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異世界へGO〜時読みの王女を救うツアー  作者: nekorovin2501


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3/3

第3話 最終日、人質救出と運命の変革

朝の光が城の窓を優しく照らす中、俺は目を覚ました。

今日がツアーの最終日。

三日目——予知された反乱が起こる日だ。

昨夜はほとんど眠れなかった。ガルド卿から聞いた情報と、エレノアの時読みを何度も頭の中で反芻していた。

リリアが客室に紅茶を持ってきてくれた。

「佐藤様、おはようございます。

王女様はすでに謁見の間で待っておられます。

今日は……最後の日ですね。」

「そうだな。

絶対に終わらせる。

みんなを救って、俺は無事に帰る。」

俺は右手を握りしめた。

昨日より明らかに魔法の感触が強い。

まるで体の一部みたいに、自然に力が湧いてくる。

謁見の間に着くと、エレノアが地図を広げて待っていた。

彼女の表情は昨日より凛としていた。

諦めていた瞳に、今は決意の色が浮かんでいる。

「佐藤さん……準備はできた?」

「ああ。

人質の隠し屋敷は城下町の東側、廃墟になった倉庫街だな。

ガルド卿の話だと、衛兵は五人。

反乱軍の斥候が監視してるはず。」

エレノアが頷く。

「私の時読みでは、今日の午後二時頃に反乱軍の本隊が城門に迫る。

それまでに人質を救出して、ガルド卿に禁呪を使わせないようにしなければならない。

でも……私の能力では、救出の成功率が六割程度しか見えないの。

残りは、あなたの魔法と行動にかかっているわ。」

俺は笑ってみせた。

「六割か。

なら残りの四割は俺が埋めるよ。

ツアー参加者として、最高のエンディングにしないと。」

エレノアが小さく息を吐いて、俺の手を握った。

その手は少し冷たかったけど、温かさが伝わってきた。

「ありがとう……本当に。

あなたがいなければ、私はもう諦めていた。」

「礼は終わった後に。

まずは行くぞ。」

俺たちは変装用のマントを羽織り、城の裏門から抜け出した。

リリアが道案内をしてくれたが、彼女は城内に残る。

これからは俺とエレノアの二人だけだ。

城下町はいつも通り賑わっていたが、どこか空気が張りつめている。

人々が噂話をしているのが聞こえた。

「反乱軍が動くってよ……」「王女様は無事かな……」

俺はエレノアの手を引いて、人ごみを避けながら東へ向かった。

廃墟の倉庫街に着くと、周囲は静まり返っていた。

古い石壁の隙間から、怪しい影が見える。

「衛兵が三人……あと二人は屋根の上か。」

エレノアの時読みが役に立つ。

彼女は目を閉じて、未来の断片を覗き込んだ。

「右側の倉庫の二階に人質がいるわ。

今なら、衛兵の視線が左に逸れている……今よ!」

俺は即座に動いた。

「風よ!」

手を振ると、強めの突風が巻き起こり、衛兵たちの視界を一瞬塞いだ。

その隙に、俺たちは壁伝いに倉庫へ近づく。

「盾になれ!」

青い膜が体を覆う。

これで多少の攻撃は防げる。

エレノアが小さな呪文を唱え、扉の鍵を解除した。

中に入ると、薄暗い階段を上る。

二階の部屋。

縄で縛られた女性と少女——ガルド卿の妻と娘だ。

二人とも怯えた目で俺たちを見た。

「大丈夫だ。

ガルド卿の味方だ。

今、助けに来た。」

妻が涙をこぼした。

「本当に……ありがとう……」

俺は縄を切ろうとしたが、縄は魔法で強化されているらしい。

普通のナイフじゃ切れない。

「くそ……なら、魔法で。」

俺は深呼吸して、集中した。

これまでで一番強いイメージを込めて。

「斬れ!」

右手から鋭い風の刃が飛び出し、縄を一瞬で切断した。

魔法が成長している。

昨日はこんな強力なものは出せなかった。

娘が俺の腕にしがみついてきた。

「ありがとう、おじさん……」

「早くここから出よう。

まだ衛兵が——」

その瞬間、屋根の上から矢が飛んできた。

俺は咄嗟に盾を展開したが、矢は盾を貫通し、エレノアの肩をかすめた。

「っ……!」

エレノアが小さく声を漏らす。

血が滲んだ。

「エレノア様!」

俺は怒りが込み上げた。

「光よ!」

今度は攻撃用の光。

眩しい閃光が衛兵たちを怯ませる。

その隙に、人質二人を抱えて階段を駆け下りた。

外に出ると、衛兵が五人全員集まっていた。

剣を抜き、俺たちを取り囲む。

「逃がさんぞ……!」

エレノアが俺の背中に寄りかかりながら言った。

「佐藤さん……私の時読みでは、ここで終わる未来もあった。

でも、あなたがいると……違う道が見えるわ。」

俺は頷いた。

「なら、その道を行く。」

俺は両手を広げ、全力で魔法をイメージした。

「風よ……渦を巻け!」

周囲に強烈な旋風が巻き起こった。

衛兵たちが吹き飛ばされ、地面に転がる。

魔法の威力はこれまでで最大だ。

「今だ、走れ!」

俺たちは人質を抱えて、城下町の路地を駆け抜けた。

背後で衛兵の怒号が遠ざかる。

城に戻る頃には、正午を少し過ぎていた。

城門はまだ開いているが、遠くから反乱軍の本隊の旗が見えた。

謁見の間に駆け込むと、ガルド卿が待っていた。

「家族が……!」

妻と娘が駆け寄り、抱き合う。

ガルドの目から涙が溢れた。

「ありがとう……本当に……」

「禁呪は?」

「もう使わない。

これからは、王女殿下と王国を守るために生きる。」

エレノアが静かに言った。

「佐藤さん……ありがとう。

私の時読みで、初めて『明るい未来』が見えたわ。

反乱軍は城門に近づく前に、内部から崩壊する。

ガルド卿の証言で、首謀者の公爵が露見するはず。」

俺は安堵の息を吐いた。

「よかった……終わったな。」

空が少しずつ暗くなり始めた。

反乱軍の角笛が遠くで鳴るが、城内は静かだ。

誰も門を開けない。

反乱は、始まる前に終わった。

エレノアが俺の手を取った。

「佐藤さん……あなたのおかげで、私は生きられる。

この王国も、守られたわ。」

俺は照れくさくて、頭を掻いた。

「ツアーだからな。

参加者として、ちゃんと助けただけだよ。」

でも、心の中では違う。

これはもう、ただのツアーじゃなかった。

俺は本気で、この世界と人たちに触れた。

リリアが現れ、金色のチケットを差し出した。

「佐藤様、ツアー終了のお時間です。

電話ボックスに戻っていただければ、現代へお送りします。」

俺はエレノアを見た。

「また……来てもいいか?」

エレノアが微笑んだ。

今度は、疲れのない、純粋な笑顔だった。

「いつでも。

あなたが来る未来を、私は待ってるわ。」

俺はチケットを握りしめ、振り返らずに歩き出した。

光が包み、景色が歪む。

次の瞬間——俺はまた、路地裏の電話ボックスの中にいた。

星野葵さんが、笑顔で待っていた。

「おかえりなさい、佐藤様!

どうでしたか? 王女様は救えました?」

俺は頷いて、胸を張った。

「はい。

完全に、救いました。

最高のツアーでした。」

ポケットに残った小さな光の欠片——魔法の残滓が、かすかに輝いていた。

俺の人生は、もう少しだけ、特別になった気がした。

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