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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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君を捨てると決めたのに

掲載日:2026/07/24

***BL*** 大学生の二人。一緒に住んでいるのに、、、。ハッピーエンド



 長い交際期間で、君は僕をただの同居人にした。



*****



 付き合ったキッカケは、彼からの告白だった。

 大学生の僕達。

 確かに仲が良かった。

 気も合うし、一緒にいる時間は楽しかった。

 いつしか、お互いの友達や、同じ学部の異性にヤキモチを妬く様になり、彼から付き合おうと言われた。

 

 僕は君を好きだったけど、君はどうなんだろう、、、。


 中学時代や高校時代の彼女の話しを聞いた事がある。つまり、君は僕とは違い、異性と付き合う事が出来るんだ。

 


 それなのに、僕に告白したのは何故?本当に好きだったのかな?



 それとも興味本位?



*****



 大学から帰ると、彼は帰っていない。

 最近の彼は、バイトか飲みに行ってばかりで、家にいても一緒に過ごす事が無くなった。

 狭いリビングのテレビは、もう誰も見ない。

 シャワーを浴びながら、洗濯機に水を溜める。家中の洗い物を集めて、洗濯をする。

「掃除機掛けないと、、、」

朝は彼がまだ寝ているから掛けられない。僕は掃除をして、自分のご飯を作る。


 此処ここに住み出した頃、彼はよくご飯を作ってくれた。

 でも、最近では食事の時間すら別々だ。

 いつからこんな感じになったんだろう、、、。よく分からない。2ヶ月前辺りかな?


 それでも、僕は彼が好きで、彼のシャツの匂いを嗅ぐとドキドキする。



*****



 ご飯を食べて片付けをした。卒業論文をやらないと、、、。

 僕は自分の部屋に入る。


 夜中、玄関が開く音がした。

 彼が帰って来たんだ。

 僕の部屋は玄関横。真ん中に台所が有って、奥に彼の部屋とリビングがある。

 彼は僕の部屋にも寄らず、自分の部屋に行く。

 すぐにドアが開く音がして、彼がシャワーを浴びに行くのがわかった。

 バイトが終わるのが11時。もう、1時を回っているから、今日もバイトの後に飲みに行ったんだ、、、。

 僕は論文に一区切り付けて、彼がシャワーを浴びている間に歯を磨いた。

 自室の電気を消して布団に入る。

 明日は二限からだから、少しゆっくり出来るな、、、と、思いながらウトウトする。



*****



ゆう、、、?」

「ん、、、何、、、?」

「ね、、、したい、、しよう、、、?」

僕の返事も待たず、彼は布団に入って来て僕に触れる。


 眠いのに、、、


 そう思いながら、彼が触れると反応してしまう。

 彼のシャンプーとボディソープの香り、、、。

 

 久しぶりだな、、、。と思う気持ちと、今から?と言う気持ち、、、。結局、半分寝惚けた僕は拒否する事も出来ずに受け入れてしまう。


 

