第16話 生活魔法
朝、ばたばたしているのに目が覚めた。
「もう収穫か?」
「二カ月ほど早い……」
「すみません、お願いいたします……」
普段は聞かない大人の声がした。朝食室に行くとネリアとイオだけだ。
「おはよう」
「ルオ坊っちゃんおはようございます」
「はよーござーまー」
「イオもおはよう! 可愛いぃ」
「きゃっきゃっ」
「今日はなんだかうるさい」
「村の人たちが来てるんですよ。何か、旦那様に相談があるとか」
「そっかー大人のお話だなあ。師匠もいないけど……」
「先生と奥様も一緒にお話し合いに行ってますよ。ルオ坊っちゃんには復習と貴族年鑑を覚えるように伝えてくれと頼まれましたからね。お食事が終わりましたら、お勉強だそうです」
「そうなんだーがんばるー」
「ふふ、ルオ坊っちゃん、頑張ってくださいね」
「がんばー」
「イオ、絶対わかってない」
「んん???」
イオは超可愛かった。朝食を済ませて、午前中は自主学習をした。貴族年鑑は覚えられる気がしなかった。
午後になって、師匠が現れた。もちろん昼寝の後だ。
「すまんな。ちょっと緊急の用でな」
「仕方ない」
「いい子だ」
頭をぐりぐりされた。
「さて、生活魔法を教えるんだったな。生活魔法は魔法を使えないものでも習得できる。この本が生活魔法の基礎呪文が書かれている。一通り読むこと」
薄い羊皮紙に書かれた本を受け取った。
「いいか? 呪文は覚えていいが、一人では実行しないこと」
「はい」
「まずは基本からだ。『水を成せ、水生成』」
師匠が錬金窯の上で拳を握って呪文を唱えると、拳の周りに水が渦を巻き、錬金窯に落ちていった。
「うわーー!! 凄い凄い」
錬金窯の底に一センチほどの量の水が溜まっていた。
「量って調整できる?」
「ん? 人によって量が違うな。足りなければ何度も唱える。魔力制御ができなければな。魔力制御で、注ぐ魔力を調節する。この時は頭の中にイメージをすればいい。コップ一杯の水、盥一杯、そして錬金鍋一杯、『水を成せ、水生成』」
今度は錬金鍋一杯に水が出た。
「消えたりしないの?」
「しないな。水系統の魔法も残るぞ」
「洪水」
「それクラスの魔法を使えるのは宮廷魔法使いくらいだ」
「へええ」
「本格的に魔法を習うのはまだ先だ。他のも一通りやるから見てろ。実践はその後だ」
師匠は一通り実演してくれた。種火、盛土、送風、ライト、クリーン。
正直、盛土の魔法だけは何に使うのかわからなかった。
「今度はルオの番だ。クリエイトウォーターを唱えろ。このコップ半分くらいのイメージで」
「ええと、『水を成せ、水生成』」
ぱしゃっと水が木のコップに落ちた。半分と言われたが底に一センチくらいの量だった。
「うわああ! 魔法! 魔法使えた!」
「成功したな。上出来だ」
大喜びで駆け回る俺を師匠は咎めもせずに誉めてくれた。
「次は火……待て、河原に行こう」
「はい」
師匠ははっとして肩を見てから言った。ラヴァが首を傾げていた。
河原に向かって移動した。道を歩いていると、村が一望に見渡せた。麦畑が黄金色だ。
「もう小麦が刈り取れそうなんだ。二か月ほど早いかな」
「何か問題?」
「いや、豊作で生育はいいんだ。何も問題はないな。ただ、なぜ生育が早まったのか、そこは不思議だが」
「きっとお天気が良かったからだよ」
「まあ、そうかもしれないな」
河原に着いた。春の増水は収まっていて、河原に降りる。
「じゃあ、火の呪文を唱えてみろ」
「火よ着け、種火」
ゴーという音がして、ガスバーナーのごとく火が吹いた。めっちゃ驚いた。
「ひえええええ!」
師匠が頭を抱えた。
「やっぱり」
種火の魔法は練習して威力を絞ろうということになり、他の生活魔法を一通り試した。他はそれなりにしょぼかった。
「絶対に、絶対に、種火だけはうっかり使おうと思うなよ?」
こくこくと頷いて、はいと答えた。
久しぶりの石拾いに俺のテンションが上がった。色々な石に俺は霊峰を見る。
鉱脈が眠ってそう。でも開発はできないから仕方ないよな。
白い石は結構あるし、ヒスイとかありそう。
「相変わらず石拾いが好きだなあ」
師匠が笑いながら石を拾う。
「ガラスの材料があるかもしれないもん」
「そうか。作ってみるか? 焚火で実験してただろう?」
「はい」
「錬金鍋も、竈もある。できるぞ」
「!!!」
俺は一気にテンションの上がった目で見た。
「明日にでもやろう」
「やったー!」
ガラス作りに挑戦だ!
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