君を捨てると決めたのに
***BL*** 大学生の二人。一緒に住んでいるのに、、、。ハッピーエンド
長い交際期間で、君は僕をただの同居人にした。
*****
付き合ったキッカケは、彼からの告白だった。
大学生の僕達。
確かに仲が良かった。
気も合うし、一緒にいる時間は楽しかった。
いつしか、お互いの友達や、同じ学部の異性にヤキモチを妬く様になり、彼から付き合おうと言われた。
僕は君を好きだったけど、君はどうなんだろう、、、。
中学時代や高校時代の彼女の話しを聞いた事がある。つまり、君は僕とは違い、異性と付き合う事が出来るんだ。
それなのに、僕に告白したのは何故?本当に好きだったのかな?
それとも興味本位?
*****
大学から帰ると、彼は帰っていない。
最近の彼は、バイトか飲みに行ってばかりで、家にいても一緒に過ごす事が無くなった。
狭いリビングのテレビは、もう誰も見ない。
シャワーを浴びながら、洗濯機に水を溜める。家中の洗い物を集めて、洗濯をする。
「掃除機掛けないと、、、」
朝は彼がまだ寝ているから掛けられない。僕は掃除をして、自分のご飯を作る。
此処に住み出した頃、彼はよくご飯を作ってくれた。
でも、最近では食事の時間すら別々だ。
いつからこんな感じになったんだろう、、、。よく分からない。2ヶ月前辺りかな?
それでも、僕は彼が好きで、彼のシャツの匂いを嗅ぐとドキドキする。
*****
ご飯を食べて片付けをした。卒業論文をやらないと、、、。
僕は自分の部屋に入る。
夜中、玄関が開く音がした。
彼が帰って来たんだ。
僕の部屋は玄関横。真ん中に台所が有って、奥に彼の部屋とリビングがある。
彼は僕の部屋にも寄らず、自分の部屋に行く。
すぐにドアが開く音がして、彼がシャワーを浴びに行くのがわかった。
バイトが終わるのが11時。もう、1時を回っているから、今日もバイトの後に飲みに行ったんだ、、、。
僕は論文に一区切り付けて、彼がシャワーを浴びている間に歯を磨いた。
自室の電気を消して布団に入る。
明日は二限からだから、少しゆっくり出来るな、、、と、思いながらウトウトする。
*****
「悠、、、?」
「ん、、、何、、、?」
「ね、、、したい、、しよう、、、?」
僕の返事も待たず、彼は布団に入って来て僕に触れる。
眠いのに、、、
そう思いながら、彼が触れると反応してしまう。
彼のシャンプーとボディソープの香り、、、。
久しぶりだな、、、。と思う気持ちと、今から?と言う気持ち、、、。結局、半分寝惚けた僕は拒否する事も出来ずに受け入れてしまう。
事が終わると、彼は僕を少し抱き締めて、もう一度シャワーを浴びに行った。
遠くに聞こえるシャワーの音、、、。気怠い身体。
「悠、、、シャワー、浴びられる?」
「う、、、ん。もう少し後で、、、」
「俺、明日早いから寝るよ。お休み」
彼の言葉に、何だか心にぽっかり穴が開いたみたいだった。
*****
朝起きたら、彼はもういない。
家の中がシン、、、として、薄暗くて、今の僕みたいだった。
大学に行く為に歯磨きをする。洗面所に置いてある洗濯籠、、、彼の昨日のシャツが入れてある。
赤い、口紅、、、。
涙が出そうだった。彼の新しい時間が始まったのかも知れない。、、、昨日のアレは、罪悪感から僕を抱いたのかも、、、。
*****
それからまた暫く彼と会う事は無かった。
僕は自分の部屋で卒論を書いて過ごし、土曜日と日曜日は朝から晩までバイトに行った。
ただ、同じ場所に住んでいるだけ、、、。
そんな感じ。
家賃は浮くし、病気の時、一人きりじゃ無いって心強い。
でも、恋人らしい事をしていない、、、。
違う。
身体の関係はあるんだ。だけど、愛は感じない。
本当はデートに行きたい。
外に食事に行くだけでも良い。
一緒にご飯を作り、食べ、片付け、二人でソファに座り映画を観たい、、、。
二人で何かをする事が、無くなった気がする。
*****
やっと征一郎を映画に誘う勇気が出た。思い切ってドアをノックして返事を待つ。
中から「どうぞ」と聞こえた。
