14.両親に「妊娠」報告
土曜日。
みさきは家にみずきを呼んだ。なんでかって親に妊娠したことを言うためだ。
意地汚いかもしれないが、こういう話を一人で言うよりは友達が一緒にいてくれた方が、
気まずい空気にならないというか、なれなくすることができる気がしたからだ。
呼ばれたミズキは迷惑そうな顔をしていたが関係ない。
「どういえばいいのかわかんないんだけどさ・・・・」
両親はみさきをじろっと睨むように見ている。
両親をわざわざ呼び出して言うことはみさきは初めてではない。しかし、いつもこういう威圧される
空気感は変わらない。
「もしかして学校に通ってなかったとか?それとも退学になりそう?まさか、テストの点数が足りないとか?」
「違うよ。だったらちゃんと二人に連絡いくはずでしょ?普通」
「大金が必要か?」
「それとも、なにか犯罪犯したとか?」
二人は次々と不確定要素の悩みを解いていく。
「いや別になにも必要ないし多分だけど。怒らないでくれるとうれしいな」
ふたりは唾を吞むようにしてごくりと喉を鳴らした気がした。
「みさき、ずばっと言っちゃったほうがいいよ」
そのみずきの台詞に両親は姿勢を再び元に戻す。
「・・・・妊娠した」
「うそでしょ・・・・」
母は即答でそう返してきた。
「う、う、産んだら養子に出すつもり。理想的な夫婦ももう見つけたの。」
「妊娠・・・・」
父親は言葉を失ってしまっている。
「でも、ちゃんと胸焼けは続くし、大きい方はでないからさ」
「どんな子だ?」
父親がそう質問してくる。
「赤ちゃん?わかんない。一度こそっと中絶しようとしたけど、逃げてきちゃったら私」
「違うくて・・・つまり、赤ちゃんのお父さんだ」
一度言うのを拒んだ父。しかし、しっかりと最後まで言葉を続ける。
「あー、それは学校の同級生。多分わからないと思う。陸上やってるんだけど」
「名前は?」
今度は母親が聞いてくる。
「加藤大輝」
「もしかして、大地主の家の加藤さんじゃない?」
なぜか母親は知っていた。おそらく仕事でみにつけた非常にでかいネットワークがあるからだろう。
「うん、まあ。」
みさきはそう言った。
「本当に好きだったの?加藤君のこと」
「好きだったの、っていうより今も好きだよ」
「で、子供はどうする気だ?」
「養子にだそうとは思ってる。」
「ねえ、みさき、出産や養子縁組って、ものすごく大変なことなのよ。あなたが今考えてるよりずっと。」
「だよね、わかってる。でも、私まだ母親にはなれないし。」
「なれるはずないだろ」
と言い出す父親。
「で、みさき、中絶っていう方法もあるんだけど・・・」
「やなの」
「そっか、分かった、もう部屋に言ってもいいよ」
と優しく母は答え、私とみずきを部屋へと促す。