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再会

「おお、来た来た!」


 まだ飲み会は始まっていないはずなのに、店に行くとすでに数人がいて、ビールのジョッキを持ちながら盛り上がっていた。


 あ、北野だ。

 なんか懐かしいな。

 由紀子と一緒にいるってことは、二人は付き合ってるの?


 ここ四年、飲み会なんてほぼ参加したことがなく、私はかなり新鮮な気持ちで席に座る。

並子なみこ佳緒留かおるもビールだよな?」

「うん」


 北野の言葉に私と佳緒留は同時に頷く。それを見て由紀子がニヤっと笑った。


「ねぇ。二人って付き合ってるの?」

「ないない! ありえないから!」


 付き合ってるどころか、私は人妻、子持ち……、ああ、でも今は一人か。


「うーん。僕は付き合って欲しいと思ってるんだけどね」

「!」


 何、言ってるの、こいつは。

 そんなに親しい仲じゃないのに!

 だいたい、こんなナンパな奴と付き合っても苦労するに決まってるし。

 その点、すぐるは一途だったよね。


「並子~。佳緒留とつきあったちゃえば?今彼氏いないんでしょ?」

「今って言うか、ずっといなかったりして」

「う、うるさいわね。余計なお世話!」


 ずっといないって、北野の奴、頭にくる。

 

 っていうか、この世界で私ってどんな感じで四年間過ごしてたんだろう。

 やっぱり彼氏いなかったのかな?


「白田。はいビール」


 もんもんとそんなことを考えてる私に、佳緒留がにこりと笑ってビールのジョッキを渡す。


 確かにかっこいいわ。

 うん。


 でも佳緒留かあ。

 考えたことなかったけど。


 だめだめ、こんな遊び人は相手にしたら苦労する。

 それよりも、私は元に戻る方法を考えなきゃ!


「あ!積谷せきやだ」


 ふいに北野がそう声を上げ、私はビールのジョッキをテーブルに置くと、入り口のほうを見る。すると昨日まで夫だった優が、綺麗な女性を連れ添って立っていた。


 誰?


「積谷~。それ誰? 彼女? お前もそろそろ年貢の納め時?」

「北野、うるさいぞ。だから連れて来たくなかったんだ」


 優はむっとした顔でそう返しながらも、彼女を気遣いつつ歩いてくる。

 見たこと無いな。

 誰だろう?

 やっぱり彼女なんだよね。

 年貢の納め時ってことはまだ結婚はしてないってことだよね。


 私はかなりぶしつけに彼女さんを見てしまう。

 なんだか妙な気持ちだった。


「……白田しろた。久しぶり」


 ふと優が私に気づき、にこりと笑う。

 私はその笑顔にどぎまぎしてしまい、こんなカッコいい人だったかと驚いた。


「……す、積谷。本当久しぶりね」


 私はどきどきする胸の高鳴りを気づかれないように、さらりと答える。すると優が何かを言おうとするのがわかった。でも彼女がぎゅっと彼の腕を掴み、彼は視線を私からそらす。そして斜め向かいに彼女と一緒に座った。


 何?

 何を言おうとしたんだろう?


 でも、私がその答えを知るすべはなく、飲み会は進んでいく。


「宮子さんね。この町に来るのは初めて?」


 飲み会の中心は優の彼女だった。

 彼女――宮子さんはみんなからの質問攻めに合い、優が文句を言いながら代わりに答えていた。

 お似合いの二人だった。


「もう、積谷の親にはあったの?」

「はい」


 彼女は赤くなって頷く。


 ……可愛い。

 私の時はこんな感じゃ、なかったもん。

 でき婚だったしなあ。


 そういや向こうの両親は驚いていたっけ。

 まあ、嫌われてはいなかったと思うけど。


 きっとこういう可愛い人だと、喜ばれるのかな。


 私はみんなに囲まれ、幸せオーラを放つ二人を見ながら、心がどーんと沈んでいくのがわかった。


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