 事が終わると、彼は僕を少し抱き締めて、もう一度シャワーを浴びに行った。

 遠くに聞こえるシャワーの音、、、。気怠い身体。


「悠、、、シャワー、浴びられる?」

「う、、、ん。もう少し後で、、、」

「俺、明日早いから寝るよ。お休み」

彼の言葉に、何だか心にぽっかり穴が開いたみたいだった。



*****



 朝起きたら、彼はもういない。

 家の中がシン、、、として、薄暗くて、今の僕みたいだった。


 大学に行く為に歯磨きをする。洗面所に置いてある洗濯籠、、、彼の昨日のシャツが入れてある。



 赤い、口紅、、、。



 涙が出そうだった。彼の新しい時間が始まったのかも知れない。、、、昨日のアレは、罪悪感から僕を抱いたのかも、、、。



*****



 それからまた暫く彼と会う事は無かった。

 僕は自分の部屋で卒論を書いて過ごし、土曜日と日曜日は朝から晩までバイトに行った。



 ただ、同じ場所に住んでいるだけ、、、。



 そんな感じ。

 家賃は浮くし、病気の時、一人きりじゃ無いって心強い。


 でも、恋人らしい事をしていない、、、。

 違う。

 身体の関係はあるんだ。だけど、愛は感じない。



 本当はデートに行きたい。

 外に食事に行くだけでも良い。

 一緒にご飯を作り、食べ、片付け、二人でソファに座り映画を観たい、、、。



 二人で何かをする事が、無くなった気がする。



*****



 やっと征一郎を映画に誘う勇気が出た。思い切ってドアをノックして返事を待つ。

 中から「どうぞ」と聞こえた。

「あのさ、征一郎、、、今度の土曜日なんだけど」


ごめん、寝てたみたいだ。電気の消えた部屋、ベッドの上で眠そうにしている。


「ん?週末?」

「うん、、、」

「あー、、、。金曜日の夜から予定があるんだ」


 頭が回らないみたい、、、


「そ、、、っか、、、」

「どうした?」

「いや、何でも無い、、、。いつまで?」

「日曜日、夜になるかも」


 洗濯物に着いた口紅が蘇る。


「分かった」


「起こしちゃって、ごめんね」

僕は、彼の部屋の扉を閉めた。


 初めてのデートの時に映画を見た。その続きが土曜日から始まる。

 「もし、続きが上映されたら観に行こう」と約束したけど、、、もう随分前の話しだから忘れちゃったよね。



 一人で観に行こうかな、、、。



*****



 金曜日の夜からと言っていたから、一度大学から帰って来るのかと思っていた。

 でも違った。

 彼は朝、大きな荷物を持って家を出た。



 大学から帰ると、いつもと同じ暗い部屋。

 今日から日曜日まで一人きり。

 映画の公開日に合わせてバイトを休んだのに、誘えなかったな、、、。


 馬鹿だ、、、。


 淋しいのに、電話も出来ない僕。

 彼が旅行を楽しんでいると思うと、邪魔したく無いんだ。


 今頃、口紅の彼女と一緒かな。

 そう言えば、今日着て行った服、あの時のシャツだった。



*****



 一人で映画に行く事も出来ず、買い出しをして、家から出なかった。

 身体を動かさないから、尚更僕の気持ちは落ち込み、軽く食事をしてはずっと布団の中だった。

 食事と言っても、菓子パン一つ。


 日曜日の夕方、今日は帰って来ると思い、カレーを作る。

 温かいご飯で食べて貰いたくて、二合炊いた。

 19時を過ぎても帰って来ない。

 僕は布団の中で待っていた。

 いつの間にか眠ってしまい、時間を確認する為にスマートフォンを見る。


「予定が伸びて、明日はそのまま大学に行く。帰るのは明日の夜の予定」


 なぁーんだ、、、帰って来ないんだ、、、。


 夕方作ったカレーはすっかり冷めていた。

 僕は小分けにして、冷凍庫にしまった。お米も小分けにする。

 一人分だけ取っておいたカレーを、電子レンジで温めて食べる。


 もう、22時を過ぎていた。

 こんな時間に何やってるんだろう、、、。そう思いながら、シャワーを浴びる。

 炊飯器から出したばかりの白米が冷め切らず、冷凍庫に入れられない。朝、忘れない様にしないと、、、。



 一度変な時間に寝てしまったから、全然眠れない。今日は一限から1日授業がある。仕方が無い、卒論の続きをしよう。

 明け方にウトウトし始めて、タイマーを掛けた。数時間寝て、カレーを食べて家を出る。



 昼休憩、学食にしようと食堂に行くと、征一郎と友達が固まって食事をしていた。

 僕は一番離れた席を選ぶ。

 前は、彼の近くの席を選んでいた。

 一緒に仲間に入れてくれる事もあったけど、彼の友達は賑やかなタイプで僕とは違う。

 段々居辛くなって行き、自然と近寄らない様になった。

 彼のグループには女の子も居て、彼女達の甲高い声が僕は苦手。キャハハッ!と笑うのもイヤなんだ。

 でも、彼の友達なのに、イヤって言うのも変かと思う。



 今日は何だか彼に見つかりたく無かった。僕が此処ここに来た事に気付かないで欲しい。

 彼と僕の間に柱が入る様な席を探す。



**********



 俺から告白した恋人は、男だった。

 自分が男を好きになるとは、思わなかった。

 悠は一緒にいて、一番気楽な存在。


 悠が酷く酔った日。

 その前から、ちょっと元気が無いな、、、と思っていたけど

「僕の恋愛対象は同性だから、あまり近付かない方が良いよ」

と言って泣いた。

 俺は逆に意識してしまい、、、。彼の表情や仕草に惹かれた。

 もっと可愛い女の子は沢山いる。化粧が上手で、髪を緩く巻いて、彼女達はいつも身嗜みに気を付けている。

 そんな姿が好ましいな、、、とは思うけど、俺は悠を選んだ。


 素直じゃ無くて、意地っ張り。淋しくても甘えられない。悠は不器用だった。


 付き合う前は、他のヤツ等とはちょっとタイプが違う、気の合う友達だった。

 でも、一緒にいる時間は悠が一番長い。

 どちらとも無く隣に座り、約束しなくても昼休憩は一緒に過ごす。

 つい、悠を探してしまうし、悠も俺を探してくれた。


 

