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1・母の病を治すには、魔法の力が必要かもしれません

 5歳の時に前世の記憶とやらが現れた。もちろん誰にも言ってない。


 私の前世はこことは違う、進んだ技術のある世界に住んでいたようだが、あまり幸せではなかった事はよく覚えている。


 しかし今世の私は幸せだ。何せ今の私には両親がいる! そして可愛い弟までいる! 家はどうも貧乏のようだが家族がいるなら最高だ! 私にとってはそれが何よりも求めていたモノだったからだ。


 父は事業を行い、昔はそれなりの金持ちだったらしいが、災害によってすべてを失い、私が産まれる前にこの町に移り住み、細々と暮らしはじめたということだ。

だからまあ、そこそこに貧乏。


 黒い髪を短く切り揃えた父は、まあまあ格好良かった。

大きな手で私の頭をなでながら


「なあに、ステラとお前たちさえいればいい。家族がいれば幸せだよ。お金なんて暮らしていくのに困らないだけあれば十分。ガハハハハ!!」


などといいつつ馬鹿みたいに笑う人だ。声がでかい。相手との距離に関係なく、つねにでかい声と、大口開けてガハガハ笑うところは特にいただけない。格好いいのに残念な要素だ。うるさい。でも好き。


 ステラとは母のことだ。


美しい母は金髪に青い目をもち、鼻筋が通ってとても美しい。元・日本人の私から見ると、ザ・外人という顔立ちだ。いつも笑顔で、よく歌を歌っていた。私はそんな「美しく優しい母」という存在がそばにいるだけで、胸が暖かいもので包まれたようになり、とても幸せだ。


 

 しかし単なる幸せは長くは続かない。母が実は病を患っており、一度伏せるとしばらく起き上がれないことを知った私はものすごく動揺した。


私は母のベッドにかじりつき、「私を残してどこかに行かないで」と泣きながら懇願した。


やっと手に入った幸せな存在にどこにも行ってほしくなかったから、本気でそう願った。

「死なないで」とは言葉に出来なかった。言えば本当になってしまいそうだから。前世での自分は、今の母より年上だったが、涙腺は今の幼い身体に合わせて緩いようで、ちょっとした拍子にぼろぼろと涙が出る。


母がベッドに伏せるたびにそうして縋りついた。


 そうすると、母は決まって魔法を見せてくれた。魔法だ! 凄い!


両手を合わせて「みててね?」と微笑む。開いた手のひらから光る蝶が現れる。ふんわりと飛び上がると、そのあとに光の粒や光る花びらが舞ってとてもきれいだ。薄暗い小さな部屋の中が、蝶の振りまく光でほんのりと明るくなる。


前世の世界で、もっと派手なイルミネーションや、光のイリュージョンなんてものを見た覚えがあるが、母が産みだす魔法の光は、母が産みだす魔法の光ゆえに、前世のそれらとは比べ様のないほど幻想的で美しく、幸せに満ちていた。


「魔法は私にも使えるの?」

「多分使えると思うわ。お母さんの家系は女性は使える方が多かったらしいから、きっとあなたも使えるようになるでしょう」


何気ない質問に、ベッドの母が優しく微笑み、私の頭を撫でてくれながら答えてくれる。嬉しくなった私は、どうやったら使えるようになるのかと聞いてみた。



「魔法はね、使うにはある程度成長・・大きくならないと使えないの。お母さんのお母さん、あなたのおばあ様は魔法を使うには体力がいるって言ってたわ。お母さんは今は体がこんなだからあまり大した魔法は使えないけど」


「あなたのおばあ様は、大きな人でね、女の人なのに力が有り余ってるような人だったからか、凄い魔法を連発してたわよ」


だからきっとあなたも使えるようになるわ。と続ける母の言葉をすべて聞く前に、私は「えっ!?」と大声を上げた。 私は慌てた。


「もしかして魔法って使うと疲れるの!?」


ベッドに飛び上がらん勢いでそう聞くと、母がしまったという顔をした。その通りなんだ! いつも私が不安で泣いてベッドにやってくると、決まって見せてくれるこの魔法は母の体力を奪っている! それをさせている自分が許せなくなった。


「もう魔法は見せてくれなくていいから! もう泣かないから! だからお母さんは早くよくなって!!」


その言葉に返してくれる母の微笑みに、ほんの少し困惑が混じっているのを見つけてしまい居てもたってもいられなくなった。



「お父さん!病気を治す魔法はあるの!?」

「ああ・・あるにはあるけど・・あれは相当な魔法使いじゃないと使えないね」


「じゃあ私がその相当な魔法使いになる! どうやったらそうなれるの!? おばあ様って凄い魔法使いだったんでしょ!? どんな人だったの!?」


「んー・・お母さんのお母さんは、大陸一の魔法使いといわれてたけど、なんだか魔法使いというよりは剣豪みたいなひとだったねえ・・」



おばあ様は剣豪のような人だった? 成長しないと魔法は使えない・・ おばあ様は魔法を使うには体力がいると言っていた? 一気にまくしたてた私が急に思案顔になったことに、眉をㇵの字にしながら見つめる父を無視してぶつぶつと考え込む。


・・・・・・そうか!!


そうか! 魔法を使うには体力が必要なんだ!!


そして、暗闇に落ちる雷光のように、さらにひらめいた



そうだ筋肉をつけよう!!


結構短絡的な主人公です。脳筋です。

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