29.帰宅
となりの家の前に咲いている紫色の花を摘み取る。そして花のにおいをかがせるように腹の前でぐるぐるさせる。
家の中に入り、上着を脱ぐ。父が熱心に機械を修理している。
「ただいま」
「おかえり魔人ブウ。どこ行ってた?」
「あたしの大人度をはるかに超えた事態に悪戦苦闘してきた。みんなはどこ?」
「ああ、ブレンダはLBをスケート教室に連れてってる。」
「あは、あんな小さい子にスケート教えたって無理だって。」
「ずいぶん暗い顔してるな。どうした?」
「あ~ん、・・・・人類への信頼を失いつつあるとこ。」
「もっと具体的に説明してくれ。」
「あのね、二人の人間が永遠に一緒にいるって可能かな?」
「カップルがか?」
「そう、恋するふたりが。」
「まさか、男問題か?はっきり言わせてもらうと、お前の今の状態でデートはよくないぞ?面倒なことになる」
「違うよ、そうじゃない。」
「まじでやばいことになるぞ。若い子はそういうんだろ?チョーやばい。激やば?」
「はは、よしてよ」
「ぱねーことになるぞ。」
「違う。安心してそんなんじゃない。ただ・・・信じたいんだよね。ふたりの人間が永遠に幸せでいるのは不可能じゃないって。」
「まあ、簡単なことじゃないがな。パパも一度失敗したから偉そうなことは言えないが、ブレンダと一緒になって十年、今は幸せだって胸を張れる。いいか?
パパが思うに、一番大切なのは、素のお前を愛してくれるそういう人を見つけることだ。不機嫌でも、醜くても、とにかくどんな時も、お前を素晴らしい人間だと思ってくれる人だ。」
「ははっ・・・」
「そういう相手なら一緒にいる価値がある。」
「だね・・・そういう人、ちゃんと見つけたよ。」
「だよな?目の前にいるパパだろ?」
「ふふっ」
「何があってもパパはいつも愛してるし、お前の味方だよ。間違いない」
「ははっ・・・・あたしちょっと、出かけてくるね。でもー、遅くなんないから」
「わかった。そういう人ってパパだろ?」
「もちろん」




