見上げる天は幼き瞳に絶望を写す
今回長め。ほぼ回想。
第三夜
ー 絶望の淵 ー
「は、はいえっと私達は《ストレイフェアリー》と呼ばれる種族です。働きたくてここまで来たんです。」
ストレイフェアリー?ただの妖精じゃないってことなのか。 てゆうか、やっぱ妖精とかいるんだな。自分が異世界に来たことを改めて実感するよ。
「何よじろじろ見て、何か文句でもあんの?ぶん殴るわよ?」
ええ?なんで?なんでこの妖精怒ってるんだ?いや、確かに見てたけど、じろ、じろじろは見てなぁ、見てないし。見てない。見てない。
とそう言えば他の二人もなんかぎこちないというか変に緊張してるような。
『ちょっとハヤト聞いて、その内言うつもりだったんだけど、この世界の妖精族は二つの種族に対立してるのよ。
ー富裕層ー
ー貧困層ー
この二つの種族なんだけど数年前の戦争以来完全に対立したらしいの。それ以来、富裕層は遊んで暮し、貧困層は働きづめ、中には富裕層に奴隷のような扱いを受ける者もいるらしいの』
「は?な、なんなんだよ、それ、いったいどうして...」
おそろしい話しだ。もといた世界にもこういう話しはあったな。どこの世界でも変わらないということなんだな。何があったかはわからないが妖精族は貧富の差が極端に激しいらしいな。きっとこの子達も働き口を探してここまで来たんだろう。
「あの頃は楽しかったねぇーお姉ちゃーん」
「そうね、あの戦争が起きるまで...はね、」
触れてはいけないことなんだろうが気になってしまう。この子達に戦争の話しを聞いていいものか、、
「あ、あの、ハヤト...さん」
「は!はっはい!」
「もしよろしければ、お話ししましょうか?その、戦争のこと」
まるで心を見透かされた気分だ。妖精は心が読めるのか?まぁ話しが聞けるのならこちらとしても嬉しい。相手の事情がわかっていた方が楽だろうし。
俺は静かに頷いた。
ー妖精族、この世界の大きな覇権の一つ。その都市部。そこに住む四人の少女らの誰も知らない話ー
バシンッ
「いったい!!」
「ふぁぁー、リミスぅーおはよぉー」
「ちょっとリリル!おはよぉー、じゃないわよ!!」
「あわわ、二人とも落ち着いてぇーど、どうしようイーセル!」
「んー、ほっときゃその内収まるよ」
都市部郊外に四人の子供を持つ家庭があった。
長女イーセル、次女のイネル、次三女のリミス、末っ子のリリル
四人はとても仲が良くていつも元気に遊んでいる。今日は四人が楽しみにしていたお花畑にピクニックに行く日だ。お花畑は山の上にあり、季節により違った景色を見せる。
「すぅー、はぁー、空気がおいしいわね!マイナスイオンを感じるって感じだわ!」
「ねぇ、イーセルぅーマイナスイオンってなぁに?」
「え、え?あ、あーそれはな、リネルに聞いてくれ!」
「え?ええ!わ、私!?わ、わかんないよー」
「ははーん、セル姉説明できないんだー??」
「そそそれは...」
「やっぱできないんだー」
「か、からかわないでよ!もぉー!!」
「フヘヘ、楽しいねぇー、みんなでピクニックぅー」
「そうだね」
「そうね!」
「だな!」
話しをしていると、あっという間にお花畑に着きました。
そこには野原一面に白く、美しい花が見事に咲き誇っていました。ほのかに甘い香りが漂い、花びらが舞っている。
街を見下ろすと大きなお城が見え、その奥には無限に広がる空が見えました。この景色は幼い心にも響きました。そしてこの空間がいつまでもいつまでも続けばいいと思いました。
しかしそれは何の音も立てずに始まりました。
ー妖精族断絶戦争ー
妖精族が二つの勢力に別れ、互いにその地位や名誉をかけた戦争を始めた。妖精族は数ある種族の中でも有数の魔法を得意とする種族。故に争いの内容はこの上なく激しい物となった。紅蓮が森を焼き、水流が街を呑み込み、爆風が田畑を破壊し、爆裂が人を切り裂いた。
争いの波は当然、少女らにも襲い掛かった。
激しい爆撃音が鳴り響く中、少女らは山道を走っていた。
宣戦布告を仕掛けたダーマネル軍はその翌朝に一斉攻撃を開始した。国王率いる国家兵団も、ダーマネル軍の不意打ちになす統べなく、ただただ城が崩れる様を眺めることしかできなかった。
少女らの住む都市部もそう長くはなかった。
しか少女らは逃げることに成功した。それは敵軍の男性兵士が退路を教え、誘導してくれたからだ。
そして現在に至る。
「ねぇ、やっぱさっきの人ロリコンってやつじゃないの?」
「ろりこん?なぁーにそれ?兵士さんのことぉー?」
「リ、リリルはまだ知らなくてもいいかなと思うよ!」
「ちょっと!今はそんなことどうでもいいの!早く逃げるの!」
イーセルが皆を先導するように少し前を走る。
「もう少し、で、お花畑だから早く行くの!」
お花畑を抜けた先の森を進めば国境にたどり着ける。これもさっきの兵士が教えてくれた。国境まで逃げれば敵軍も来ない、少なくともここよりは安全だ。そこまではあと少しだ。
「イーセルぅー、はーやーいー!」
「ちょっと、もう見えないじゃない!」
「イーセル!待ってくださいー!」
「 ...」
返事がない。三人は顔を見合わせる。と同時に何か嫌な気配を感じた。今までにないような、何か嫌な予感。体が震える。見えない何かが恐い。でも、進むしかない。
三人は急いで山道を駆ける。
ヒュュュュューーーーー!!
お花畑に入ろうとした途端、ものすごい突風が三人の動きを止め、視界を遮る。
ピチャッ
リミスの顔に何か生暖かい液体が飛んできた。ふと手に取りそれを確認する。
「え...これって」
そして三人はお花畑の方を見上げた。三人はその光景に悲鳴を上げることさえできなかった。
空中で仁王立ちをし少女の頭のような物を抱えた女が飛んできた。女の真下には、首から上が綺麗に切断された同い年くらいの少女が、立っていた。
少女の周りには、赤く染まった花が静かに咲いていた。
続くよ。なんかタイトル詐欺っぽくなってる。