「あのさ、征一郎、、、今度の土曜日なんだけど」
ごめん、寝てたみたいだ。電気の消えた部屋、ベッドの上で眠そうにしている。
「ん?週末?」
「うん、、、」
「あー、、、。金曜日の夜から予定があるんだ」
頭が回らないみたい、、、
「そ、、、っか、、、」
「どうした?」
「いや、何でも無い、、、。いつまで?」
「日曜日、夜になるかも」
洗濯物に着いた口紅が蘇る。
「分かった」
「起こしちゃって、ごめんね」
僕は、彼の部屋の扉を閉めた。
初めてのデートの時に映画を見た。その続きが土曜日から始まる。
「もし、続きが上映されたら観に行こう」と約束したけど、、、もう随分前の話しだから忘れちゃったよね。
一人で観に行こうかな、、、。
*****
金曜日の夜からと言っていたから、一度大学から帰って来るのかと思っていた。
でも違った。
彼は朝、大きな荷物を持って家を出た。
大学から帰ると、いつもと同じ暗い部屋。
今日から日曜日まで一人きり。
映画の公開日に合わせてバイトを休んだのに、誘えなかったな、、、。
馬鹿だ、、、。
淋しいのに、電話も出来ない僕。
彼が旅行を楽しんでいると思うと、邪魔したく無いんだ。
今頃、口紅の彼女と一緒かな。
そう言えば、今日着て行った服、あの時のシャツだった。
*****
一人で映画に行く事も出来ず、買い出しをして、家から出なかった。
身体を動かさないから、尚更僕の気持ちは落ち込み、軽く食事をしてはずっと布団の中だった。
食事と言っても、菓子パン一つ。
日曜日の夕方、今日は帰って来ると思い、カレーを作る。
温かいご飯で食べて貰いたくて、二合炊いた。
19時を過ぎても帰って来ない。
僕は布団の中で待っていた。
いつの間にか眠ってしまい、時間を確認する為にスマートフォンを見る。
「予定が伸びて、明日はそのまま大学に行く。帰るのは明日の夜の予定」
なぁーんだ、、、帰って来ないんだ、、、。
夕方作ったカレーはすっかり冷めていた。
僕は小分けにして、冷凍庫にしまった。お米も小分けにする。
一人分だけ取っておいたカレーを、電子レンジで温めて食べる。
もう、22時を過ぎていた。
こんな時間に何やってるんだろう、、、。そう思いながら、シャワーを浴びる。
炊飯器から出したばかりの白米が冷め切らず、冷凍庫に入れられない。朝、忘れない様にしないと、、、。
一度変な時間に寝てしまったから、全然眠れない。今日は一限から1日授業がある。仕方が無い、卒論の続きをしよう。
明け方にウトウトし始めて、タイマーを掛けた。数時間寝て、カレーを食べて家を出る。
昼休憩、学食にしようと食堂に行くと、征一郎と友達が固まって食事をしていた。
僕は一番離れた席を選ぶ。
前は、彼の近くの席を選んでいた。
一緒に仲間に入れてくれる事もあったけど、彼の友達は賑やかなタイプで僕とは違う。
段々居辛くなって行き、自然と近寄らない様になった。
彼のグループには女の子も居て、彼女達の甲高い声が僕は苦手。キャハハッ!と笑うのもイヤなんだ。
でも、彼の友達なのに、イヤって言うのも変かと思う。
今日は何だか彼に見つかりたく無かった。僕が此処に来た事に気付かないで欲しい。
彼と僕の間に柱が入る様な席を探す。
**********
俺から告白した恋人は、男だった。
自分が男を好きになるとは、思わなかった。
悠は一緒にいて、一番気楽な存在。
悠が酷く酔った日。
その前から、ちょっと元気が無いな、、、と思っていたけど
「僕の恋愛対象は同性だから、あまり近付かない方が良いよ」
と言って泣いた。
俺は逆に意識してしまい、、、。彼の表情や仕草に惹かれた。
もっと可愛い女の子は沢山いる。化粧が上手で、髪を緩く巻いて、彼女達はいつも身嗜みに気を付けている。
そんな姿が好ましいな、、、とは思うけど、俺は悠を選んだ。
素直じゃ無くて、意地っ張り。淋しくても甘えられない。悠は不器用だった。
付き合う前は、他のヤツ等とはちょっとタイプが違う、気の合う友達だった。
でも、一緒にいる時間は悠が一番長い。
どちらとも無く隣に座り、約束しなくても昼休憩は一緒に過ごす。
