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第6話 出会い

本日2話目になります。

 パチパチと火が爆ぜる。俺は今、河原で焚火をしている。

 夏なのに何故だって? 俺も出来れば火に当たっていたくはない。

 今日は実験だ。火種はラヴァ。集めた焚き木に火を着けてくれたのだ。

 そして今火の中に気持ちよさそうに寝そべっている。温泉入ってるみたいだよ、君。


 川底から浚った砂に小さな透き通ったかけらを見つけた。前世でいう石英だと思う。

 ガラスの原材料は珪砂(石英の砂)、ソーダ灰、石灰だ。ガラスの発見は砂を焚火にくべたことから始まったという。諸説あり。

 珪砂は多分これだからいいとして、石灰はどこにあるのって感じなんだけど、石灰はこれ、チョーク! どう見ても原材料は石灰。

 二つはクリア。


 問題はアルカリ性の炭酸ナトリウム。天然ソーダはトロナ鉱石っていうものを使うんだけど、ソーダ灰はそれから水を抜いて粉にしたもの。トロナ鉱石があればかん水が作れてラーメンも作れる。マジで。

 他にも塩水を化学処理してっていうのもある。そっちは、無理っぽいけど。

 どう見ても、文化水準が江戸時代っぽいんだよね。中世後半から近世なのかな?

 俺、歴史には興味あったけど、ガラス工芸に関してだけだったからな。

 それとも、国のトップは現代風な生活なんだろうか?

 魔法があるからどうなのかわかんないな。子供の俺が知れることってあんまりないしなあ。


 とりあえず、炭酸ナトリウム成分あったらいいな、で、落ち葉やなんやらくべてみた。昔は草木の灰から抽出してたんだからできるはず?

 ぶっちゃけ、実験なんで、失敗してもいいんだ。そもそも、るつぼがないと、高熱でガラスが融かせない。吹きガラスはるつぼが必須だから炉の建設は絶対にしないとダメなんだよな。


「ラヴァ、青い炎って出せる?」

(あおい?)

「めちゃくちゃ熱い炎」

(やってみる)

 ラヴァが踏ん張った顔をして、炎を出している。おお、赤から白に、白から青に変化していった。

「凄いぞ、ラヴァ!」

(すごい? あるじ、僕すごい?)

「うん、夜多めに魔力吸っていいぞ」

(やった~)

 ラヴァ、喜び方が可愛い。またくるくる回っている。でも熱いな。

 砂、ちゃんと融けるかな?

 そもそも石英って大きな結晶はそのまま取引されるから加工で出たクズをもらう感じになっちゃうよな。


 さて、ラヴァががんばっている間に砂を集めようか。

 俺は川底を浚おうとざるを水面に沈めた。

「この川に金が出るとは聞いたことないぞ。やめとけ、やめとけ」

「え?」

 聞いたことのない声が後ろから聞こえて思わず振り向いた。

 河原に立っていたのは……


「不審者?」

「おいおい、辛辣だな」

「野盗」

「子供が小金を持ってるとは思わねえぞ」

「誘拐犯」

「誘拐犯なら問答無用でお前は今頃に馬車に詰められてるぞ」

「はじめまして。おじちゃんだれ?」

「お、おじちゃん……」

 絶句している不審者はよそから来た人だ。

 何度か村の子供に連れられて村に行ったから、村人の顔はほとんど知っている。

 見たことのない人だ。


 長い黒髪で、この辺の人では見ない髪色だ。長い前髪で目が隠れているから顔はよくわからない。鼻筋は通っていて、口の周りには無精ひげ。顎もすっきりしたラインだから、もしかして若くてイケメンかもしれない。

 でもぼさぼさの長髪はホームレスぽくてすべてが台無しだ。

 フード付きの灰色のマントで足元まで隠れていて、足元は革のブーツ。汚れているのかわからないけど、これも灰色。身長は父よりちょっと低いくらいだ。体格は父より少し細身っぽい。


「知らない人いたって父様に知らせないといけないんだった」

 俺は川から上がって焚火の前に置いた荷物を取り上げる。

「ラヴァ、帰るよ」

(かえるの? いい感じなのに)

「いいかんじ」

 やっぱり火の精霊に火は温泉のようなものなのかなあ。火を消そうと水の入った器を手に取った。


「待て待て待て」

「不審者さん、なに?」

「いや、不審者じゃない」

「しらないひと」

「ああーまたこのくだりやるのかよ! 俺は旅人だよ。旅人!」

「宿屋ないよ」

 ますます怪しい。

「知ってるよ! さっき、村で聞いたからな。泊るなら領主のところに行けって言われたんだよ」

 ああ、なるほどなるほど?


「じゃあ、うちのお客さん」

「は?」

「僕のうち」

「はあああ?」

「あんないする」

 いちいち驚くな。面白いかもしれない。

「いや、待て。この焚火」

「ん? 消す」

 ラヴァが肩に移動したから、炎色はもう白になっている。そろそろ元の赤になるだろう。


「違うよ。《《なんでそんな色なんだ》》。なんか、入れたのか?」

「?」

 俺はとぼけて首を傾げた。

「薪が燃えるのに、そんな高温になるわけないんだ。何か入れただろ?」

「これ」

 俺はさっきのざるを見せた。川底の砂が少量入っている。

「砂?」

「砂を燃やしたの」

「は? いやいや。川底の砂でそうはならない」

「なるかもしれない。だからもやしたの」

「……なるほど?」

 不審者の声のトーンが下がった。納得したようなので、水をかけ火を消した。

 この人は炎色の意味を知ってる。俺の知りたいことがわかるかもしれない。


 これが俺と師匠、コランダム・ヴァンデラー、放浪の錬金術師との出会いだった。


次の投稿は19時半になります。

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