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14・大事件を何とかするのは、私の筋肉しかないのかもしれません!!!!

 ステラは崩壊する裏山を見て息が止まった。


 娘の力なら何とかしてしまえると思ってそれを求めたが、タイミングが悪かった。娘は金の光る帯を引いて土砂の前に降り立ったが、魔法を使う前に土砂に飲まれてしまったようだ。


 私と娘の会話を聴いたランスロット様が、娘が着地するであろう場所に銀の帯を引いて跳躍した。山が崩れる前に娘のもとに辿り着いたように見えたが、こちらも同時に土砂に飲まれてしまった。


 その瞬間、崩れる山が、その形のまま止まった。娘か、ランスロット様の魔法が発動したのだ。

 轟音がしてさらに轟音がして、一気に水が引いて、今度は山が崩れてきて、それがぴたりと突然固まる。町の皆は急展開する状況についていけなくて、目を白黒させていたけど、そこに夫の大きな声が響く。


「今のうちだ!みんな山からできるだけ離れろ!!」


 よく通る声が町を突き抜ける。夫の声は大きすぎる。しかし今はとても効果的だ。


 水は一気に引いていた。一気に引いたことでその水に引きずられ、少なくない数の家が壊れていったが、みなが避難していた長屋は無事だった。


夫の声は町中に聞こえただろう。住人たちは声を掛け合い、屋根から降りて裏山から離れよと走りだす。老人などは教会騎士が背負い、とにかく走る。


 教皇様はここから動かない。


「教皇様!お逃げください!」ご領主様が叫ぶが、教皇様は穏やかな笑みを浮かべ、崩れる途中で固まって止まっている裏山を見上げている。


「おお・・ステラさん・・御覧なさい」


教皇様が左手で教会の印を結びつつ、右手で指し示すので、私はその指し示す山のほうに視線を移す。そこには光の柱が、何本も、何本も、山の中から雄々しく立ちのぼっていた。


 崩れる姿のまま、止まっていた山に現れた光柱は、やがて一本の太い柱となる。黄金に輝く光の柱。その光に私の胸にのこる、ある記憶を思い出す。その記憶のあたたかさを感じる。


 それがあの子が産声を上げてくれ、最初に私が抱いた時に感じた、あのあたたかさと同じだった。とても暖かく小さく、そして嬉しさと幸せそのものだった。その温かさと同じとわかったとき、私はとても嬉しく、安堵した。


そしてその時と同じ感謝の言葉をつぶやく。


「産まれてきてくれて、ありがとう」


私の横にやってきた夫が、珍しく、大きなものではない声でささやく。


「あの子は、まるでどこか違う世界から、私たちのもとにやってきてくれた、天使のようだね」


 光の柱の根本、土砂を噴き上げゆっくりと浮かび上がってきた娘を見ながら、夫がほほ笑む。娘が抱えているのはランスロット様だろうか? そういう時は逆じゃないか? とも思うが、まあ娘が相手では仕方がない。ランスロット様はよい方だが相手が悪い。いや、相手がよい?


何せ私たちの娘だから。


「あの子は天使のよう、ではなく、もともと私には天使でしたよ?」


娘の髪がほどけ、広げた羽のように娘の左右に広がる。夫と同じ濃い金の髪は金色の光の中でも存在感がある。本当に天使なんだ。


「神の啓示の通りであった。この旅で聖女と出会うという、最大の目的は果たされた」


教皇様が、娘を聖女と呼んだ。そうか、娘は聖女だったか。


うーん、・・・天使と聖女だとどっちが格上なのかしら?


 夫に肩を抱かれ、ぼんやりとそんな事を考えていたら、崩れた山が静かに元の、見慣れた形に戻っていく。そうよね。その山もこの町も、みんなあなたの家族みたいなものだものね。


いつの間にか光の柱は天を貫き雨雲を吹き飛ばしていた。



***************************



おりゃあああああ!!!! こんなところで死なせないわよおおおおおお!!!!


 ガクガクとふるえ、彼の腕が力を失っていく。

その下に守られた私は決意を込めて、左右の手をパアンと叩き合わせ魔力を練る。


「どっせえぇい!」

彼の脇から山に向けて、広げるように左右の拳をそれぞれ繰り出す。

山の土に叩き込んだ手から閃光がほとばしった!