つい、悠を探してしまうし、悠も俺を探してくれた。
彼の事を気に入っている女の子は、何人かいた。
その内の一人は、如何にも清楚な女の子と言う感じ。俺が気付くといつも悠の側にいた。
悠の恋愛対象が同性とは言え、あの子に告白されたら付き合っちゃうんじゃ無いかと思った。
二人でいる時の雰囲気が、凄く良い。
悠を取られたく無い。
そう思いながら、いつも見ていた。
飲み会で、その女の子は悠の隣に座った。悠の為に酒を注文し、彼の為にサラダを取る。
可愛く塗られた指先。艶やかなリップ。ほんのり香る香水。恥じらう様な赤い頬。
悠も満更では無いみたいだ。話し掛けられて、愛想良く対応する。
その日、確かに酔っていたけど、記憶を無くす程飲んでもいないし、ちゃんと意思も記憶もある。
解散間際に彼女が悠と腕を組み、駅まで送って欲しいと強請っていた。だから俺はつい、悠を取り戻し、悠を送りながら告白した。
その時の悠は、俺の告白を信じられず、静かに泣いた。
それから二人で何度もデートをして、一緒に住む事になった。
**********
もうすぐアパートの契約更新だな、、、。不動産屋に連絡しないと、、、面倒臭い、、、。
征一郎とも話しをしないと、、、。このまま二人で住むのか、別々にするのか、、、。きっとこのままだろうな。新しい部屋を探すのは骨が折れる。
出来るだけ早く話しをしないと、、、。そう思って、征一郎の帰りを待つけど、彼はやっばり帰って来ない。また飲みに行ってるのかな?
0時まで待ったけど、帰って来ないから歯磨きをして布団に入る。
暫くしたら、玄関の鍵が開く音がした。
帰って来たんだ、、、。アパートの契約更新の話しは、また今度にしよう。布団から出るのが億劫だ。
******
僕は中々会えない彼に読んで貰いたくて、不動産屋から届いた「更新のお知らせ」と書かれた葉書を、台所に置いた。流石に此処なら気付くと思って、、、。
**********
昨日もバイトが長引いた。
スナックでボーイの仕事。
深夜になって来ると、酒を勧めて来る客もいる。俺はにっこり笑って受け取る。
中には女性のお客さんもいて、俺はそんなお客さんの相手になる事もある。
そう、、、それで、この間酔っ払ったお客さんからシャツに口紅を付けられた。ママに「よく乾かしてから、いらない歯ブラシと台所洗剤を使って擦ると落ちるのよ」と教えて貰ったんだ。
スナックのママは物知りで、面白い話しを沢山聞かせてくれる。
家に帰ると台所に往復葉書が一枚あった。アパートの契約更新のお知らせ。
そっか、更新があるんだ、、、。
俺は悠と付き合って此処に来た。
大学生専用のアパートで、大家さんにシェアしたいと相談したんだ。
「近所に迷惑を掛けない事、綺麗に住む事」が条件で、学生だからと値上げはしなかった。
あれから2年も経つんだ。早いな、、、。
でも、俺達ももうすぐ社会人なんだこのアパートから出ないといけないんだろうか、、、。
俺は悠の部屋を見る。
もう寝てるだろう。起こさない様に静かにシャワーを浴びないと。
**********
朝起きたら葉書はそのままだった。征一郎は気付いたかな?
今度、ちゃんと話さないと、、、。
僕が朝ご飯を作っていたら、征一郎が起きて来た。
「お早よう」
「お早よう」
「今日一限から?」
「うん、、、征一郎も朝ご飯食べる?」
彼が台所に立つ僕を、後ろから抱き締めた。
「危ないよ?」
フライパンで卵とソーセージを焼こうと火を付けたばかりだった。
「うん」
と言いながら彼は、右手で火を止めた。僕を抱き締めながら、僕の匂いを嗅いでいる。
僕の事、まだ好きなのかな、、、?
ゆっくり、僕のシャツを捲り、素肌を撫でる。
「征一郎?」
「、、、」
彼の手が、、、
「あの、、、征一郎?」
「ちょっとだけ、、、」
ちょっとだけって、僕、授業があるのに、、、
「悠」
僕の頬に触れて、彼の方を向かせると肩越しにキスをした。身体を触られながら、キスをされたら、、、。
キスをされたら、、、。
*****
だからっ!今日は一限からって言ったのにっ!
