34.出産
病院内
「はやく、はやく~!どいてくださいどいてください!ああっ!つかまって!」
ドン!車いすに乗ったみさきをシーツの棚にぶつける。
「何やってるのよみずき、騒ぐんじゃないの。やめなさいよ」
母がテンションマックスのみずきを叱る。急遽、みずきも病院に駆けつけたのだ。
「なんで?」
笑いながらみずきが言う
「危ないでしょ」
「たのしいーのに~~!!」
病室
「いって!いって!まじいったい!いつになったらこの痛みから解放されるの!!」
「先生が言ってたでしょ?子宮頸部が開いてないと打てないって。」
「うそでしょ!もう限界だよ!もっと痛くなるまでまつの!なんで今、麻酔してくれないの!」
「それはね、医者はサディストだから人が悲鳴を上げるのを見るのが好きだからじゃない?」
「うわああああーーー!!あああああーーーー!!!」
あえて大きい声を出すみさき。
出産所。
「うあああああっーーー!」
「そうそう頑張ってジュノ!もうすぐよ!」
「あたしがついてる~!」
「あああああーーーー!」
「そう力んで力んで!」
母は必死に声をかけている。それに対してみずきはみさきの股間を見てテンションがあがり笑顔を浮かべている。
そして、どこからともなく、あかちゃんが出てきた 男の子だった 陣痛が始まったことは大輝には連絡しなかった。陸上強豪高校との対抗戦があったから、あたしの心配をさせたくなかった。まあみずきはさぼりなんだけど)
横になっているジュノを撫でている父。ベットの机には食事は上がっているものの、何も食べていないみさき。
「まだ、ここに来る日があるさ。わが子のために。」
廊下から走ってくる音が聞こえる。
「はーい、素敵な足」
そこには大輝の姿があった。姿は陸上のユニフォームのままだった。おそらく練習試合の後その足でどこかで話しを聞いてきたのだろう。
父はみさきの額にキスをして、大輝の両肩をつかみ、軽くうなずき、病室をあとにする。
ヘッドバンドを取り、髪を整える大輝。そしてふたりは一緒に添い寝する。するとみさきは涙を流した。
(大輝は赤ちゃんを見ないことにした。あたしもそう。あたしたちの子には思えなかったから。・・・・佳奈さんの子だもん!)
赤ちゃんのいる病室。
「息子さんに会いますか?」
「男の子なのね」
佳奈は緊張するように答える。
「さあ、どうぞ。とっても元気ないい子ですよ。」
赤ちゃんを渡される佳奈さん。
「はーい、ああ、これでいいの?なんだか、こわいわ。」
病室を見ているみさきの母がいるのに気付く佳奈さん。
「ああ、今の私、どう見えます?」
「新米まま。不安でいっぱいの。」
ベットで横なっている二人の足元。
大輝は泥だらけのシューズ。みさきはカラフルな靴下。
みさきはまだ泣き止まない。