 彼の事を気に入っている女の子は、何人かいた。

 その内の一人は、如何いかにも清楚な女の子と言う感じ。俺が気付くといつも悠の側にいた。

 悠の恋愛対象が同性とは言え、あの子に告白されたら付き合っちゃうんじゃ無いかと思った。


 二人でいる時の雰囲気が、凄く良い。


 悠を取られたく無い。


 そう思いながら、いつも見ていた。


 飲み会で、その女の子は悠の隣に座った。悠の為に酒を注文し、彼の為にサラダを取る。

 可愛く塗られた指先。艶やかなリップ。ほんのり香る香水。恥じらう様な赤い頬。

 悠も満更では無いみたいだ。話し掛けられて、愛想良く対応する。


 その日、確かに酔っていたけど、記憶を無くす程飲んでもいないし、ちゃんと意思も記憶もある。

 解散間際に彼女が悠と腕を組み、駅まで送って欲しいと強請ねだっていた。だから俺はつい、悠を取り戻し、悠を送りながら告白した。


 その時の悠は、俺の告白を信じられず、静かに泣いた。


 それから二人で何度もデートをして、一緒に住む事になった。



**********



 もうすぐアパートの契約更新だな、、、。不動産屋に連絡しないと、、、面倒臭い、、、。

 征一郎とも話しをしないと、、、。このまま二人で住むのか、別々にするのか、、、。きっとこのままだろうな。新しい部屋を探すのは骨が折れる。


 出来るだけ早く話しをしないと、、、。そう思って、征一郎の帰りを待つけど、彼はやっばり帰って来ない。また飲みに行ってるのかな?


 0時まで待ったけど、帰って来ないから歯磨きをして布団に入る。

 暫くしたら、玄関の鍵が開く音がした。

 帰って来たんだ、、、。アパートの契約更新の話しは、また今度にしよう。布団から出るのが億劫だ。


 

******



 僕は中々会えない彼に読んで貰いたくて、不動産屋から届いた「更新のお知らせ」と書かれた葉書を、台所に置いた。流石に此処ここなら気付くと思って、、、。



**********



 昨日もバイトが長引いた。

 スナックでボーイの仕事。

 深夜になって来ると、酒を勧めて来る客もいる。俺はにっこり笑って受け取る。

 中には女性のお客さんもいて、俺はそんなお客さんの相手になる事もある。

 そう、、、それで、この間酔っ払ったお客さんからシャツに口紅を付けられた。ママに「よく乾かしてから、いらない歯ブラシと台所洗剤を使って擦ると落ちるのよ」と教えて貰ったんだ。

 スナックのママは物知りで、面白い話しを沢山聞かせてくれる。



 家に帰ると台所に往復葉書が一枚あった。アパートの契約更新のお知らせ。

 そっか、更新があるんだ、、、。

 俺は悠と付き合って此処ここに来た。

 大学生専用のアパートで、大家さんにシェアしたいと相談したんだ。

「近所に迷惑を掛けない事、綺麗に住む事」が条件で、学生だからと値上げはしなかった。

 あれから2年も経つんだ。早いな、、、。

 でも、俺達ももうすぐ社会人なんだこのアパートから出ないといけないんだろうか、、、。


 俺は悠の部屋を見る。

 もう寝てるだろう。起こさない様に静かにシャワーを浴びないと。



**********

 

 

 朝起きたら葉書はそのままだった。征一郎は気付いたかな?

 今度、ちゃんと話さないと、、、。


 僕が朝ご飯を作っていたら、征一郎が起きて来た。

「お早よう」

「お早よう」

「今日一限から?」

「うん、、、征一郎も朝ご飯食べる?」

彼が台所に立つ僕を、後ろから抱き締めた。

「危ないよ?」

フライパンで卵とソーセージを焼こうと火を付けたばかりだった。

「うん」

と言いながら彼は、右手で火を止めた。僕を抱き締めながら、僕の匂いを嗅いでいる。


 僕の事、まだ好きなのかな、、、?


 ゆっくり、僕のシャツを捲り、素肌を撫でる。

「征一郎?」

「、、、」

彼の手が、、、

「あの、、、征一郎?」

「ちょっとだけ、、、」

ちょっとだけって、僕、授業があるのに、、、

「悠」

僕の頬に触れて、彼の方を向かせると肩越しにキスをした。身体を触られながら、キスをされたら、、、。



 キスをされたら、、、。




*****



 だからっ!今日は一限からって言ったのにっ!