僕は朝食を食べる時間を失い、イライラしていた。
急いで改札を通り、目の前の電車に乗る。この電車に乗れば一限に間に合うんだ。後ろでドアが閉まり、ホッとした。
ドアに寄り掛かり外の景色を見る。次の駅からは、ずっと反対側が開くからゆっくり出来る。
あんな事して無いで、アパートの更新の事話したかったのに、、、。
帰ったら征一郎はまたバイトで遅くなるだろうしさ、、、。
毎日眺める景色。大学まで駅三つ。電車に揺られながら、少しずつ冷静になって行く。
あの映画は終わってしまった。結局誘う事は出来なかった。
*****
「悠、アパートの更新の事だけど、、、」
征一郎が僕のドアをノックしながら言った。
僕はドアを開ける。
「あっちで話そう。コーヒー入れるから行ってて」
「うん、有難う」
征一郎はコーヒーカップを二つ持ち、狭いリビングに入って来た。
床に置かれたソファに座った。
お互い自室が有ったし、僕は卒論が忙しく、彼はバイトで帰りが遅いから、今は全然使って無い。
「アパートの更新どうする?」
「うん、、、」
久しぶりの会話に緊張する。
「やっぱり新しい所探さないといけないかな?」
、、、そうだよね、、、
いざ、はっきりそう言われると辛かった。
僕達の関係も終わるんだ、、、。
「悠?どうした?」
「、、、」
言葉が出ない。
「そんなにこのアパート気に入ってる?まぁ、大家さん優しいし、間取りも丁度良いけどさ、、、。やっぱり春には出ないと」
「うん、、、」
「不動産屋、いつ行こうか」
「いつでも」
「じゃ、午後行く?良い物件は早く無くなっちゃうし」
「、、、うん、分かった」
征一郎は、彼女と一緒に住むのかな、、、。
僕は、、、。
僕はワンルームで良いや。狭くても平気。就職する会社に行きやすい場所で、近所にスーパーが有れば良いかな、、、。
*****
征一郎が「契約更新のお知らせ」と書かれた葉書を持ち、二人でアパートを出た。
不動産屋さんに着くと、彼は躊躇無く入って行く。対応してくれた人に葉書を見せると、椅子を勧められる。
「継続されますか?それとも新しい物件をお探しですか?」
「解約して新しい所を探します。間取りと家賃は今位で、、、」
店員さんは葉書を見ながら
「あぁ、そうですね。もう卒業ですか。場所はこの近くで宜しいですか?」
「悠?悠はどうする?」
「え?、、、」
「住む場所。何処か希望はあるの?」
「え、、、えっと、、、新しい職場の近くでワンルームなら、、、」
「、、、ワンルーム?」
「、、、?」
一人ならワンルームで充分なんだけど、、、。
「すいません。間取りは今位、家賃も同じ位が良いです。けど、就職するし多少値上がっても構いません。場所はこの近くか、この路線内で探して下さい」
征一郎、怒ってる?何で?
「少々お待ち下さい」
そう言って、担当者は裏に物件を探しに行った。
女性がコーヒーを二つ持って来た。
「ご希望に合う物件が見つかると良いですね」
とニコリと笑う。
二人きりになると、征一郎が小さな声で
「ワンルームって、どう言う事?」
って聞いて来た。
「、、、だって、征一郎
「お待たせ致しました」
と数枚紙を持って、担当者が戻って来た。
結局、僕達はその物件の説明を受け、用紙を貰い、検討すると言ってアパートに帰った。
征一郎は怒ったままだった。
イヤだな、、、。イヤな気分だ。
部屋に入るなり、リビングに向かう。荷物を置いて、征一郎は座った。
「ワンルームってどう言う事?」
「、、、新しい場所探すって言うから、一人で住むなら僕はワンルームで充分だなって、、、」
「何で?一人で住みたいの?同居は解消?、、、」
「僕と一緒に住みたく無いから、契約更新しないんでしょ?」
「違うよ。ここは大学生専用のアパートだから、僕達はもう住めないから」
「あ、、、」
「悠は俺と一緒に住みたく無いの?」
「、、、」
**********
「どうして、別々に住むと思ったの?」
俺は半分怒っていた。
新しい職場の近くで、ワンルームと言う条件を出した悠。
職場の近くは分かるよ。俺だってそうしたい。出来れば、真ん中の、どちらの職場にも近い所が良い。
でもさ、ワンルームは無いよね。それって、俺との同居を解消したいって事じゃん!
何で?何で解消したいの?
俺の事、嫌いになった?
俺のエッチが下手くそだった?
それは認めるよ。だって、悠が可愛いから我慢出来ないんだ!
