5.猫がいない!
家の前に、ふわふわしたのがいるんですが…。
「今日も来たの?」
いや、いいから開けろみたいに扉叩かれても。鍵をあけて扉を開くと、リビングにまっしぐら。ちょっと!足拭いてからしてよ!
雑巾を濡らして我が物顔でくつろぎ中の猫の足を拭いてから楽なルームウェアに着替えた。ご飯を用意してやり、食べ終えた頃に窓を開けてやる。しかし、猫が動く様子はない。
「今日も泊まっていくの?」
ちらっと私を見て、あくびをして丸くなった。泊まるのね。それからは昨日と同じ。私もご飯を食べて、デザイン画を描いていると猫が乗ってきて、寝るときは猫とベッドへ。
朝もほとんど一緒に出て、帰ってくると扉の前に猫がいて。そんな日が続いて、猫すっかり同居人になっていた。このアパートはペット禁止じゃないけど、応相談だから大家さんに報告しなくちゃ。
「トシさ~ん。ちょっと相談があるんですけど~。」
今時珍しい管理人室をノックすると、トシさんが出てきた。
「どうしました?あがってくださいな。」
お部屋にお邪魔して、例の黒猫を飼うことになったと伝えた。そこまでの経緯も話すと、
「ようやくいい人を見つけたのね。」
と、笑って了承をもらった。
猫と同居をはじめて1ヶ月。梅雨明けしてから暑い日が続いている。こう暑いと外に出たくないのか、猫は昼間もうちにいることがある。そんな時はソファーから動かないのでエアコンを付けて家をでる。電気代が…とも思ったけど、猫が熱中症になるよりいいだろう。今日は店長が突然昼から買い付けに出るというので、午後からはお休みになった。私が店番をすると言ったけど、
「いいのいいの。2日くらい帰ってこれないからその間はお休みしましょ。」
と返されて、突然の連休になってしまった。
店長を見送って、私も早めの帰宅。キャットフードが少なくなっていたのを思い出して、途中ペットショップに寄った。これおいしそうだな…
すっかり常連になったペットショップを出て家の鍵を開ける。今日は猫がいるはずだから構って遊ぼうかな~などと考えながら部屋に入ると、
知らない男がソファーで寝ていた。