 僕は朝食を食べる時間を失い、イライラしていた。

 急いで改札を通り、目の前の電車に乗る。この電車に乗れば一限に間に合うんだ。後ろでドアが閉まり、ホッとした。

 ドアに寄り掛かり外の景色を見る。次の駅からは、ずっと反対側が開くからゆっくり出来る。


 あんな事して無いで、アパートの更新の事話したかったのに、、、。

 帰ったら征一郎はまたバイトで遅くなるだろうしさ、、、。


 毎日眺める景色。大学まで駅三つ。電車に揺られながら、少しずつ冷静になって行く。



 あの映画は終わってしまった。結局誘う事は出来なかった。



*****



「悠、アパートの更新の事だけど、、、」

征一郎が僕のドアをノックしながら言った。

 僕はドアを開ける。

「あっちで話そう。コーヒー入れるから行ってて」

「うん、有難う」


 征一郎はコーヒーカップを二つ持ち、狭いリビングに入って来た。

 床に置かれたソファに座った。

 お互い自室が有ったし、僕は卒論が忙しく、彼はバイトで帰りが遅いから、今は全然使って無い。


「アパートの更新どうする?」

「うん、、、」

久しぶりの会話に緊張する。

「やっぱり新しい所探さないといけないかな?」


 、、、そうだよね、、、


 いざ、はっきりそう言われると辛かった。


 僕達の関係も終わるんだ、、、。


「悠?どうした?」

「、、、」

言葉が出ない。

「そんなにこのアパート気に入ってる?まぁ、大家さん優しいし、間取りも丁度良いけどさ、、、。やっぱり春には出ないと」

「うん、、、」

「不動産屋、いつ行こうか」

「いつでも」

「じゃ、午後行く?良い物件は早く無くなっちゃうし」

「、、、うん、分かった」

 

 征一郎は、彼女と一緒に住むのかな、、、。


 僕は、、、。

 僕はワンルームで良いや。狭くても平気。就職する会社に行きやすい場所で、近所にスーパーが有れば良いかな、、、。



*****



 征一郎が「契約更新のお知らせ」と書かれた葉書を持ち、二人でアパートを出た。

 不動産屋さんに着くと、彼は躊躇無く入って行く。対応してくれた人に葉書を見せると、椅子を勧められる。

「継続されますか?それとも新しい物件をお探しですか?」

「解約して新しい所を探します。間取りと家賃は今位で、、、」

店員さんは葉書を見ながら

「あぁ、そうですね。もう卒業ですか。場所はこの近くで宜しいですか?」

「悠?悠はどうする?」

「え?、、、」

「住む場所。何処どこか希望はあるの?」

「え、、、えっと、、、新しい職場の近くでワンルームなら、、、」

「、、、ワンルーム?」


「、、、?」


 一人ならワンルームで充分なんだけど、、、。


「すいません。間取りは今位、家賃も同じ位が良いです。けど、就職するし多少値上がっても構いません。場所はこの近くか、この路線内で探して下さい」


 征一郎、怒ってる?何で?


「少々お待ち下さい」

そう言って、担当者は裏に物件を探しに行った。

 女性がコーヒーを二つ持って来た。

「ご希望に合う物件が見つかると良いですね」

とニコリと笑う。


 二人きりになると、征一郎が小さな声で

「ワンルームって、どう言う事?」

って聞いて来た。

「、、、だって、征一郎

「お待たせ致しました」

と数枚紙を持って、担当者が戻って来た。


 結局、僕達はその物件の説明を受け、用紙を貰い、検討すると言ってアパートに帰った。

 征一郎は怒ったままだった。


 イヤだな、、、。イヤな気分だ。


 部屋に入るなり、リビングに向かう。荷物を置いて、征一郎は座った。

「ワンルームってどう言う事?」

「、、、新しい場所探すって言うから、一人で住むなら僕はワンルームで充分だなって、、、」

「何で?一人で住みたいの?同居は解消?、、、」

「僕と一緒に住みたく無いから、契約更新しないんでしょ?」

「違うよ。ここは大学生専用のアパートだから、僕達はもう住めないから」

「あ、、、」

「悠は俺と一緒に住みたく無いの?」

「、、、」



**********



「どうして、別々に住むと思ったの?」

俺は半分怒っていた。

 

 新しい職場の近くで、ワンルームと言う条件を出した悠。

 職場の近くは分かるよ。俺だってそうしたい。出来れば、真ん中の、どちらの職場にも近い所が良い。


 でもさ、ワンルームは無いよね。それって、俺との同居を解消したいって事じゃん!


 何で?何で解消したいの?

 俺の事、嫌いになった?

 俺のエッチが下手くそだった?

 それは認めるよ。だって、悠が可愛いから我慢出来ないんだ!

