ギルド1
「ん、、、」
「目が覚めた?」
ギルドの救護室で、先刻の少年が目を覚ます。
少年の顔をクラリスは覗き込んだ。
疲労は見えるが、意識はしっかりしているようだ。
「ここ、、は?」
気弱そうな少年は毛布を口元に引き上げながら、恐る恐る口を開く。警戒と怯えがにじみ出ていた。
「商業都市アルスの冒険者ギルドの救護室よ。覚えてない?」
警戒を解こうと笑顔でクラリスは話しかけたが、、、何を、起こしたのか思い出した彼は、ビクッとして、泣きそうな顔になった。
「ぼ、僕、、、気づいたら森の中で、竜と目があって、、怖い、街に逃げなきゃって、、、気付いたら咥えられて、壁にぶつかって、、、」
彼が目を覚ましたのは近くの森だろう。
運悪く、翼竜の巣の近くに「堕ちた」のかもしれない。
翼竜の住処は街道からは外れている。
「テイマーのようね。いきなりで翼竜か。、、、えーと、出身は?ニホン?だっけ?」
彼はビックリしてクラリスの顔を見た。
一連の出来事に、普通なら察したはずだ。
ここは元いた世界ではないと。
だから、探り探り状況を整理していて、言葉が途切れ途切れだったようだ。
そんな折に、ふいに、彼からすれば「異世界」の人物から、聞き慣れた地名が出て来たのだ。
「!?帰れるの?」
クラリスは少し顔を曇らせた。
「私が知る限りは、帰れた人は居ないわ。、、、ただ、最近、来る人が多いのよ。そして、大抵、力の使い方がわからず暴走する」
先刻の貴方のように。
言いかけて、クラリスはやめた。気弱な少年は、落胆やら怯えやらが強くなっていた。
「とりあえず、竜はもう居ないし、被害も無いわ。安心して」
笑顔で少年を説き伏せた。
「私は、ギルドの受付をしているクラリスよ」
「僕は、、カナメ。ムラキ・カナメ」
カナメは不安そうにクラリスの顔を見る。先行きへの不安だろう。
「真っ先にここに来れたのは運がいいわ。ギルドと街を案内するわね。動ける?」
カナメは頷き、靴を履く。早足なクラリスに小走りで付いて行きながら、救護室を出た。