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トリックスター ~最弱職業の中で最強と呼ばれた盗賊~  作者: 大栗えゐと
盗賊王と海賊王
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旭日

ココとカラメリア、激闘はついに決着へ……!

 カーボネイト・ウェーブは12段階ある魔技の序列で上から数えて2番目に属するS級魔法である。その津波は爆裂炭酸と呼ばれる想像を絶する弾け方の炭酸で構成されている。触れた物体は炭酸の影響で例外無く外面から分子レベルで木っ端微塵になるという設定のため、最早炭酸の域を脱している。


 ゲーム上では攻撃を受けたプレイヤーは状態異常『崩壊』が付与され、猛毒状態の倍以上という尋常ならざるスリップダメージーーー時間経過に伴い、一定時間ダメージが継続することーーーと、攻撃力と防御力の低下にさらされる。


 シュワシュワともバチバチとも聞こえる超範囲の大津波が、周囲を溶かしながら勢いよくココの元へと辿り着かんとうねり猛って押し寄る。


 (魔技耐性を高めたとはいえ、アレを食らったら厄介だね……)


 ココは装備している陰陽剣アマノヒツキを確認する。先ほどまでは黒い本体にハッキリと月の紋様が浮かんでいたアマノヒツキだが、現在は黒い本体が白っぽくぼやけて太陽の紋様が浮かびかけていた。


 「もうすぐ夜が明ける」


 荒れ狂い進む津波の正面に立つココは、アマノヒツキを鞘に納めた刀を抜く時のように持ち、腰を低くして構えると、津波に向かい鞘無しの高速居合いを放つ。


 「【月ノ型・奥義・絶斬(タチギリ)】!」


 アマノヒツキの装備固有技能(スキル)絶斬(タチギリ)」は、広範囲最高威力の斬撃を『飛ばす』S級技能(スキル)である。FPの消費無しで使用出来るものの、『リキャストタイム』ーーー技能(スキル)や魔技などが再使用可能になるまでの時間ーーーが長く連発が効かない上に、『ディレイ』ーーー技の使用後に一定時間如何なる技も出せなくなる間のこと。硬直時間とも呼ばれるーーーも長くコンボなどに派生する事ができず、大技故に使い所が難しい。


 絶斬(タチギリ)により津波が左右に割れて、ココを避けるように流れ消えてゆく。


 開けた直線上にはカラメリアの姿を捉えることが出来る。銃口はココへと向けられており、既に発砲した後なのか一筋の煙が上へと昇る。


 気づいた時にはココのわき腹を銃弾が貫通しており、腹部と腰部から血が滲む。これまでも攻撃を受けた際に痛いという感覚は無く今回も痛みは無いが、ダメージを負う独特の感覚をおぼえていた。


 刹那である、空間がガラリと変わった。船内に居たはずのココとカラメリアは嵐が吹きすさぶ方舟の甲板(デッキ)へと強制転移させられていた。


 「まさか本当にカラメリア様が! ココ様、申し訳ありません! 何とか私の力で喰い止めてはおりますが、時間の問題かと!」


 ヌーフの方舟上空では、吹き荒ぶ嵐の中、ウィズが魔方陣に身を包み封印の術式に抗っていた。更に別の角度からはエヴァが弩で援護を試みているようだが、方舟に施された強力な防御系魔技により放たれた矢がこちらに届く前にかき消えている。


 「もう少しだけ堪えてウィズッ!!」


 「かしこまりましたァァ!!」


 ディレイが解けたタイミングでココが動く。甲板にある樽やロープを巧みに足場へと変えて様々な角度から銃撃を放つカラメリアは、上へ上へと跳び上がってメイントガンスルに着地した。差し迫る弾丸をジグザグと軽快に躱し、帆や柱を駆け上がってカラメリアに詰め寄るココ。


 細く不安定な丸太の足場は突風により帆が煽られてグラグラと激しく揺れる。


 正面から対峙する二人。ココが一歩踏み出すとカラメリアの銃撃が心臓を狙う。前方に跳び躱すココ。振り下ろすアマノヒツキ。FE7で刃を受け止めるカラメリア。拮抗する二人の力。カラメリアが大きく押し込み、反動で後ろへと跳躍する。追うように跳び込むココ。甲板に背を向けて落下しながらFifteeN(フィフティーン)による射撃を見舞うカラメリア。ココは弾丸の一発一発を斬り伏せる。


 「すごいッ!」


 お互いに無駄な動作がなく、あまりに苛烈な戦闘にウィズは思わず感服する。


 「何がどうなってやがる! 盗賊が提督と渡り合うなんて……あり得ねェ!」


 エヴァの魔技により拘束された状態で宙に浮かぶヤガは、目の前で起きる光景を捉えることは出来ずとも、驚愕の心境を露にした。ロメスは依然としてぐったりと項垂れており意識を失っているようだ。


 お互いに身体をぶつけ弾き合い、くるりと空中で体勢を整えたココとカラメリアは甲板へと着地する。着地と同時に攻撃に転じるカラメリア。その銃撃を受け流すこと無く、ココは間髪入れずに終始の剣アゾットに込められた力を解放した。


 錬金術を使用する際は基本的に試験管などの媒体と呼ばれる消費アイテムが必要となるが、アゾットの力を解放したココはアゾット本体にはめ込まれた賢者の石が媒体となる影響で別途媒体を使用する必要が無くなる。


 (カラメリアの弱点は私と同じ防御力の低さと片寄った耐性!)