 本当は、悠をメロメロにしたい。凄く気持ち良くして、俺から離れない様にしたい!でも、その前に俺の方が悠にメロメロにされてるんだ。


 悠の匂いが好きだ。声も、肌に触れた感触も、表情も、何もかも、俺は悠が好きなんだ。

 好きで好きで堪らない。いつも触れていたい。悠の中に入りたい。毎日だって、君に触れたい、、、。


 でも、悠はそんなに体力が無いみたいだし、、、。

 昼間は大学がある、休みは朝から晩までバイトに費やしている、、、俺は、、、。


 俺は、、、。


 俺は、出来るだけ我慢するしか無いじゃないか、、、。



 彼が好きで抱きたいのに、、、。ずっと我慢してたのに、、、あ〜あ、、、。



 他に好きな人が出来たのかな、、、。

 俺を捨てて、その人の所に行きたいんだ、、、。


 そっか、そっか、、、俺、もう、捨てられるんだ、、、。



「だって、征一郎、、、エッチしかしないから、、、」

「はあ?!、、、」



 え?何?その理由?

 待って!どう言う事?

 

 俺は、フリーズした、、、



**********



 こんな事、言いたく無かった。恥ずかしいし、我儘言ってるって分かってるんだ。

 でも、、、でもさ、、、。

 あんなに怒って言われたら、、、僕の気持ちだって知って欲しい、、、。


「僕達、恋人同士なのに、デートとかしないし、、、。征一郎は毎晩帰りが遅いから、一緒にいる時間が無いし。そのくせ、エッチしたい時は勝手に始めちゃうし、、、。



 僕って、、、セフレなの?」



 ボロボロボロっと涙が溢れた。



 不安だった、、、。そう、僕はずっと不安だったんだ。


 彼は僕に身体の関係しか求めていない。

 そして、赤い口紅、、、。

 「愛してる」の言葉を貰った事も無い、告白してくれた時だって、付き合って欲しいと言われただけで、はっきり好きとは言われなかった。


 例え、身体を重ねた時でさえ、、、。


 だから、僕は君に愛されているか分からない。


 だから、君が僕を愛していないなら、、、。



 君を捨ててしまいたい、、、。



**********



「え?待って?エッチしかしないから、俺から離れたいの?」

「だって、、、デートとかしたいし、家で征一郎と映画見たり、ご飯一緒に食べたりしたい。リビングで二人でソファに座って、1日有った事を話したり、相談に乗って貰ったりしたいよ、、、」


 悠はびっくりする位泣いた。


 涙をポロポロ流し、肩を振るわせ、、、それなのに、俺に頼る事が無かった、、、。


「悠、、、」


 何でもっと早く言ってくれなかったの?


 喉まで出掛かった。でも、それが悠だ、、、。


 素直じゃ無くて、意地っ張り。淋しくても甘えられない。不器用な悠、、、そんな彼を好きになった。


「ごめん、、、俺、、、。悠にずっと内緒にしてた事があるんだ、、、」



**********



「、、、え?」


 内緒?、、、やっぱり新しい彼女がいるの?


 イヤだ、、、イヤだ、イヤだ、イヤだ、、、。

 涙が抑えられ無い。こんなに涙があふれる事があるなんて!


 聞きたく無いっ!でも、聞かないといけないっ!


 怖い、、、。


「卒業旅行、、、行こう」


「、、、???」


「その為にバイト増やしたんだ」

「え、、、?」

「悠と、一生忘れない思い出を作りたいから」

「何、でぇ、、、?」

「サプライズしたかったんだ、、、でも、悠がなんか不安そうだし、、、」

「う、、、うー、、、」

「悠?」

僕は征一郎の側に寄る。

 彼のシャツを掴んだ。

「く、、、口紅、、、」

「口紅?」

「シャツに口紅着いてたから、新しい彼女が出来たのかもって、、、」

「アレは違う違う!バイト先のお客さん。母さん位の年齢だよ?!旅行行きたいから、スナックのボーイをやってたんだ」

「スナック???」


征一郎は嬉しそうに笑う。

「ヤキモチ妬いた?」


 折角止まった涙が、またあふれた。

「だって、、、。征一郎は女の子と付き合った事があるから、、、やっぱり僕より女の子の方が良いんじゃないかと思って、、、」

「そんな事無いよ、、、悠が良い」

彼は両手を広げて

「おいで」

と言った。

 僕は彼に身体を預ける。

 


