、最初の2人が、鎌のようなものを細かく振り上げる。手の腹をそれに向ける。ギリイッ。鉄をひっかいたような音がするが、鎌が当たったのはもちろん私の手だ。ほら、そんなものでは私の鋼の体にはいささかも傷つかなのだよ。


 私はそのまま、その鎌を握りしめ、取り上げる。子供が遊んで振り回す棒を、ひょいと取り上げる感じで。握るとやはり毒を感じるが、この程度でどうにかなる私ではない。まあラルあたりがかすったら、身体の表面が膿んでジュクジュクして、内臓が溶けるようになる毒っぽいけど。私には効かない。効かないのだ!!


 目を見開いて鎌を取り上げられたことに驚く二人に、左右の手でそれぞれデコピンをくらわす。この私の攻撃だ。デコピンといえども凄い威力になるぞ。


パカアンといい音がした後、二人とも全く同じ動作で、のけぞって地面にひっくり返り、後頭部を支点にもう一回転。でんぐり返し途中、お尻を上にした態勢で止まる。 うわぁ無様。


 次の獲物に目を向ける。棒手裏剣を投げた2人に滑るように詰め寄る。完全に目で追えてない。私は淑女としての動きはてんで駄目だが、子供のころから鍛えた運動神経に、しなやかで鋼の硬さの筋肉がある。その動きは獲物をしとめる虎のごときだ。虎より強いけど。

 

 棒手裏剣を投げた片方には裏拳をたたき込み、もうひとりはお腹に拳をめり込ませる。優しくね? しかし駄目だった。くの字に折れ曲がって面白いように飛んでいく。


あれま。数メートル空中を滑空し、ビタンと壁に張り付いた。もう一人の裏拳をくらったほうは、横向きに三回転くらいして、足を上に向けて止まった。面白いオブジェと思えば、まあありか。

 どうもまだ力が強かったようだ。馬車の陰にいたもう一人が、あくまで使命を果たそうと、ティターニア様の方を向くので、むんずと首根っこをつかんで、そのまま地面にたたきつける。


 計五人。おっと、もう一人いた。ティターニア様と私に向けて投げられた棒手裏剣を指でつまみとり、目からビーム。ハイ終わり。

 暗殺者たちを魔法で縛り上げ、魔法の紐の端を侍女さんに渡す。そういえば御者と護衛騎士さんと思われる人たちが倒されてたな。

魔法でここほいっと連れてきて、癒しの魔法で治療をしつつ毒を抜く。刺されたところも元通り治して・・うむうむ。ハイ完了っと。


「あのう・・・」ティターニア様に声をかけられる。向き直り笑顔を向ける。仮面で口元しか見えないが。


「危ないところを救っていただきありがとうございます!」

「あっ・・ありがとうございます!!」


いつもの綺麗なお辞儀ではなく、感情のこもった礼をするティターニア様。あれれ? 可愛いぞ? 侍女さんも慌てて深々と頭を下げる。こっちも可愛いなぁ。


「お気になさらず。夜の散歩をしていたら、たまたま御方の危機をお見掛けしたので、少しばかり助力をさせていただきました」

なんとなく、可愛い女性達を相手に男のような話し方をしてしまう。


「あのっ・・お名前をお伺いしても・・・」

頬を赤らめ、うっとりと私を見るティターニア様。あれれ? ほんとに可愛いぞ? いつもの氷の女はどこ行った?


「私は鎧の代わりに筋肉をまとった、筋肉の戦士。マッスルレディ。お見知りおきを」


「マッスルレディ様・・・」ほう。と吐息が漏れる。色っぽいなぁ。

淑女モードの私と違って、今は私の視線が高い。いつもは見あげるティターニア様を、頭一つ上から見下げるのは、何だか新鮮だ。ラルはそれより上に目があるので本当に背が高い。


護衛騎士が立ち上がった。潮時だな。

「この相手の後始末も含めて、お任せしていいかな? ティターニア嬢」

「はっはい! お任せください! 私は伝報石を持っております! すぐに兵を向けてもらいます!」

「そうですか。では!」びゅっと風切り音を立て姿を消す。


「あら!?」

「消えた!」


「マッスルレディ様・・・」


なんて熱っぽさが混じった声が風に乗って聞こえてきたが、私にはラルがいるし、あなたには殿下がいるので変な気は起こさないように。上空を滑空して帰ろうとすると、まだいくつか、首元がチリチリする方向がある。私は一つのチリチリに、頭を向ける。