本当は、悠をメロメロにしたい。凄く気持ち良くして、俺から離れない様にしたい!でも、その前に俺の方が悠にメロメロにされてるんだ。
悠の匂いが好きだ。声も、肌に触れた感触も、表情も、何もかも、俺は悠が好きなんだ。
好きで好きで堪らない。いつも触れていたい。悠の中に入りたい。毎日だって、君に触れたい、、、。
でも、悠はそんなに体力が無いみたいだし、、、。
昼間は大学がある、休みは朝から晩までバイトに費やしている、、、俺は、、、。
俺は、、、。
俺は、出来るだけ我慢するしか無いじゃないか、、、。
彼が好きで抱きたいのに、、、。ずっと我慢してたのに、、、あ〜あ、、、。
他に好きな人が出来たのかな、、、。
俺を捨てて、その人の所に行きたいんだ、、、。
そっか、そっか、、、俺、もう、捨てられるんだ、、、。
「だって、征一郎、、、エッチしかしないから、、、」
「はあ?!、、、」
え?何?その理由?
待って!どう言う事?
俺は、フリーズした、、、
**********
こんな事、言いたく無かった。恥ずかしいし、我儘言ってるって分かってるんだ。
でも、、、でもさ、、、。
あんなに怒って言われたら、、、僕の気持ちだって知って欲しい、、、。
「僕達、恋人同士なのに、デートとかしないし、、、。征一郎は毎晩帰りが遅いから、一緒にいる時間が無いし。そのくせ、エッチしたい時は勝手に始めちゃうし、、、。
僕って、、、セフレなの?」
ボロボロボロっと涙が溢れた。
不安だった、、、。そう、僕はずっと不安だったんだ。
彼は僕に身体の関係しか求めていない。
そして、赤い口紅、、、。
「愛してる」の言葉を貰った事も無い、告白してくれた時だって、付き合って欲しいと言われただけで、はっきり好きとは言われなかった。
例え、身体を重ねた時でさえ、、、。
だから、僕は君に愛されているか分からない。
だから、君が僕を愛していないなら、、、。
君を捨ててしまいたい、、、。
**********
「え?待って?エッチしかしないから、俺から離れたいの?」
「だって、、、デートとかしたいし、家で征一郎と映画見たり、ご飯一緒に食べたりしたい。リビングで二人でソファに座って、1日有った事を話したり、相談に乗って貰ったりしたいよ、、、」
悠はびっくりする位泣いた。
涙をポロポロ流し、肩を振るわせ、、、それなのに、俺に頼る事が無かった、、、。
「悠、、、」
何でもっと早く言ってくれなかったの?
喉まで出掛かった。でも、それが悠だ、、、。
素直じゃ無くて、意地っ張り。淋しくても甘えられない。不器用な悠、、、そんな彼を好きになった。
「ごめん、、、俺、、、。悠にずっと内緒にしてた事があるんだ、、、」
**********
「、、、え?」
内緒?、、、やっぱり新しい彼女がいるの?
イヤだ、、、イヤだ、イヤだ、イヤだ、、、。
涙が抑えられ無い。こんなに涙が溢れる事があるなんて!
聞きたく無いっ!でも、聞かないといけないっ!
怖い、、、。
「卒業旅行、、、行こう」
「、、、???」
「その為にバイト増やしたんだ」
「え、、、?」
「悠と、一生忘れない思い出を作りたいから」
「何、でぇ、、、?」
「サプライズしたかったんだ、、、でも、悠が何か不安そうだし、、、」
「う、、、うー、、、」
「悠?」
僕は征一郎の側に寄る。
彼のシャツを掴んだ。
「く、、、口紅、、、」
「口紅?」
「シャツに口紅着いてたから、新しい彼女が出来たのかもって、、、」
「アレは違う違う!バイト先のお客さん。母さん位の年齢だよ?!旅行行きたいから、スナックのボーイをやってたんだ」
「スナック???」
征一郎は嬉しそうに笑う。
「ヤキモチ妬いた?」
折角止まった涙が、また溢れた。
「だって、、、。征一郎は女の子と付き合った事があるから、、、やっぱり僕より女の子の方が良いんじゃないかと思って、、、」
「そんな事無いよ、、、悠が良い」
彼は両手を広げて
「おいで」
と言った。
僕は彼に身体を預ける。
**********
二人で床に直置きのソファに寝転ぶ。
足を投げ出して、俺の胸の上で甘える様にゆっくりと呼吸する悠。
何だか可愛い生き物だ、、、。
俺はそっと彼の髪の匂いを嗅ぐ。