土砂の中を、光が稲妻のようにジグザグに駆け抜けてゆくのがわかる。


 私たちを包んでいる固定化された土砂を吹き飛ばしてしまうと、その固定化の魔法をかけているラルにダメージが及んでしまう。だから光にはそういう力を込めていない。光は土の中を浸透していき、ついには崩れた山肌を突き抜けた。いま、山の表面からは光の筋が、幾本もほとばしってるんじゃないだろうか。


 この光には、彼がかけている空間を固定化する魔法の、上位バージョンをみっちりと練り込んだである! 

彼が掛けたそこから動かないよう『止まっていてもらう』魔法を参考に

『おらぁ! そこから動くな! ぶっ飛ばすぞ!?ゴラァア!』

と念を込めた魔法だ。たぶん、そこの時が止まるくらいの勢いのはず。 


 そうなれば、もうそりゃあカッチカチよ! おっきな爆弾が落ちたってこの形のままなんだから! 


 そして何度か拳から光を放ち、山全体に行き渡った光が、山をを完全に固定化した。おなじタイミングで自分の魔法が解除されて力が抜けたようで、気を失ったラルが、ゆっくりと私の上に覆いかぶさって来た。ラルのほつれた黒髪が私のほほに落ちてきたが、じっとりと濡れていて、私はさらに悲しくなった。


 ラルの鍛えた胸板が私の顔の上に乗せられることになったが、山一つのしかかってきたとしても潰されはしない私には、彼の体重は重いというものではない。

むしろこの重さが、私の危機にここに在ってくれたことに嬉しさがこみ上げる。


「来てくれて、ありがとう・・嬉しかった」


 腕を背中に回し、優しく抱きしめる。


 トクントクンと心臓の鼓動が聞こえてくるが、小刻みに早く、そして弱々しい。手を回し確認すると、やはり水ではない、ぬるりとした部分があり、背中に刺さる木の根が、いくつか手に触れる。瞬間、私の胸がきゅっとなり、気持ちが一気に固くなる。


 おのれ! 私の大好きな山のくせに、私の大好きなラルを傷つけたな!

無色の『自然の猛威』は万人に等しく降りかかるが、今この瞬間、私はその猛威が、自分にだけに向けられた、『赤黒い意思』のように感じ、一気に反発する怒りが湧きあがる。


湧き上がる怒りを、そのまま視線に込めた。


「どきなさい!」


くわっと目を見開く。込めた怒りをたっぷり乗せて、土砂が折り重なって出来た土の壁を、視線で貫いてやる! ずごん! ごごごご。大きな音がしてまっすぐと私の視線の先を、なにかが掘り進んでいく。そこにあったものを一切合切吹き飛ばし、ずいぶん掘り進んでから外につながった。


目からビーム!! は、出ないけどそんな気分だ。土砂の中にぽっかりと縦穴ができる。


「よっしゃ」彼を抱えたまま立ち上がり、横抱きに抱えなおし穴の中で立ち上がる、穴の先を睨むとすっと視線に向かって宙に浮かぶ。大怪我をしている彼を慈しみながらゆっくりと穴の中を上昇する。


 縦穴から出ると一気に外の風景が目の前に広がった。愕然とした。

崩壊の途中で固定されてるとはいえ、もう山は四分の一ほど低くなっていた。こんな崩れ方ってある!? 私の思い出の場所なのに! 何にもなくなっちゃうじゃない! 


『自然の猛威』に対する私の怒りは燃え上がり、頂点に達っしてしまう。髪を止めていたリボンがはじけ飛んでしまう。


あ、あれ結構お気に入りだったのに・・・。


私の怒りに怯えたのか、雨はやんでいる。


 しかし垂れこめる重たい雲はまだそこに居座っている。こいつらが元凶か! 

その雲をギロリとにらみつける


「おのれ、この雲め! やってくれたな!! 覚悟しろぉ! 目・か・ら・・ ビィィーーム!!」


ビーーム!! 今度はほんとに光の奔流が視線に絡まり放出される。やってみたら出た! 立ち上る光の柱に乗って、さらに天を貫く『目からビーム』


ドゴーンって感じで雲を貫いてやった。やっべ、神様あそこにいないよね?


すると雲の野郎はスパアンと音がするほど綺麗にはじけ飛んだ。

ビームが突き刺さった個所を中心に円の形に雲が塵飛んでいく。


その勢いは素晴らしく、一瞬で空には雲一つない突き抜けるような青空が広がり、柔らかい日差しが辺り一面に降り注ぐ。


 おお、出来ると思ってたけど、実際できるともう・・私、人間じゃないみたいだ! 怖いっ!私の魔力が、いや筋肉の力が!! 


ありがとう筋肉!! ありがとう!


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