第21話 剣術
本日は五話投稿予定です。
「はあ、はあ、はあ」
俺は今、死にそうになっている。なぜならブートキャンプに放り込まれているからだ。
「遅いよ?」
後ろから追い立てる父が鬼に見えるんだけど!!
どうしてこうなった!?
転生したことに気付いてから二年目の誕生日。父から木剣をもらった。ショートソードほどの長さの剣は俺には少し重かった。
「大分体が大きくなったからな。そろそろ頃合いだろう!」
なんの頃合いだよ!?
「はい?」
「あなた。ルオが目を白黒させているわ」
「え? わからんのか? 貴族の義務、嗜み。剣術を習い始める頃合いだ」
「え?」
「頑張れ」
師匠の励ましが虚しく響いた。
そして俺は連日、父に追い掛け回されている。それが足腰を鍛えるため、体力を鍛えるためだとわかっていても、きつい。とにかく体力をつけるのが先という父の方針は俺も賛成。でも、きつすぎる。
きつすぎて気絶して何もできなくなるので、夕方からにしてもらった。
父も忙しいのにこんなにつきっきりじゃなくてもいいんだよ。
そりゃ、体鍛えないととは思った。思ったけど、こんなじゃない!
はい、俺はフルオライトことルオです。先日、七歳になりました。はあ。
一年の間にいろいろあって、村の人たちの生活がかなり変わった。
なぜか、農作物の生育が良くなって、早く収穫できるようになった。
オーア王国自体は割と温暖な気候で、四季もあるんだけど、俺が住むこのルヴェール領は高地に位置して、前世でいう高原に近い気候なんだ。だから本当は農作物の三毛作なんてできないんだけど、できてしまったんだ。
あの日、俺が口を滑らせてしまった、ジャガイモのお酒。おかげで、残りのジャガイモは種芋になってしまった。師匠はどういうわけかジャガイモの育成方法をあっという間に手に入れ、畑に植えた。
元々前世のジャガイモに似た植生だったのか、ルヴェールの気候が合ったのかはわからないが、最短で収穫できた。半分がお酒の仕込みに、半分の半分が種芋に、その残りが食用になった。
片栗粉がとれるなと思ったのは内緒だ。
初冬に小麦を。収穫後にヒマワリを、その後にジャガイモをと農民は大忙しだった。
エールに使っている大麦も育ててるのを知って、俺がお茶にして欲しいって頼んだ。だってね、エールは俺、飲めないんだもの。お子様だし。甘くない飲料が欲しかったの。
お茶の木はないみたいだから飲めるのハーブティーくらいだし。薬草茶になるからもったいないしね。
そうしたら大麦の作付面積も増やすことにしたようだった。ごめん、村の皆さん。
高地なので野菜類のうち、レタスが良く育って瑞々しくて美味しい。
これが遠くに出荷できたらいいなと話したら、マジックバッグを持っている商会があるということで、なんと! 六~七月に来る行商人の一商会と専属契約をして、王都で販売することになったんだ。これで少し、財政が潤うのかな?
今まで来てた行商人の商隊はいつも通りに九~十月に来るが、村が変わったことはわからないようにしているみたい。
麦もヒマワリも刈り取った後だから、特に変化はないと思っているんだろうな。
相変わらずぼったくり値段なので、村人もそうは買わなくなった。もっとお安く、六月に買えるものね。
そんな目まぐるしい変化の中で俺の日課も変化した。
朝、軽く走る。午前中は座学、昼はお昼寝だけど、時間は少なくなった。午後は師匠とポーション・ガラス作り、薬草の採取。夕方に父と剣術。
遊ぶ時間は? 俺の遊ぶ時間……。
「ちち~~~」
俺がはあはあ言ってくたばっていると、イオが母に連れられてやってきた。ちなみに剣術の時間は師匠は工房へ籠っている。
「ぼくも~」
父に駆け込むイオの足取りはぽてぽてという感じで、可愛い。
「ん? イオも剣術か?」
父の顔がだらしない。なんで、俺の時は鬼の形相なんだ? 納得いかない。
「んー!」
にこにこしてイオが俺の腰にある木剣に手を伸ばす。母がイオを抱き上げた。
「仕方ない、ルオ。触らせてやれ」
仕方ないので、イオに持ち手を触らせる。意外にもイオはぎゅっと掴んで……
「わっあぶね!」
いきなり横に振った。俺は驚いて尻もちをついてしまった。幼児のイオがあり得ない膂力でびゅんびゅんと振り回す様子にあっけにとられた。
「えー……」
俺は思わず声をあげたが、父はぽかんと口を開けたまま呆けていた。
「イオ、だめよ。危ないでしょ?」
「あぶない?」
「そう、危ない」
冷静な母がそっと腕を押さえてやめさせた。父がはっとしてイオから木剣を取り上げた。
「イオ、もっと大きくなってから、だぞ」
「おおきくー!」
「そうだ。いいこだな」
父がわしゃわしゃとイオの頭を撫でまわすと、イオはきゃっきゃと上機嫌になった。
イオは危ないの意味、わかってないかもなーと思って俺はズボンをはたいて立ち上がった。
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