「卒業旅行、、、本当に行くの?」
「海外に行きたいなって思ってるんだけど」
「海外?!」
「ダメかな?」
「パスポートとか取るの?」
「そっか、パスポート取らないといけないか、、、」
「引越しにお金も掛かるよ?」
「うーん、、、」
まぁ、引越し代は親からの援助もあるけど、、、。
*****
結局、俺達は引越しをしないで済んだ。
不動産屋にこのまま住めないか聞いてみたら、大家さんから許可が出た。但し、今までよりちょっと家賃が上がる。
大家さんが言うには、学生が一人で住むには広く、余り入居者が決まらないそうだ。
一昔前なら、兄弟で住むとか友達と一緒に、、、何て話もあったらしいけど、築年数が経っているのと、防犯上アパートよりもワンルームのマンションの方が人気があるとか。
だから、このまま住み続けてくれた方が有難いと喜んでくれた。
正直、俺達も助かった。引越ししなければならないとなると、卒業旅行は夏まで延期だったから。
*****
旅行は国内にした。海外も良かったけど、国内のちょっと良い部屋を平日に予約した。
「悠?荷物多過ぎない?」
「え?そうかな?」
「バスタオル、いらないよ?」
しかも2枚も入ってる。フェイスタオルも2枚。歯ブラシとか、着替えも多めに入ってる。
「宿にタオルとか歯ブラシあるから、大丈夫」
「、、、」
悠が首を傾げた。
「どうしたの?」
「征一郎、前に旅行に行ったよね?誰と行ったの?」
「旅行?行ってないけど?」
「金融日の夜から日曜日の夜まで、結局帰って来なくて、月曜日大学に直接行った、、、旅行じゃ無かったの?」
「ん〜、、、?、、、ああ!実家。姉さんが結婚するからって呼び出されて」
「そうなんだ」
悠が笑った。
「誰かと旅行したと思ってた?」
「、、、うん」
俺は、彼の鞄から要らない物を抜いていった。荷物は着替えのシャツ2枚と、下着が二日分。後、スマートフォンの充電器。鞄はリュックで充分だった。
**********
僕達は電車で移動して、旅先の駅で迎えの車に乗った。
「卒業旅行ですか?」
と旅館の人に聞かれて、征一郎が返事をしている。
住んでる場所と景色が違うだけで、ワクワクして来た。
僕は車から景色を眺め、征一郎は旅館の人とずっと話しをしている。
「さっきは女の子のグループを乗せましたよ。東京の大学生って言ってましたね。同じく卒業旅行だそうです」
僕は何と無く征一郎を見た。
彼は格好良いから、女の子達に声を掛けられてしまうかも、、、。
征一郎が僕の視線に気付いた。そっと手を繋いでくれる。
心配無いよ、、、。
そう言われたみたいだった。
*****
「す、、、すごい、、、。宿代、幾らだったの、、、?」
急にお金の心配してしまう、、、。
「やっぱり半分払うよ」
「良いんだよ。俺が此処に悠と泊まりたくて勝手に決めちゃったし」
それから僕の耳元で
「彼女の前では、格好つけたいからさ」
と囁いた。
彼女じゃ無いしっ!
僕はちょっと恥ずかしくて、でも、本当は嬉しかった。
チェックインも彼がやってくれて、僕はずっと彼の後を着いて回った。
部屋に入ると内風呂が露天になっている。
「え、、、すごい!部屋に露天風呂が付いてるよ!」
「外から見えない様になってるから、景色は楽しめないけど、二人でゆっくり入れるし、上に大浴場があるからそっちにも行こう」
そう言いながらお茶を淹れてくれる。
僕は、征一郎の横に座った。やっと二人きりになれた。
大浴場に行くからと、征一郎は浴衣に着替える。
僕は、着替え始めた彼を何気無く眺めていた。
浴衣、、、格好良いな、、、。
「悠も着なよ」
言われて準備する。征一郎の真似をして、前を合わせて帯をする。
「あれ?逆みたい」
と言いながら、彼は僕を鏡の前に立たせた。
「 ? どうして?」
「俺のを見ながらやったから、反対になったんだよ」
ああ、鏡の原理か、、、。
征一郎は僕の帯を解いて、直そうとしてくれた。
しゅるっ、、、と衣の擦れる音。
ドキッとした。床に落ちる帯、、、。
彼が僕の向きを変えて、正面を向かせた。
浴衣の前を両手で直そうと手を添える。
、、、部屋が妙に静かで緊張する。
浴衣を合わせる部分の生地を、征一郎が上から下に撫でた。
?
