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かなえとれむ

継美が引っ越してくる10日ほど前のこと、かなえの部屋には西島れむがいた。


「……」

「……」

机を挟んで座るかなえと西島れむ。気まずい雰囲気が漂う。

(どうしてこんなことに……。)


今日の放課後のことだった。

「じゃあ、私、引っ越しの準備あるから。」

「うん、またね。」

継美とはいろいろあったのだが、今では学校内で仲良く会話しあう仲になっていた。

「かなえ様、私たちも帰りましょう。」

雪だるま一号がそう言った時だった。


「ひ、東野さん!」

「え?」

かなえの目の前に現れたのは青の長髪が目立つ西島れむだった。

「あ、あの約束!忘れてないですよね?!」

「えっえっ……?」

クラスの子と話すことはこれまでなかったし、ましてや、クラスの風紀委員で人気者である西島れむと話すことは全くなかった。だから、約束とは何か、かなえには見当もつかなかった。

「て、定期試験の!」

「て、定期試験……あっ。」

思い出した。そういえば、定期試験で順位がどうとか言うことを約束した気がする……

「わ、私、ま、負けたから……!」

「あ、う、うん……。」

「な、何か……」

「え……?」

「何かして欲しいこととか、ある?!」

西島れむは顔を赤めらせてかなえの顔を覗き込む。

「な、何かって……。」

「なんでも言うことを聞くって話だったでしょ!」

「そ、そうだっけ……?私、何も考えてないんだけど……。」

「な、なんでもいいから!」

何故か必死な感じがする。

「じゃ、じゃあ……。」


ということで、かなえの家に来てもらうことにした。

「かなえ様……」

雪だるま一号がひそひそ話かける。

「このまま何も話さずにいるつもりですか?」

「い、いや……何を話せばいいのかわからないし……何か話題ない?雪だるま……」

「わ、私に振られても……。」


そんな二人の前で西島れむは、

(ここが東野さんの……部屋……。)

ガチガチに緊張していた。

まさか、家に招かれるなんて思いもしなかったのだ。

(あのミステリアスな東野さんが自分から招待してくれるなんて……でも、何を話せばいいのかしら……)

流行りの服?それとも、勉強?

いろいろ思いついては、却下する。

(東野さんの趣味がわからない……!)

ずっと気になっていた人、なのに、どんな人なのかわかってない自分にモヤモヤする。

(はっ!な、何か話題をお部屋の中から……!)


突然、きょろきょろし始める西島れむ。

「に、西島さん、どうした……」

「あっ!」

「えっ?!」

「ゲーム!」

「げ、ゲーム……?」


とっさに声に出してしまった。現時点でわかる、共通した話題であろうものがこの部屋にあった。最新の携帯ゲームだ。

「ひ、東野さんって、ゲームするのね!」

「え、あ、うん。」

「わ、私もねっ……!あっ……。」

西島れむはふと思い出す。学校ではゲームをしていると公言していない、むしろ、秘密にしていた。風紀委員としてのプライド……というより、周りからのイメージを壊したくないからだ。


「い、いや、なんでもないで……」

「えっ?ゲームするの?!」

かなえの目にキラキラが映る。

「え、あ、は、はい!」

思わず返事をしてしまった。

「どんなゲームを?!今話題のモンスター狩るの?!」

「え?!それやってるの?!」

「うん!」

2人のテンションが上がっていく。

「今度一緒にやらない?今、1人でやるのちょっとつらくて……。」

「いいわよ!私ガンガン手伝うよ!」

「わー、ありがとう!継美も誘ったんだけど、ゲームに興味がないみたいで……。」

「再条さん?確かにあの人、ゲームやらなさそうだし。」

「どのモンスターが好き?」

「私はねぇ~……」

2人はゲームの話に夢中になっていく。雪だるま一号はそっと部屋を出る。かなえが友達と楽しく話すのがうれしかったからだ。こんな時間が増えて欲しい。そう願うのだった。



気が付けば外が夕日に染まっていた。

「東野さん、今日は楽しかったわ!」

玄関で靴を履くれむ。

「私も楽しかったよ!れむれー!」

「れ、れむれー……?」

「あ、だ、ダメだった……?」

「う、ううんっ!全然いいよ!」

「ならよかった!」

「な、なら私も……。」

「ん?」

「か、かなえって呼んでいいかな……?」

れむはもじもじしながら聞く。頬は真っ赤だったが、夕日がそれを隠してくれた。

「うん!いいよ!れむれー!」

「っ!ありがとう、かなえ!」

2人は笑いあった。

「あっ、わ、私がゲームをしていることは……。」

「秘密にすればいいの?」

「う……うん。」

「いいよ。」

「ありがとう、かなえ!」

「じゃあ、今度、一緒にゲームしようね!」

「うん!また明日ね!かなえ!」



れむが帰っていった。

「……どうでしたか?かなえ様、楽しかったですか?」

「あ、雪だるま、うん、楽しかった。」

「良かった……良かったです……」

雪だるま一号はハンカチを取り出して目を擦る。涙も出ないのに。

「雪だるま、大げさだなぁ……」

「だって……だって……かなえ様にお友達が……」

「継美もいるじゃない。」

「継美様は家族みたいなものじゃないですか。」

「ま、まあ、そうだけど……。」

かなえは恥ずかしそうに言う。

「かなえ様が誰かと楽しく過ごせる時間が増えればいいと思っております。」

「……うん、ありがとう、雪だるま。」



「あ~っ!緊張したぁあああ!」

夜、れむは1人、ベッドに倒れる。

「かなえ!かなえ!かなえ~!」

枕を抱きしめながらきゃ~っと悲鳴をあげる。

「れむれー、だって!」

ゴロゴロ転がりながら顔を赤める。胸が張り裂けそうなくらいうれしい。

友達はいっぱいいるが、こんな気持ちになるのは初めてだった。

「この気持ち……なんだろう……?」

ドキドキが止まらない。

「寝れない!ゲームして落ち着こう!」


れむがこのときめく感情の意味を知るのはそう遠くない未来の話……。

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