03.みずきの家にて
「たしかみずき、加藤の家、知ってるよね?」
「え?加藤って?みさきのクラスの?男子の加藤でしょ?」
「うん・・・・・・」
若干赤面した自分を見て、みずきが小さく「まさか・・・」と小さく呟く。
「うヴん!そうだよ!」
「うそでしょ・・・相手は加藤なの?」
みさきはみずきのベットの上に座りながらゆっくりと目線をみずきの眼からはなした。
「そう。加藤の子だよ多分」
「あの大人しそうな顔して・・・・」
加藤とみずきは同じ陸上部だ。接点が豊富だ。それに比べて私は同じクラスだったのに、
あまり話したことがないのだ。
「ちがうよ、私から誘ったの」
「あ、あらー、それはまた・・・大したことですこと」
ちょっとトイレ。そういってみさきは立ち上がる。すると足元にある筋トレ器具にあたり、
その器具はころころと床を転がっていく。
ん?なにこれ?
「あ~、それAmazonで買ったのはいいんだけど、結局4.5回やってやめちゃった」
その器具には持ち手の部分に英語表記でかっこよく、『アブローラー』と記載されていた。
「なに、これ?」
それはあまりにもみさきには初めて見る形をしていた。
それはね・・・。そう言いながら手に持っていたアブローラーをみずきにとられる。
これを・・・こうっ!と息苦しそうにやってみせる。
持ち手と持ち手の間に一輪車のように車輪があり、それを床につけ前方に向かって転がしている。
すると自然とみずきの体は寝っ転がるようになるが、ねっこらがずそのまま今度は後進し、
元に戻る。
「つぅあーーー!これやっぱ、きっついわ」
「ていうか、腹筋って陸上に必要な筋肉なんだ」
「うーん、べつに。ただスリムになりたくて買っただけ、あっ!」
「な、なによ」
「みさき、アブローラーやりまくればいいじゃん。そうすれば流産するんじゃない?」
すらりと軽々しくいうみずきに一瞬だがいらっとしたが、いつものことなので流した。
「で?どうだったの加藤とは?つーかどこでしたの?」
「私の家。親がその日は遅く帰ってくるって言ってたから私も初めてで加藤も初めてだったらしいけど・・・それは・・・なんていうか恥ずいっていうかなんていうか・・・・」
「で?いつから加藤のこと気になってたの?」
あれ、いつからだっけ?たしか。
「一年の後半くらい。ふつうになんかかっこいいな~って」
「ど・こ・が?根暗でなにも話さないようなやつ」
「ひっど!私は本気だったんだからこれでも。ていうか加藤は話さないんじゃなくて恥ずかしいっていうか、自分の意見に自信がないってだけで話すんだから」
「なぁに熱くなってんの。」
・・・・・・・・。
図星だったので何も言えなくなった。
「あ、それより、加藤の家教えてくれない?ちょっと用があるから」
「加藤の家って・・・あんた知らないの?」
えっ?なぜそんなに驚くのかみさきには分らなかった。