勇者、脅迫
「目が覚めたか?」
「親父?」
俺の親父であり、この村の村長である。
「目を覚まして一発目が親父の顔とか災厄だ」
「なんだよそれは…………」
てか…………
「俺、死んでないのか?」
「お前は俺を殺す気か?」
親父は豪快に笑いながら俺の背中を叩いてきた。
「いやぁ、勇者様のお仲間であるアリア姫がいなかったら今頃お前は…………」
親父が急にしんみりした感じになる。
アリア姫っていえばこの国始まって以来の回復魔法の才能を持っていて勇者と一緒に旅をしているっていうこの国の第二王女だった気がする。
「回復魔法か…………」
回復魔法はお金がかかる。
回復魔法が使える人は国に申請しないと魔法を打ってはいけないようになっている。
回復魔法を使える人が無尽蔵に回復していたら薬屋なんてものがどこも赤字になってしまう。
だから国は管理している。 だから今回俺に打った魔法でも…………
「お金が必要になってくるよな」
いくら位かかるんだろうか?
絶対エクストラヒールだよな…………。
「お前が死んだときはいったいどうなることかと…………」
「へぇ…………え?」
しんだ?
「どういうことだ?」
「いやぁ、本当に一回死んだんだよお前」
「え? じゃあここにいる俺は?」
「もちろん生きているぞ?」
親父は「何言ってんだお前?」みたいな感じで俺を見てくる。
何当たり前のような顔してんだよ。 なんだかイライラする。
「生き返らせたんだよ」
「は?」
「だからよ、アリア姫の【リバイブ】で生き返らせたんだよ」
な、なんだと…………。
リバイブなんて魔法…………一発で国が動くレベルの金が動く。
「そしたら金なんて…………いくらに…………」
明日には勇者パーティーの代行として使者が送られてくるだろう。
「俺の人生終わった…………」
「ドルフ!!」
家の扉が勢いよく開いたと思ったら、幼馴染のヴィラージュが勢いよく抱き着いてきた。
「まったく! 心配したんだぞ!」
彼女は俺に抱き着いてきたまま離れようとしない。
昔からこいつは甘えん坊だ。
幼馴染といっても年が2歳違う。
だからか知らないがどちらかというと兄妹みたいな関係だ。
「大切な妹を残して俺が死ぬことなんてありえないよ」
「妹じゃないもん…………」
なんだか不機嫌になった。
「まぁ、良かったよ…………生きてて…………」
一回死んだんだけどな。
「頼もぉ!」
バンッ! と扉が開いたところで誰もが目を疑った。
俺の目の前には勇者ユリス・ヒイロが現れたのだった。
「お金のほうを受け取りに来ました」
地獄の言葉とともに
「そういえば俺が眠っていたのってどのくらい?」
「大体二日ぐらい?」
なるほど…………わかった。
俺は計算値以外をしていた。
回復魔法をかけられて二日後位にお金を取りに来ると思っていた。
俺は俺が倒れてから一日しか経っていないと思っていた。
しかし、結果、俺は二日間も寝ていた。
そして一番の計算間違いそれは勇者が取り立てに来ているということだろう。
「あ、ここにいましたか、ドルフさん…………」
彼女は顔を赤く紅潮させながら俺に近づいてこういったのだった。
「お金は私が回収します。 勇者である私が取りに来た分、一日の利子が高くなります」
「は?」
それは脅しとも呼べる死の宣告だった。