僕が彼を見上げると、ゆっくり顔が近付いて来る。
、、、キス、、、
チュッ
と音を立てた。
「夜まで我慢しようと思ったのに、、、」
そう言って、子供を抱っこする様に抱き上げた。
思った以上に高い位置まで抱き上げるから、僕は少し怖かった。
彼はそのままベッドに行くと、僕をポイッと放り投げた。
えええ〜、、、
浴衣が捲れて、何だか恥ずかしい格好になっている。
ギシッ、、、と片膝をベッドに乗せて
「ヤバ、、、」
と彼が言う。
「征一郎、、、?」
足元から彼が迫って来る。
僕を跨ぐ様に四つん這いで近寄られると、いけない気分になって来た。
顔が赤くなる、、、。つい背けてしまうと、彼が
「悠、、、煽ってる?」
「違っ!」
強引にキスをされた。
両手を固定され、身動きが取れない、、、。
それなのに、僕の身体が反応して、、、。
「乱暴にしても良い?」
耳元で低く囁かれ、ゾクゾクッと感じてしまう。
*****
折角、ホテルの中を散歩したかったのに、征一郎の所為で行けなくなってしまった。
僕達はベッドの上で、脱力しながら夕食の時間を待つ。
彼がスマートフォンのタイマーをセットしてくれる。目を閉じると眠ってしまいそうで、眠らない様に頑張っていたら
「タイマー掛けたから、寝ても平気だよ」
そう言いながら、僕を緩く抱く様に腕を回す。彼の腕の重みに安心した。
「悠、、、」
寝ていたのは30分位。目の前に征一郎がいる、、、。それだけなのに、嬉しい、、、。
「おはよ、、、」
「ご飯、行こ」
「うん」
彼に手を引かれてベッドを降りる。前が肌けた浴衣に照れる。彼に帯を巻いて貰い、彼は自分で巻いた。
*****
食堂に大学生らしい、女の子達がいた。賑やかな三人だった。
女の子の赤い口紅を見ると、どうしても征一郎のシャツに着いた口紅を思い出す。あの時の悲しい気持ちが蘇り、胸がギュウゥ、、、ッと締め付けられた。
僕は何と無く、彼女達を避けた。
「悠、何か飲む?アルコールコーナーあるよ」
「え、珍しいね」
僕達は、ちょっと離れた場所まで見に行く。
生ビールはビールサーバーから自分で注ぐ、ハイボールとかカクテルは担当の人に頼んで作って貰うんだ、、、。征一郎は濃いめのハイボール。僕はカシスオレンジにした。
自分達の席に戻る時、前からあの女の子達が歩いて来た。嫌だな、と思いながら征一郎の後ろを歩く。
「うわっ!」
「ご!ごめんなさい!」
征一郎の浴衣が水で濡れた。右手で持っていたハイボールは無事。
女の子は慌てている。
「大丈夫、水でしょ?乾けば何とも無いから」
そう言いながら、彼は笑いながら歩き出す。僕もちょっと遅れて着いて行く。
女の子達は、クスクス笑っていた。
僕は見てしまった。さっき、後ろを歩いていた女の子がタイミング良く、水を溢した女の子を押していた。弾みで彼女のコップが大きく揺れて、征一郎に水が掛かった。多分わざとやったんだ。
嫌だなと思った、、、。
テーブルに戻って、席に着くと
「水で良かった」
と征一郎は笑った。お人好しだな、、、。
「大丈夫?」
「すぐ乾くでしょ」
と言いながら、ハイボールを飲む。
*****
少し酔っ払って、良い気分だった。館内のお土産屋を見に行き、遊戯室を眺める。
「あの!」
さっきの女の子達に声を掛けられた。
嫌な予感が当たった、、、。
「さっきは御免なさい。浴衣、大丈夫ですか?」
征一郎を見つめながら言う。
「大丈夫、大丈夫」
僕は、彼の後ろに隠れた。
「お詫びにカラオケ行きませんか?」
ああ、キッカケを作ったのか、、、
「ね?弟さんも一緒に」
弟じゃ無いし、、、。
嫌だな、折角二人きりの旅行なのに、、、。僕は、征一郎の後ろにピッタリくっついて浴衣を握った。
「ごめん、俺達二人で楽しみたいから遠慮するよ」
はっきり断ってくれた。
「弟さんはカラオケ、行きたく無い?」
意外と粘るな、、、と思った。
「弟じゃ無い。卒業旅行だから」
「え!私達もそうなんです!同じ歳ですね」
はしゃいだ声が耳に障る。
「何処から来たんですか?」
