07.みずきの好きな人
自転車で学校へと登校していくみさき。
なんだかいつもより学校が遠く感じ、そして憂鬱だった。
昨日と今日でこんなに変わるものだろうか。
教室に加藤はいなかった。
そうだ購買でみずきにお礼になにか買ってあげなきゃと思い机から立ち上がると、
後ろから肩をぶつけられる。
手に持っていた緑色の財布が床に落ちる。
おぉーわりー。
そう言って拾ったのはバスケ部の男子だ。
そしてみさきにそっと手渡す。
が、
手渡されそうだった財布を天高く上げ、私が取れそうにないところまであげる。
「おお~相変わらず財布に嫌われてんな~。だから金がねえんじゃねえ?」
「わかったわかった」
みさきは軽く受け流す。
「ほらよ。」
今度はしっかりと手渡される。
いつもなら再び床に落とされたりするのだが、今日は特にそういうことはしてこないらしい。
別に私はいじめられているわけではない。からかわれてるのだ。
実はこのバスケ部の重人という男はみさきのことが気に入ってる。
というより、おそらく恋路について考えていることだろう。
ああいうやつに限って私みたいな変人がすきになったりするんだよねー。
重人にお似合いなのは、眼鏡にへたくそなメイク、そしてなぜかピアノやギターやバイオリンが弾けたり、将来公務員になりそうな女性と将来くっついたりするんだろうなー。
と思ってみる。
「みさきっ、ちょっと」
そう教室の入り口辺りから体を半分かくして手だけで「来て」と示唆している女性、みずきだ。
「これこそっと渡してくれる?」
「いい加減はっきりさせたら?私みたいにはっきり言えばいいじゃん」
みずきが渡してきたのは、漫画だった。
「文通じゃないんだからさ~いい加減みずきもはっきり言ったらどうなの?」
「無理だよそんなの。私みさきみたいにサバサバしてないしさ」
みずきは私のクラスのバスケ男子に恋焦がれてる。いや、重人じゃないよ。
あんな野蛮な奴には、公務員女性がお似合い。
「はいはい、わかりました」といって漫画受け取る。
みずきが恋焦がれてるのは、重人とは同じバスケ部でも正確が真逆で大人しい後藤充希という男子だ。
背がすらーっとしていて、特に特徴にかける男子。
この二人はおすすめ漫画を貸しあっている文通みたいに。しかも内緒に。
その内緒にするというルールによって、私も迷惑をこうむるわけだ。隠れて漫画を渡さなければならない。まあ、確かに常人が読むような漫画には見えないが。
そしてみずきに比べ充希はしっかりと自分でみずきに渡しに行ってる。
そしてメールとかで漫画の感想を言い合う。よくわからない。
まあ、言うならばみずきはタイミングをうかがっているというわけだ。
私は放課後とか、充希がトイレに行ったタイミングで自分も立ち上がり、漫画をもって、
トイレから充希が出てきたところに渡す。
まるで私が告白の手紙でも渡しているみたいじゃないか。
「いいよ、普通に教室で渡しなよ」
充希は優しくそう言ってくる。
「まあ、わたしもそうしたいんだけどね。どうしてもって言うしみずきが」
「なんでだろWW」
と笑い交じりに返してくる。
ハリーポッターのフクロウびんみたいな役割を早くやめさせてほしい。