第48話 人材不足
九歳になった日ちゃんとみんなお祝いしてくれたけど、皆が皆ばたばたしていた。
なぜかというと。
「人手が足りない」
朝食の席に珍しく出てきた父は頭を抱えていた。
「もともと、領民は少ないですしね」
師匠が麦茶を飲みつつ答える。俺とイオは果実からとった果汁を水で割ったものを飲んでいる。
「ソア子爵領の領民も大分減ってしまっているのが何とも……ああ、うちの領民だったものは帰ってきてくれたものも多いんだが」
「新しく十歳になった子たちは働いてないの?」
「職業に適した働き先に掬い上げているんだが……すぐにはなあ」
「子供たちは見習いが精いっぱいで……」
はあ、と父とローワンはため息を同時に吐いた。
「移住とか……領民の募集とか、しないの?」
意外なことを聞いたかのように俺を見る父。
「開拓とかってその意欲のある人を集めたりするんでしょ? そういう人たちってどうやって集めるの?」
「王都のギルドで募集をかけたり、他の領主にお願いをするな」
師匠が答えてくれた。父は苦虫を噛み潰したような顔になった。
「やはり他領に募集をかけるしかないな。来てほしくなかったから考えから外していたが」
「……条件を絞れば移動させてくれるのでは。侯爵に使いを出しましょう」
父とローワンが顔を見合わせて思案気に頷くと、ちょうど手の空いたギードを引っ張って出て行った。
「そういえば孤児たちっているんでしょ? 面倒は誰が見ているの?」
「村のお年寄りですよ。村の端に孤児院を作ってもらってそこで面倒を見ています。豊作で皆が寄付してくれているので、食事は心配ないと言っていましたよ」
ネリアが応えてくれた。イオはもう食事は終わったので、ネリアはその後始末をしていた。
「僕もガラス工房の見習い職人探したい」
「わかった。その孤児院に行こう」
食事を終えるとイオを連れて師匠と一緒に村に向かう。村の畑では収穫した小麦や大麦の後のヒマワリの種まきをしている。
「もう夏だね」
「ああ。そういえばルオの農場のほうはどうなんだ? ここのところ、忙しくて付き合えなかったが」
「コーンもお米も植えたよ! 更なる増産を目指すんだ! まあ、実際頑張ってくれてるのは神業の人なんだけど」
「ルオは総指揮か」
師匠がくすくすと笑って俺の頭を撫でる。
「うん! 指揮官だよ!」
「にぃ、しきかん?」
「偉いんだよ~!」
イオの手を握って歩きながら言うと、イオはきらきらした目で見つめてくる。眩しい。
「ここかな?」
結界に近く、歩くと数歩に森がある、村のはずれの大きい木造の家。でも子供の声は聞こえない。前世の幼稚園ってすっごくうるさかった記憶あるけど。
「どなたかな?」
お年を召したご婦人が話かけてくる。
「あの、領主の子供で、ルオ、この子は弟のイオ、それから」
「引率のコランダムという。責任者はおられるかな?」
「まあ! ご領主様の! そういえば、肉祭りで見かけた顔だね! ちょっと待っててく……ださい」
そう言うとご婦人は家の中に引っ込んでしまった。ご婦人と同じくらいの歳に見える男性を連れてきた。
「どうぞ中に」
通されたのは簡素な応接室。木の椅子とテーブル。その椅子に勧められて座った。
「実は働き手を探している。希望する子供に働いてほしい」
「今いる子供たちにですか? 彼らは大体が農民の子で、文字も知りません」
「ああ、文字か。計算も……」
「数くらいは数えられると思いますが、学力を計ったわけではないので。いるのは祝福の儀前の子供達ばかりです。職業がわかっている子供たちは引き抜かれて働いていますから」
青田買い極まれり!
「わかった。また、来る。今度は子供たちにお菓子でも持ってこよう」
俺たちは孤児院を出た。
「働ける人達は全開で働いてるんだね。世知辛いね」
「働ける場所があるのは幸運なんだぞ。特に、親を亡くした子供たちはな」
「そうだった。みんな魔物で……」
黙ってしまった俺を師匠がポンポンと頭を叩いて慰めてくれた。
「教会に寄るぞ。二人もお祈りしよう」
「お祈りする~!」
イオは教会が好きらしくお祈りをするのが嬉しいらしくて、いつも喜ぶ。
「うん、する」
教会で俺たちがお祈りをしている間に師匠は祭司様と話したらしい。
祭司様に了承をとって父と相談してあっという間に話を付けていた。
それは……。
「子供教室?」
「そうだ。教会で、五歳以上の子供たちに文字と計算を教える。希望すれば大人にもな」
「今までは、村の人たちはどうしてたの?」
「村長や、大人で知っているものが片手間に教えてたらしい」
「みんなができるわけじゃないんだ」
「そうだな。でも、それだけでも覚えたら、仕事の幅が広がるからな」
師匠は凄いなあ。
「でもだからって一足飛びに人手不足は解消しないがな。将来に期待だ」
確かにね!
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