***************************

 


「マッスルレディってお前だろ」


どえええ、なぜバレた!? 翌日。馬車どまりに降り立つと、そこにラルが待っていた。朝の挨拶をすっ飛ばして私をにらむ。朝といっても貴族のクラスの朝は遅い。今は前世で言えば午前九時すぎくらいだ。


「いや、お前の真の姿を、ちゃんと知ってるものなら誰だってお前しかいないって思い当たるだろう?」

そうなの? そんなに私って筋肉? そうねわったしーは、筋肉の女。


「今朝の貼り新聞に面白い記事があった。『王都のあちこちで目撃されたマッスルレディ。果たしてその正体は、最近噂の王都周辺の災害地を癒して回ったとされる聖女様と同一人物か?』とな」


 早いなこの世界の新聞! まあ伝報石があるし、紙も、印刷技術もそれなりにあるようだから、ゴシップ的な新聞があっても不思議はないのか。


 あ、もちろんこの会話は周りには聞きとれない魔法を使っての会話だ。


 何を言ってるのかわからないけど、どええってポーズをとってる私に、通りかかる淑女の皆様から「またか・・」という目を向けられる。ふええ・・私ってば、つい、こういうかポーズをしちゃうんですぅ。シナを作って口元にゆるく握ったお手てを当てて・・・なるほど。私でも私の態度にイラっと来る。


「ラル。リリーナ嬢」と、そこに殿下登場。


「おはようございますマックス様」

「殿下!ごきげんようでございます!」

「なんだその挨拶・・」ラルにジト目を向けられる。


 颯爽と、それでいて朗らかな笑顔を浮かべマキシマム殿下が近づいてくる。校舎の中から現れたので、私たちに用があったということか? あのぶつかり事件のとき以外、私は殿下とまともに話したことはないが、ラルはどうも仲良くなっているようだ。仲良きことはよきことかな。


「昨日、僕の婚約者を守ってくれたそうだね。ありがとう」


「はえ!?」

バレテーラ!? 殿下にお声をかけていただき、変な声も出る。また周りの視線が痛い。 


「ふむ。もちろん教会が聖女に認定する人物が、どのような者かなんて当然報告が上がっている。昨日だけで三件も、大事件を未然に防いだ英雄が、私の知る聖女以外にはありえないとはすぐに想像がつく話だ」


「それに君が立ち去ってすぐ、伝報でティターニアが報告してきてくれてね」

殿下はものすごく楽しそうだ。


「感情のない言葉だけ伝わる石なのに、ものすごく興奮してる様子がよくわかったよ。マッスルレディ様に命を救われた。とてもかっこよかった、と。それはもう、君くらいしかいないだろう?」


 うひー! 惚れてくれるなよティターニア様! そして筋肉は私しかいないんだ! 決めつけられた! 世間には似た顔をしたものが三人いるという! 私のような筋肉がほかにもいるはずだ! えーとまあ、おばあ様は私に似てる筋肉だな。


「この国の一員として治安を守ってくれたこと、また婚約者を救ってくれたことをこのうえなく感謝している。本当にありがとう」


どういたしまして。あらためてほめられると照れちゃうな。


「しかし、あまり活躍されて、その・・ティターニアがそういう体形好みになって、私にもこれ以上鍛えるように言いだされても困るので、ほどほどにしてくれ」


これは王家のお墨付きと思えばいいのか、あんまりやんなよ!と、釘を刺されたと思えばいいのか微妙だ。


「殿下。それで賊の正体は分かったのですか?」


「ああ、『マッスルレディ』がみんな生きたまま捕らえてくれたので、じっくりと後で捜査をするが、あんなものは見ればわかる」

マッスルレディという部分がものすごく強調された気がするが流しておく。それよりも見ればわかる?


「全員、角があったからね」

 角!ということはあれが噂の蛮族の国の暗殺者集団か! 

って、実はそうなんだろうなと思っていた。


なぜなら殴り飛ばした相手が吹き出す、血反吐や鼻血が青かったのだ。


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