この空を飛ぶ蝶のように
空の向こうに 広がる大地
静かな風の吹く 泳ぎ疲れた帽子
ふくれた思い出の風船は
鉛の角にぶち当たる
空に放たれた思い出は
あなたの 心の中に
冷たい風の香り 静寂の降る夜に
ただいまと 声が聞こえる
振り返れば どこ?
気がつけば森の中 新しい朝を迎える
春の訪れを祈ろう 暖かな光が照らす
さあ その目を閉じて 君の前を 白き蝶が飛ぶ
あの空を飛ぶ蝶のように
果てしなく続く人生という名の道を
ただ独り歩き続け、疲れてしまった
これまでの思い出は、丸く丸く削られて
いつかに愛した人に、私が捨ててきた
疲れきった体は、いつのまにか白い雪が埋めていく
欲しかった言葉が、幻聴になって聞こえてくる
あなたが、そこにいるの?
でも、いないの
鬱蒼とした森の真ん中で
自然に満ちた自分の体を
夢ではないかと確認する
ああ、春が来た
暖かい光だ
最期に残った私の体は、白き雪となって融けてゆく
この空を飛ぶのは、今の私
ただ、人を愛し抜いた。でも想いは叶わない。ならいっそのこと自然に還ろうと、冬の寒さの中を少女はゆく。いつしか春になった時、自分が幸せになっていることを願って――。