**********



 二人で床に直置きのソファに寝転ぶ。

 足を投げ出して、俺の胸の上で甘える様にゆっくりと呼吸する悠。

 何だか可愛い生き物だ、、、。

 俺はそっと彼の髪の匂いを嗅ぐ。


「卒業旅行、、、本当に行くの?」

「海外に行きたいなって思ってるんだけど」

「海外?!」

「ダメかな?」

「パスポートとか取るの?」

「そっか、パスポート取らないといけないか、、、」

「引越しにお金も掛かるよ?」

「うーん、、、」


 まぁ、引越し代は親からの援助もあるけど、、、。



*****



 結局、俺達は引越しをしないで済んだ。

 不動産屋にこのまま住めないか聞いてみたら、大家さんから許可が出た。但し、今までよりちょっと家賃が上がる。

 大家さんが言うには、学生が一人で住むには広く、余り入居者が決まらないそうだ。

 一昔前なら、兄弟で住むとか友達と一緒に、、、なんて話もあったらしいけど、築年数が経っているのと、防犯上アパートよりもワンルームのマンションの方が人気があるとか。

 だから、このまま住み続けてくれた方が有難いと喜んでくれた。

 正直、俺達も助かった。引越ししなければならないとなると、卒業旅行は夏まで延期だったから。



*****



 旅行は国内にした。海外も良かったけど、国内のちょっと良い部屋を平日に予約した。

「悠?荷物多過ぎない?」

「え?そうかな?」

「バスタオル、いらないよ?」

しかも2枚も入ってる。フェイスタオルも2枚。歯ブラシとか、着替えも多めに入ってる。

「宿にタオルとか歯ブラシあるから、大丈夫」

「、、、」

悠が首を傾げた。

「どうしたの?」

「征一郎、前に旅行に行ったよね?誰と行ったの?」

「旅行?行ってないけど?」

「金融日の夜から日曜日の夜まで、結局帰って来なくて、月曜日大学に直接行った、、、旅行じゃ無かったの?」

「ん〜、、、?、、、ああ!実家。姉さんが結婚するからって呼び出されて」

「そうなんだ」

悠が笑った。

「誰かと旅行したと思ってた?」

「、、、うん」

俺は、彼の鞄から要らない物を抜いていった。荷物は着替えのシャツ2枚と、下着が二日分。後、スマートフォンの充電器。鞄はリュックで充分だった。



**********



 僕達は電車で移動して、旅先の駅で迎えの車に乗った。

「卒業旅行ですか?」

と旅館の人に聞かれて、征一郎が返事をしている。


 住んでる場所と景色が違うだけで、ワクワクして来た。

 僕は車から景色を眺め、征一郎は旅館の人とずっと話しをしている。


「さっきは女の子のグループを乗せましたよ。東京の大学生って言ってましたね。同じく卒業旅行だそうです」

 僕はなんと無く征一郎を見た。


 彼は格好良いから、女の子達に声を掛けられてしまうかも、、、。

 征一郎が僕の視線に気付いた。そっと手を繋いでくれる。


 心配無いよ、、、。


 そう言われたみたいだった。



*****



「す、、、すごい、、、。宿代、幾らだったの、、、?」


 急にお金の心配してしまう、、、。

「やっぱり半分払うよ」

「良いんだよ。俺が此処ここに悠と泊まりたくて勝手に決めちゃったし」

それから僕の耳元で

「彼女の前では、格好つけたいからさ」

と囁いた。


 彼女じゃ無いしっ!


 僕はちょっと恥ずかしくて、でも、本当は嬉しかった。


 チェックインも彼がやってくれて、僕はずっと彼の後を着いて回った。

 部屋に入ると内風呂が露天になっている。

「え、、、すごい!部屋に露天風呂が付いてるよ!」

「外から見えない様になってるから、景色は楽しめないけど、二人でゆっくり入れるし、上に大浴場があるからそっちにも行こう」

そう言いながらお茶を淹れてくれる。


 僕は、征一郎の横に座った。やっと二人きりになれた。

 


 大浴場に行くからと、征一郎は浴衣に着替える。

 僕は、着替え始めた彼を何気無く眺めていた。


 浴衣、、、格好良いな、、、。


「悠も着なよ」

言われて準備する。征一郎の真似をして、前を合わせて帯をする。

「あれ?逆みたい」

と言いながら、彼は僕を鏡の前に立たせた。

「 ? どうして?」

「俺のを見ながらやったから、反対になったんだよ」

ああ、鏡の原理か、、、。

 征一郎は僕の帯を解いて、直そうとしてくれた。


 しゅるっ、、、と衣の擦れる音。

 ドキッとした。床に落ちる帯、、、。

 彼が僕の向きを変えて、正面を向かせた。

 浴衣の前を両手で直そうと手を添える。


 、、、部屋が妙に静かで緊張する。


 浴衣を合わせる部分の生地を、征一郎が上から下に撫でた。


 ?


