殺し屋とアメニティ
俺は殺し屋。
それもただの殺し屋ではない。
依頼は必ず成功させ、証拠も一切残さない……、まさに完璧な殺し屋だ。
その仕事内容は俺が入っている組織でもトップクラスで、依頼主からも感謝の電話が入るほどだ。
その内俺は、『立つ鳥跡を濁さず』を意味する言葉『CNDITWTGYWA』とも呼ばれていた。
そして、俺は今 とある任務の為に某高級ホテルに宿泊している。
このホテルは予想以上にアメニティが充実しており、歯ブラシや髭剃り、眉剃りも量産型の物ではなく ちゃんとした有名企業の物で、歯磨き粉や洗顔クリームもボンドの入れ物のようなタイプの物ではなくチューブ型の物だった。
俺は、これからの仕事の為に気合いを入れるために洗面台へと向かった。
歯ブラシを手に取る。
新品な歯ブラシだ。
おそらく1回使うと清掃係の人が回収をして破棄をするのだろう。
少しもったいないなと思った。
歯ブラシと同じスペースに置かれていたチューブをとり、歯ブラシの上に中身をのせる。
桃の香りがしてとても心地が良い。
俺はそのままそれを咥えると、今日の仕事内容を確認する為にパソコンへと向かった。
送られてきたメールに添付されていた画像を表示させる。
(コイツか……)
相手は暴力団の幹部だった。
(少しめんどくさそうだが、それを完璧にこなしてこその『CNDITWTGYWA』だ)
自らに気合いを入れた。
その時だった。
口の中に何か違和感を感じたのだ。
(まさか…ッッツ!)
俺は口の中の物を吐き出した。
(これは歯磨き粉じゃない……!?!??)
俺とした事が失敗した。
おそらくこれは毒だろう。
(まさかホテル側に俺を狙う者が居たとは……)
思い当たる節が無いわけが無い。
俺は何人もの人を殺した。
数えられない程だ。
どこかの誰かに恨まれていないわけが無いのだ。
ふと、自らの首裏を触る。
表面からは見えないが、この下には ある機器が埋め込まれている。
組織に入った時に埋め込まれた物だ。
仕事に失敗した者の命を奪う機器。
通称、『首輪』……。
(俺は『CNDITWTGYWA』……、決して証拠を残さない)
俺は左腕につけていた腕時計型の連絡端末で組織に伝えた。
『任務に失敗した、首輪を起動してくれ』と、
そして、
そして、俺は、
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私は警察官の九十九一。
実は先日、少し面白い…って言ったら不謹慎だが、まぁ面白い事があったのでここに記そうと思う。
その日、私は死体が発見された某高級ホテルに向かった。
その死体が発見された部屋に入ると、室内はどこからか桃の香りがした。
「仏さんはこっちだ」
先輩警官について行き、私は死体の元へと向かった。
それは、口を開けて死んでいた。
仏さんの身元は、等の話をして先輩警官が他の警官と情報交換をしていた。
その間、私は部屋に漂うの桃の香りの発生源を探していた。
そして見つけた。
それは、ゴミ箱に中に包まれて捨てられていたティッシュの中からだった。
俺はそれをおそるおそる開いた。
(これは…?)
少し考え、そして答えに辿り着いた。
ついでに少し、死体の口の中の匂いも嗅いだ。
(同じ匂いだ……!)
私はおもむろに立ち上がると、先輩警官達に少し質問をした。
「先輩方、この方の死因は?」
「ん?今のところは詳しく分かっていないが心臓発作だと言われてるぞ」
「なるほど……、なら、この方の死因が分かったかも知れません」
「なんだと!?それは本当か?」
「はい」
私は自らの推理を説明した。
「この方の死因は、歯磨き粉と洗顔クリームを間違えた事によるショック死ではないかと」
「は?」
先輩警官は拍子抜けした声を出した。
「ふざけているのか?」
「いいえ、ちゃんとそう考える理由があります。……まず、これはゴミ箱に捨てられていたティッシュに包まれていた物で、これは有名企業の洗顔クリームです。そして、もう1つ、ゴミ箱には歯ブラシも捨てられていました。この2つが捨てられていた事と心臓発作…、以上の点から私は、この方は歯磨き粉と洗顔クリームを間違えた事によるショック死で亡くなったのではないかと推理します。」
「なるほど……、まぁ、筋は通っているな。一応上にも伝えておくよ」
こうして、私は1つの事件を解決に導いたのだ。
まぁ、その後死体が行方不明になった事については私は知りませんけどね。
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そして、この殺し屋が歯磨き粉を洗顔クリームと間違えた事に気づかずに毒だと勘違いし、『首輪』により死んだ…という真実は闇に葬られた。
これ書くために洗顔クリームで歯磨きしたから褒めて。