08.科学室
科学室。
「はーい、じゃあはじめまーす」
お決まりの白衣にかごを身に着けた先生が科学室に入ってくる。
加藤はいつもガムを噛んでいる。しかも気づかれないように。
もしかしたら気づいているのは私だけかもしれない。
最近席替えがあったせいで、加藤の席はみさきの席とひとつ席を挟んで後ろに座っている。
そのため科学での話し合いや実験の班は同じ。しかも班の時は加藤はとなりの席になる。
加藤と話すことはない。というより話す話題がない。でもなにかしら話さないといけない。
「実験って楽しいよね~」
気軽にそういうことを言ってみる。
「急にどうしたの?・・・」
「いやっ」
「今日は実験じゃないよ」
「ああ・・・そうだっけ」
「そうだよ」
私と加藤のほかにも男女のふたりが同じ班だ。
ふたりは付き合っている。それもしれた周知の事実だ。
「なんであの子と話してたの?」
「はあ?」
だから・・・と女子のほうが具体的な違うクラスの女性の名前を上げる。
「ただ仲いいだけだって」
「は?小中学校おなじだっけ」
「違うけど・・・」
と、ふたりは目の前で小さな戦争を起こしてる。
私と加藤はそれをじっと見つめている。
私と加藤は付き合ってない。だから目の前の女性と男性の喧嘩があほらしく見える。
けども、やはり付き合うと気持ちや感情も変わっていくのだろうか。
私は付き合った経験が一度もない。
おそらく加藤も一度もないだろう。
私はこういうことに加藤となるのはやだな。
と思い、
加藤もみさきとこういうことになるのはやだなと思った。