第19話 ガラスを作ろう
竈の部屋に戻ると、ラヴァが気持ちよさそうに寝ていた。
すっかり燃え尽きて灰が残っていた。
「ラヴァ」
俺が呼ぶと起き上がり、肩に飛び乗った。
「この灰を錬金鍋に入れるぞ」
師匠が灰を錬金鍋に入れていく。俺は川底の砂を用意した。集めた中で珪砂の可能性が高いものをより分けたもの。それと石灰だ。石拾いをしてたら見つけた白い石。石灰だった。それを一緒に錬金鍋に入れる。
これを高温で融かすわけだが、そこはラヴァに頼もう。
「ラヴァ、お願い。魔力持っていっていいから」
(融かせばいいの?)
「うん。赤くドロドロにね!」
(わかった~)
痣が熱くなる。魔力が抜けたのがわかった。少しふらつく。
「ルオ、大丈夫か?」
「もしかしたら、有毒なガスが出るかも」
「だったらこっちの炉に移すか」
師匠が隣の部屋を指し示す。この錬金窯の部屋と、炉のある部屋は扉で繋がっている。そのドアを開けて師匠は炉のふたを開ける。
「ラヴァ待って。移動する」
(わかった)
ラヴァは錬金鍋の上に鎮座し、大人しくしていた。錬金窯は重たいので、師匠が持って移動した。
炉の扉を開けて錬金窯を置いた。炉は煙突に繋がっていて排気ができるみたいだ。
「扉閉めるね。ラヴァ、どろどろになったら声をかけて」
(うん!!)
ラヴァが炎を纏う。みるみるうちに熱をあげていった。それを確認して扉を閉めた。
椅子に座って師匠と二人、炉の前で待つ。炉から感じる熱でだんだん熱くなっていく。
つっとこめかみから汗が流れた。
そういえばこの炉は何のために使う炉なんだろう?
「上手くできるといいな」
師匠が、ハンカチで汗を拭ってくれた。
「うん」
そうして一時間くらい待ったらラヴァの声が響いた。
(できた)
するりと扉をすり抜けてきたラヴァが肩に乗る。不思議と熱は感じない。
「師匠、できたって」
「そうか、開けるかな」
火かき棒みたいなもので扉についている取っ手に引っ掛けて扉を開けた。熱気が噴き出てきた。
錬金窯には熱くマグマみたいな液体が入っていた。融けたせいなのか、底に少量だ。
「ドロドロだな」
師匠が好奇心に満ちた目で見つめていた。目が輝いている。
「この段階を錬成ですっ飛ばしているのか。なるほど」
ぶつぶつ言ってるよ!?
「師匠、ガラス出来た?」
「どうだかな。鑑定にはガラス品質低位と出たが」
「え!?」
「触るなよ、まだ熱い」
師匠の肩越しから、錬金窯を覗き込む。だんだんと冷えていってガラスになった。
いろんな不純物の混ざったガラス。
「あ。ガラス?」
ぽたっと頬を涙が流れ落ちた。
「できた? ガラス」
「できたな」
師匠が俺を抱き込んでわしゃわしゃと髪を乱した。
「凄いな、ルオ! できたな! ガラスが!」
「うん。うん。できた~~~!」
(できた! できた! 褒めて!)
「凄いよ~ラヴァ~師匠~」
わんわんと泣いてしまった。
泣き腫らした顔で屋敷に戻ったら、師匠がネリアに怒られた。
「うれし泣きなんだよ~!」
ネリアに必死に事情を説明したら、旦那様に報告してください、と強い口調で師匠が言われていた。
なんでだ?
ちなみに父も母も夕食の時間は疲れていたので、口数は少なかった。
「行商人と種の手配は大丈夫です。二週間後には到着します」
師匠が報告してたので俺はびっくりした。そんな早くわかるのかな?
誰も訪ねてはこなかったのにな。
夜、ベッドに入った俺の顔はにやけていた。
(楽しいの?)
「うん。楽しい。ラヴァがいてくれてすごく助かった」
(役に立てた?)
「すっごく! ありがとうね。ラヴァ」
(お礼! 役に立てて嬉しい!)
胸の上でくるくる回るラヴァが可愛い。そう思った途端、思い切り魔力が抜けていって翌朝までぐっすりだった。夜は制御が甘くなるんだよ。
翌日は座学と、ポーションづくりとガラス作り。
ガラス作りは材料の見直し。師匠は鑑定が使えるらしくて、材料を逆算して材料の段階で選別するようにって言った。
コツコツとできることを増やしていく。
そうして、できるガラスの質と量をあげて、ガラス専用の炉で、いずれは吹きガラス風に小鳥を作ろうと思う。前世の父が買ってくれたガラス細工。それをまず再現したい。
きっとできる。だからがんばろう!
そうして二週間が過ぎた。
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