 僕が彼を見上げると、ゆっくり顔が近付いて来る。


 、、、キス、、、


 チュッ


 と音を立てた。

「夜まで我慢しようと思ったのに、、、」

そう言って、子供を抱っこする様に抱き上げた。

 思った以上に高い位置まで抱き上げるから、僕は少し怖かった。

 彼はそのままベッドに行くと、僕をポイッと放り投げた。


 えええ〜、、、


浴衣がめくれて、何だか恥ずかしい格好になっている。


 ギシッ、、、と片膝をベッドに乗せて

「ヤバ、、、」

と彼が言う。

「征一郎、、、?」

足元から彼が迫って来る。

 僕を跨ぐ様に四つん這いで近寄られると、いけない気分になって来た。


 顔が赤くなる、、、。つい背けてしまうと、彼が

「悠、、、煽ってる?」

ちがっ!」


 強引にキスをされた。

 両手を固定され、身動きが取れない、、、。

 それなのに、僕の身体が反応して、、、。

「乱暴にしても良い?」

耳元で低く囁かれ、ゾクゾクッと感じてしまう。



*****



 折角、ホテルの中を散歩したかったのに、征一郎の所為で行けなくなってしまった。

 僕達はベッドの上で、脱力しながら夕食の時間を待つ。

 彼がスマートフォンのタイマーをセットしてくれる。目を閉じると眠ってしまいそうで、眠らない様に頑張っていたら

「タイマー掛けたから、寝ても平気だよ」

そう言いながら、僕を緩く抱く様に腕を回す。彼の腕の重みに安心した。


「悠、、、」

寝ていたのは30分位。目の前に征一郎がいる、、、。それだけなのに、嬉しい、、、。

「おはよ、、、」

「ご飯、行こ」

「うん」

彼に手を引かれてベッドを降りる。前が肌けた浴衣に照れる。彼に帯を巻いて貰い、彼は自分で巻いた。



*****



 食堂に大学生らしい、女の子達がいた。賑やかな三人だった。

 

 女の子の赤い口紅を見ると、どうしても征一郎のシャツに着いた口紅を思い出す。あの時の悲しい気持ちが蘇り、胸がギュウゥ、、、ッと締め付けられた。


 僕はなんと無く、彼女達を避けた。



「悠、何か飲む?アルコールコーナーあるよ」

「え、珍しいね」

僕達は、ちょっと離れた場所まで見に行く。

 生ビールはビールサーバーから自分で注ぐ、ハイボールとかカクテルは担当の人に頼んで作って貰うんだ、、、。征一郎は濃いめのハイボール。僕はカシスオレンジにした。

 自分達の席に戻る時、前からあの女の子達が歩いて来た。嫌だな、と思いながら征一郎の後ろを歩く。


「うわっ!」

「ご!ごめんなさい!」

征一郎の浴衣が水で濡れた。右手で持っていたハイボールは無事。

 女の子は慌てている。

「大丈夫、水でしょ?乾けば何とも無いから」

そう言いながら、彼は笑いながら歩き出す。僕もちょっと遅れて着いて行く。

 女の子達は、クスクス笑っていた。

 僕は見てしまった。さっき、後ろを歩いていた女の子がタイミング良く、水を溢した女の子を押していた。弾みで彼女のコップが大きく揺れて、征一郎に水が掛かった。多分わざとやったんだ。