 「【武装錬金(オプロキュミア)痺金(ひきん)(やいば)】!」


 アゾットの刀身を覆うように麻痺属性を帯びた金色の刃が、元の刀身の倍ほどの大きさに伸びてゆく。


 「【真錬金(エリクスキュミア)円環蛇の蜷局(ウロボロス・ツイスト)】!」


 ココは錬金術の発動に伴ってアゾットを振ると、尾を加えた見上げるほど巨大な金の蛇が錬成され、カラメリアを包むように現れた。


 大蛇は蜷局(とぐろ)を巻きカラメリアを拘束しようと這いずる。拘束を避けようと大蛇を銃撃しつつ素早い動きで逃げようとするも、四方八方を大蛇に囲まれたカラメリアの姿は蜷局(とぐろ)の中へと消えてゆく。


 「まだ、終わらないよ! 【(きわみ)忍法・秘技・卍撃(ばんげき)】!」


 体を大きく回転させた勢いで双剣を振り、手裏剣のような鋭い斬撃が飛んでゆく。全身が金で構成されている大蛇に触れた斬撃は、アゾットに付与されている麻痺属性を一瞬にして全身に伝達し、蜷局(とぐろ)の内外に麻痺エフェクトをビリリと発す。


 「ゥゥッ!」

 

 痺れを放出した円環蛇(ウロボロス)はボロボロと崩壊し跡形を残すこと無く消えてゆく。蜷局(とぐろ)の中心部だと思わしい場所には、状態異常・麻痺により身体を動かせずに倒れこんだカラメリアがおり、苦悶の表情でココを睨みつけていた。


 「これで終わりッ!!」


 左腕を前に伸ばして倒れるカラメリアの腕輪を狙い、ココは畳み掛けるようにして斬り込む。


 「【会心の一閃(クリティカルシフト)】!!」


 会心エフェクトと共に混沌を蝕む龍鱗の腕輪がバキリと割れ、カラメリアの身体に蔓延っていた歪な紋様がスーッと引いてゆく。苦悶の表情で睨みをきかせていたカラメリア自身も、腕輪の破壊に伴い眠りへと落ちたようだ。


 「……ココ様、カラメリア様をお連れし、すぐに離脱してください!」

 「ココ様、お急ぎをッ!」


 普段は物静かなエヴァは声を荒げ、クールなウィズは限界とばかりに顔をしかめてココに警告をする。


 すぐさま倒れこんでいるカラメリアを抱えると、ココは方舟からの離脱を謀る。


 「【緊急離脱(エスケープ)】!!」


 ヌーフの方舟のエリア特定範囲から抜けて、ココはウィズの隣に姿を現す。技能(スキル)の力を使ってココは宙に浮かび、すかさずウィズが回復の魔技を使用する。


 眼下の海は端が途切れ大きな滝になっており、滝の落ちる先はあまりの深さゆえに光が届いておらず奈落へと続く暗黒が広がっていた。


 ヌーフの方舟はウィズが抵抗魔法を解いたことで封印の術式が船底に出現し、淡い光に包まれてゆく。


 「この魔技は?」


 見たこともない魔技にココは驚きを隠せずにいると、エヴァにより近くまで連れてこられていたヤガが口を開く。


 「外道魔法さ」


 「げどう……魔法?」


 「遥か昔、この世に突然姿を現して世界を統治したとされる【五界神(ごかいしん)】、奴らが使ったとされる魔法を真似て魔導をいじくり回し創られた古代の遺物だ」


 ウィズは理解し難いと言わんばかりに頭を振る。


 「聞いたこともない序列ですね、それ故に抵抗魔法の効きが……。しかし、感じ取れた魔力という意味では3級魔法程度でしょうか」


 「魔法……が使えるみてェな口ぶりだな」


 「……」


 「魔技使役者(マギフォーサー)でも無いあなたがコレを?」


 「まさか」


 (くく)られた腕を器用に動かして、ヤガは服の裾から粗末な木彫りの人形を取り出す。

 

 「ティバーンの闇市で手に入れた。あそこには世界中から珍品の類いが集まるからな」


 (【マジックトーテム】! ヌーフに封入の鍵といい、ビッグバンのアイテムの類いがこの世界には少なからず存在してる……)

 

 ヌーフの方舟はヤガが言うところの外道魔法の力によって、魔力の鎖でガラガラと縛られてゆき、奈落の底へと落ちてゆく。


 「それにしても、てめェは一体何者なんだ。お前みたいな盗賊なんて見たことねェよ」


 「言ったハズだよ、最強の盗賊だってね」


 ヤガは苦笑を浮かべて垂れた鷲鼻をフンッと一つ鳴らす。


 「ココ様、この者のココ様へのご無礼は目に余ります」

 「……ウィズ様の仰る通りかと」


 先ほどからのヤガの態度が気に食わないのかウィズはアスクレピオスの杖を構えると魔力を集め、エヴァは弩をヤガへと向ける。


 「エヴァ、ウィズ止めて。この人には大事な情報源としての価値があるんだから」


 「かしこまりました。ココ様の空よりも広大なお心に感謝することだな鬼人(オグニ)


 「ワタクシも半分は鬼人(オグニ)ですのよ」


 「カラメリアッ!」

 「カラメリア様ッ!」

 「……カラメリア様」

 「提督」


 ココの腕の中でいつの間にかカラメリアが目を覚ましていた。

 

 「随分と長い夢を見ていた気がしますわ。ですが、ココちゃんにこうしてまた会えたことは夢では、無いようですね」


 「かなり待たせちゃったみたい、カラメリアごめんね」


 うっすらと微笑みを浮かべるカラメリアの頬を涙が伝う。朝日に照らされたカラメリアの涙が、キラキラとして海のように美しいとココは感じた。


 「さて、いつまでもこんな海の果てに居てもしょうがないし、一旦トルトゥガに戻ろ!」


 海の果てワールドエンド。大抵が嵐に包まれているが、この時、奈落を思わせるような絶海には眩しいばかりの旭日が珍しく射していた。

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