ギルド2
救護室の外には賑わいがあった。
様々な甲冑やローブを着、武器や装備を携帯した人々が行き交う。
中には、亜人、、獣の耳や尻尾、鱗を持った人々も混ざっていた。
建物は広く、通路の奥を見渡せば、商店が立ち並んでいるようだ。
「すごい、、、」
カナメはその光景を眺め、目を輝かせる。
「君、ゲームやアニメ好きでしょ?」
「はい!」
間髪入れずにカナメから返事が返ってきた。
「あの、、クラリスさんは、僕たちの世界のことを詳しいんですか?あと、受付なのに、、僕のために、、すいません」
カナメは気弱そうにうなだれた。
大人しいタイプの子だ。
クラリスはポケットを探り、手のひらに収まるくらいの黒い板状のものを取り出した。
側面の細長い突起に触れると、板がぼうっと光を放ち、、、
映像が板に映し出される。
「君、こういうの見たことある?」
「スマホ!?」
カナメは画面を覗き込む。
「因みに、受付には水晶球と、ベルがあってね。私に用事があれば、これが知らせてくれるのよ。似たようなもの、持ってる?」
カナメは思い出したように、ポケットを探る。クラリスの持つ板のオリジナルースマホーの電源を入れた。
当然ながら、電波は圏外だが、充電はまだ30%あった。
文字が、いわゆる文字化けで、記号の羅列になってしまっていたが、馴染みの機器の電源が入ることにほっとした。
クラリスが語り出した。
「だいたい100年くらい前からかしら。君のような異邦人と呼ばれる、別世界の人が認識されるようになってきたのは。でも、特に多いのがここ10年くらいね。竜や魔法を珍しがり、独特の機械や知識、文明を持つ人たち。大半はモンスターに襲われたり、こちらに来た時に得た力を制御できずに自滅したりだけどね」
カナメの顔が青ざめる。クラリスはしまった、と思った。
異邦人には他にも特徴がある。
死のワードに敏感なのだ。
ここで生きていれば、モンスターに襲われたり、魔法や事故で人の生き死になんていうものは、摂理で日常だ。
自分達が肉や魚を食べるように、捕食者に捕食される。
言語や街を築き、魔法や武器を扱えるからといって頂点では無い。
また、人が人を襲うことも常だ。街や都市には法があるが、それも街から出れば無いも同然なのだ。
ただ、異邦人の世界では違うようだ。
当たり前に日常があり、当たり前に寝食が保証されている世界。
その世界では、亜人もなく、人が生き物の頂点のように振舞っているという。
(そんな世界から来たらパニックよね)
ふうっと深呼吸して声がより落ち着くよう心がけた。
「その中で、街に落ち着いたり、中には賢者や英雄と呼ばれる人が出た。居た世界の知識を元に、魔道具や構造物を再現したりね。このギルドもそう。元々は依頼受付のみの小さな建物だったんだけど、冒険者が集まるなら、その場で装備や薬の集まるような建物にしようっていうのは、異邦人のアイディアよ。ショッピングモールとかいうのよね」
「あと、君みたいな、異邦人が情報や装備や仕事をしやすいようにって意味もあるわ。次に暮らしを考えなきゃいけないからね。君はテイマーのようだし、竜ともリンクできるみたいだけど、平和に暮らしたいなら、乗獣屋や、荷運びで生計をたてることもできるわ。とりあえず力の使い方を覚えるところからね」
カナメが顔を上げる。
「僕みたいな人が、今もいるの?」
「沢山いるわよ。最近特に多いの。異邦人の集まっている場所に行ってみる?」
カナメは明るくうなづいた。