異邦人2
「この街では、私が比較的、異邦人としては古株だが。この街だけでも、君以外に5人は異邦人がいるね」
ということは、アイテム作りに長けた人が他にもいるのだろう。
「アイディアや、能力をうまく生かしてくれる仕組みがこの街には整っている。君も落ち着くまで、しばらくここにいるといい」
「はい!、、、こういう境遇が僕だけじゃないのを知って安心しました。まだ少し混乱してますが」
タカシは自分の手に目を落とした。
色々と記憶がおぼろげだ。
内気で目立たない学校生活。
いじめや批判にビクつきながら、平凡に過ごしていた。
確か、いつも通り学校へ向かっていた。
よく、事故やら、何かきっかけになる出来事があったろうか。。。思い出せない。
ただ、遅刻しそうで、いってらっしゃいとかけられた母親の言葉に応えなかった。
もう会えないかもしれない、、、と思うと少し涙がにじんだ。
「とりあえずは、安心した?」
クラリスが笑顔でカナメの顔を覗き込む。
カナメはドキッとした。
そういえば。彼女の顔をまともに見たのは初めてかもしれない。
ウェーブがかった赤い髪を1つに束ねてまとめ上げ、眼は薄いグリーンをしていた。
落ち着いた仕草や言葉に、だいぶ歳上だと思っていたが、顔を見ると、そう変わらないようだった。
「私は仕事柄、異邦人と関わることが多いけど、来た人の心情は来た人にしかわからないから」
クラリスが少し寂しげな顔をする。
「クラリスさん、ありがとう」
「タカシさん、ありがとう。さて、カナメ。あとの4人は、、、クセが強い人や今、街を離れてる人がいるから、おいおい紹介するとして」
クラリスがタカシにお礼を言って居室の扉に向かった。
カナメも付いていく。
「お昼にしましょうか?」
呼応するように、ぐぅっとカナメのお腹がなった。