「車ですか?」
「あっちのお土産屋さん、もう見ましたか?」
女の子達に気圧されてしまう。
「ごめん、移動で疲れてるから」
彼女達は目に見えて、がっかりしている。
「悠、行こう」
肩越しに声を掛けてくれる。
「あ、クレーンゲームあるから見に行こうよ」
さり気無く手を繋いで、彼女達から離れた。
大分離れてから
「はあ、、、面倒臭かった、、、」
と征一郎は思いっきり溜息を吐く。
「悠とゆっくりしたいのに、邪魔されたく無い、、、」
ブツブツ呟く声が聞こえて来て、僕は嬉しかった。
一番大人しそうな子が、小走りで近寄って来た。
「あの!連絡先交換して下さい!」
と僕の目の前にスマートフォンを出した。
「え、、、」
チラリと征一郎の顔を見た。
「ダメ」
彼は彼女と僕の間に入り
「悠は、俺のだから無理」
さっきとは全然違う、低い声だった。
「あ、、、。御免なさい!」
彼の本気が伝わったみたいで、彼女はペコリと頭を下げて、慌てて帰って行った。
「、、、部屋に帰ろう」
「うん」
僕達は疲れて会話も無くなっていた。
部屋に戻る途中に、アルコールが売っている自動販売機があった。
「酒、買って行こうか、、、」
征一郎はそう言うと、酎ハイのロング缶を三本買った。僕も持つのを手伝う。
部屋に入るなり、彼は酎ハイのプルタブを開けた。普段グラスを使うのに、缶に口を付けて一気に飲んだ。珍しいな、、、。
グイッ!と僕の腰を抱いて、引き寄せキスをして来た。
「征一郎?ど、、、
会話を遮る様に口付けをする。
歩きながらキスをされ、転びそうになりながら、彼に支えられた。浴衣の帯を解かれ、内風呂の露天風呂の扉を開ける。彼自身も浴衣を脱ぎ裸になると、僕の浴衣も脱がせ、手を引いて露天風呂に入る。
お湯の中で僕を抱き締めた。
「征一郎、、、?」
「、、、ごめん、、、我慢出来なかった」
僕の肩に頭を載せる彼は、何だか弱々しく見えた。僕はそっと抱き締め、彼の背中を摩った。
「悠が、あの子と繋がるのが嫌だった、、、。連絡先、交換しないだろうって思いながら、自分を止められなかった、、、ごめん、、、」
僕達が少し動くと、お湯が揺れてチャプ、、、と音がする。
僕も彼に頭を寄せる。
「、、、僕、ずっと自信が無かったから、征一郎がヤキモチ妬いてくれたなら、凄く嬉しい、、、」
「え、、、こんなに好きなのに、不安だった?」
ふふ、、、
「だって、征一郎から好きって言われた事無い、、、」
「嘘、、、」
気付いて無かったんだ、、、。
「征一郎、、、僕は、征一郎が好きだよ」
「俺も好き、、、好きだ。好きだから、さっきの女が気に入らない、、、」
「うん、、、」
「悠、自覚無いから心配、、、」
「自覚?」
「女の子にモテる」
「そんな事無いよ?征一郎の方がモテるよ、、、」
だから、僕はいつでも不安なんだ。
「俺が告白した頃」
と言いながら、場所を変える。後ろから包み込む様に抱いてくれた。背中一面に彼を感じる。
「悠と仲良かった女の子、、、悠の事、好きだったんだ、、、」
「 ? 」
「悠を取られたく無いから、告白した」
後ろから回した頬を載せる、
「今日も不安だった、、、」
「そう、、、なの?」
ちょっと嬉しかった、、、。
ちゅっ、、、と首筋にキスをした。くすぐったい。
「印、、、付けておけば良かった」
「え?、、、痛、、、」
痛いっ、、、
征一郎の回した腕にしがみ付き、息を止めた。
「悠、、、」
彼の唇が離れて、力が抜けた。
「何、、、?」
「ずっと一緒にいて、、、」
「うん、、、ずっと一緒にいるよ」
僕、こんなに征一郎に思われてたんだ、、、。
不安にさせてごめんね。これからは僕からも、ちゃんと気持ちを伝えないと、、、。
チャプッ、、、
向きを変える。僕は彼の頬に触れ、気持ちを込めてキスをする。
愛してる、、、どうか、不安にならないで、、、。
彼を抱き締める。
「僕、征一郎の事、愛してるよ、、、」
「俺も、悠の事、愛してる」
出来るだけ長く、彼と一緒にいたいと思った、、、
サプライズも難しいですね。




