11.産婦人科
病院。
病院の受付に予約を確認し、待合所でに十分ほど待機することになった。
待合所にいたのは、いろんな世代の女性たち。
なかには40代を過ぎているのではないかと思われる女性もいた。
みんながみんな中絶というわけではないだろうが、どうしても中にはちらほらと
若くてケバイ女性や、うつむき暗そうな女性などがいた。
そんな空気の中で、まるで疎外感を感じながらせきにすわる。
周りの中絶患者の立てる音が耳をつつく。
質問用紙が挟んであるバインダーを指でつつく音。
爪を爪で研ぐ音。
マニキュアを塗る音。
腕を掻く音。
鼻をほじる女性。
爪を研いでいる音。
首を掻く音。
いろんな音が何か自分に訴えかけているように聞こえた。
すると、その音はだんだんと動悸の音と変わり、体はたまらず動き出した。
私はこんなところにいるべき女性じゃない!
私はこの子を・・・・・
産んでやる!
反抗期からくる社会への反感のような感情がぐつぐつと湧き出し、
そして勢いよく爆発した。
立ち上がった体は病院を出て、家へと駆けていった。
ピンポーン。
扉から出てきたのは、みずきの母親だ。優しくふくよかなお母さんだ。
「久しぶり。」と軽く言うと、「みずき~!みさきちゃーーん!」
と叫ぶ。
どたどたと階段を降りてきた、みずきは、顔を一度一瞥した後、そばにあった
スリッパを置く。
こういうところはしっかりしていると改めて思わされる。
ミズキの部屋。
みずきの部屋に入り、しっかりと扉を閉め、
で、「中絶は?」と問いかけられる。
「できなかった。なんか生んでやろうと思ってさ。」
「は?でも中絶しないとやばいんじゃない?」
「でも、赤ちゃんは生むことにしてさー赤ちゃん欲しがってる人にあげるってのはどうかな?例えば不妊の女性とかレズのカップルとかに。」
「えー、いるもんかなーあ、でも!用紙の広告チェックしよう」
「あるのそんなの?」
「たしか、記載されてた気がするよ。切実に子供求むってさ」