 嫌だなと思った、、、。



 テーブルに戻って、席に着くと

「水で良かった」

と征一郎は笑った。お人好しだな、、、。

「大丈夫?」

「すぐ乾くでしょ」

と言いながら、ハイボールを飲む。



*****



 少し酔っ払って、良い気分だった。館内のお土産屋を見に行き、遊戯室を眺める。

「あの!」

さっきの女の子達に声を掛けられた。

 嫌な予感が当たった、、、。

「さっきは御免なさい。浴衣、大丈夫ですか?」

征一郎を見つめながら言う。

「大丈夫、大丈夫」

僕は、彼の後ろに隠れた。

「お詫びにカラオケ行きませんか?」


 ああ、キッカケを作ったのか、、、


「ね?弟さんも一緒に」


 弟じゃ無いし、、、。

 嫌だな、折角二人きりの旅行なのに、、、。僕は、征一郎の後ろにピッタリくっついて浴衣を握った。

「ごめん、俺達二人で楽しみたいから遠慮するよ」

はっきり断ってくれた。

「弟さんはカラオケ、行きたく無い?」


 意外と粘るな、、、と思った。


「弟じゃ無い。卒業旅行だから」

「え!私達もそうなんです!同じ歳ですね」

はしゃいだ声が耳に障る。

「何処から来たんですか?」

「車ですか?」

「あっちのお土産屋さん、もう見ましたか?」

女の子達に気圧けおされてしまう。

「ごめん、移動で疲れてるから」

彼女達は目に見えて、がっかりしている。

「悠、行こう」

肩越しに声を掛けてくれる。

「あ、クレーンゲームあるから見に行こうよ」

さり気無く手を繋いで、彼女達から離れた。

大分離れてから

「はあ、、、面倒臭かった、、、」

と征一郎は思いっきり溜息をく。

「悠とゆっくりしたいのに、邪魔されたく無い、、、」

ブツブツ呟く声が聞こえて来て、僕は嬉しかった。


 一番大人しそうな子が、小走りで近寄って来た。

「あの!連絡先交換して下さい!」

と僕の目の前にスマートフォンを出した。

「え、、、」

チラリと征一郎の顔を見た。

「ダメ」

彼は彼女と僕の間に入り

「悠は、俺のだから無理」

さっきとは全然違う、低い声だった。

「あ、、、。御免なさい!」

彼の本気が伝わったみたいで、彼女はペコリと頭を下げて、慌てて帰って行った。

「、、、部屋に帰ろう」

「うん」

 僕達は疲れて会話も無くなっていた。


 部屋に戻る途中に、アルコールが売っている自動販売機があった。

「酒、買って行こうか、、、」

征一郎はそう言うと、酎ハイのロング缶を三本買った。僕も持つのを手伝う。


 部屋に入るなり、彼は酎ハイのプルタブを開けた。普段グラスを使うのに、缶に口を付けて一気に飲んだ。珍しいな、、、。


 グイッ!と僕の腰を抱いて、引き寄せキスをして来た。

「征一郎?ど、、、

会話を遮る様に口付けをする。

 歩きながらキスをされ、転びそうになりながら、彼に支えられた。浴衣の帯を解かれ、内風呂の露天風呂の扉を開ける。彼自身も浴衣を脱ぎ裸になると、僕の浴衣も脱がせ、手を引いて露天風呂に入る。

 お湯の中で僕を抱き締めた。

 

「征一郎、、、?」

「、、、ごめん、、、我慢出来なかった」

僕の肩に頭を載せる彼は、何だか弱々しく見えた。僕はそっと抱き締め、彼の背中を摩った。

「悠が、あの子と繋がるのが嫌だった、、、。連絡先、交換しないだろうって思いながら、自分を止められなかった、、、ごめん、、、」


 僕達が少し動くと、お湯が揺れてチャプ、、、と音がする。

 僕も彼に頭を寄せる。

「、、、僕、ずっと自信が無かったから、征一郎がヤキモチ妬いてくれたなら、凄く嬉しい、、、」

「え、、、こんなに好きなのに、不安だった?」


 ふふ、、、


「だって、征一郎から好きって言われた事無い、、、」

「嘘、、、」


 気付いて無かったんだ、、、。


「征一郎、、、僕は、征一郎が好きだよ」

「俺も好き、、、好きだ。好きだから、さっきの女が気に入らない、、、」

「うん、、、」

「悠、自覚無いから心配、、、」

「自覚?」

「女の子にモテる」 

「そんな事無いよ?征一郎の方がモテるよ、、、」


 だから、僕はいつでも不安なんだ。


「俺が告白した頃」

と言いながら、場所を変える。後ろから包み込む様に抱いてくれた。背中一面に彼を感じる。

「悠と仲良かった女の子、、、悠の事、好きだったんだ、、、」

「 ? 」

「悠を取られたく無いから、告白した」

後ろから回した頬を載せる、

「今日も不安だった、、、」

「そう、、、なの?」

 ちょっと嬉しかった、、、。


ちゅっ、、、と首筋にキスをした。くすぐったい。


「印、、、付けておけば良かった」

「え?、、、、、、」


 痛いっ、、、


 征一郎の回した腕にしがみ付き、息を止めた。


「悠、、、」


 彼の唇が離れて、力が抜けた。


「何、、、?」


「ずっと一緒にいて、、、」

「うん、、、ずっと一緒にいるよ」


 僕、こんなに征一郎に思われてたんだ、、、。

 不安にさせてごめんね。これからは僕からも、ちゃんと気持ちを伝えないと、、、。



 チャプッ、、、



 向きを変える。僕は彼の頬に触れ、気持ちを込めてキスをする。



 愛してる、、、どうか、不安にならないで、、、。


 彼を抱き締める。


「僕、征一郎の事、愛してるよ、、、」


「俺も、悠の事、愛してる」


 

 出来るだけ長く、彼と一緒にいたいと思った、、、




サプライズも難しいですね。

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