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武器と魔法③

「それでは改めて、もう一回最初から言いますわ。皆様、武器をお持ちになりましたわね。今から皆様には、目の前にある建物に入り敵を倒していただきます。ざっくりな説明で申し訳ないけど、これ以上は言えませんわ。」

スターは淡々と喋る。


「よかったあ、殺し合いじゃなくて。」

「瑛美ちゃん、早とちり過ぎ。そういう系見すぎじゃない?」

「ごめん、那妃ちゃん。みんなもごめんね。」

瑛美は四方八方向きながら両手を合わせる。


「ゴホン、では皆様が持っている武器と属性魔法、そして先ほど魔力数値装置で計った数値をこおりのリーチが説明致しますわ。後で補足説明をしますわ。」

スターはスッと後退し、リーチがスターがいた位置に来る。そして、懐から薄汚れた紙束を取り出す。


「秋川那妃、中学三年生 十四歳。武器、大型十字手裏剣組立式。属性鳥系魔法。魔力六八〇。」

棒読みでリーチが無表情で読む。

「魔力数値装置って火球?」

那妃が挙手し質問をする。

「そうですわ。火球と火球の間が計れるようになっているのですわ。因みに人間の平均魔力は百いくかいかないかですわ。那妃さんは超優秀の部類ですわ。」

「伊達に霊媒師だけあるわ。」

自画自賛する那妃は誇らしげである。


リーチが唐突に言う。

「涙原結哉。高校二年生、十六歳。武器、日本刀。属性風魔法。魔力二七一。」

突っ立っている結哉本人も呼ばれるとは思ってもみなかったためビックリしている。

「まさか、俺が二番目に呼ばれるとは・・・。」

結哉は感極まって一粒の涙が左目に出る。


「これって、まさか……この順番って魔力高い順?」

賀蓮が言うとスターが頷く。呼ばれていない者達は凍り付く。


「鳥井瑛美。高校二年生。十六歳。武器、短剣二本。属性水魔法。魔力二四三。」

自分の名前を呼ばれ安堵する瑛美。

「フー、よかったぁ。あたし、じゃんじゃん敵を倒すよ!」

瑛美は嬉しそうに二本の短剣を両手で握りしめ切るマネをする。


「順位除外二名。星崎雅就。小学四年生。十歳。武器、太鼓桴(たいこばち)。属性不詳。魔力予測不能。そしてもう一名、永吹龍座。高校三年生。十七歳。武器、ショットガン。属性火魔法。魔力感知不可。」

雅就の顔はムンクが描いた『叫び』の表情で渋く濃くなっていた。雅就は声も出ない。雉子はハグし頭をなでる。雅就は大泣きをした。


「おい、バイザーシンシ!イカサマどうやったんだ。教えねぇと血の海だゼ。」

龍座の目の前に、瞬時に来たヴァーノは左の鉤爪を舐める。隣にはフェネックギツネっぽいのも無表情で浮いている。雅就以外一同の視線は龍座に向いている。

「偶々、感知出来なかったんじゃない?僕がやった証拠がない。」

「チッ!喰えねヤツだゼ。」

鉤爪の代わりにヴァーノは林檎を噛る。フェネックギツネっぽい生物は龍座を凝視する。

「おい、フッキュ。何か見えるか?」

「ウ~ン、何も見えないでちゅ。絶対(ぢぇったい)なにかちてまちゅよ。」

「チッ!コイツを今から監視するゼ。」

ヴァーノ達はジッと龍座を観る。龍座は少し笑っているように見えた。


スターがまたパンパンと叩く。皆リーチの方へ向き、賀蓮、雉子そして貴寿は今か今かとドキドキしている。

「神矢雉子。大学三年生。二十歳。武器、剣鞭。属性雷魔法。魔力一〇九。」

雉子は胸を撫で下ろす。胸辺りに雅就が涙を潤ませながら雉子を見る。

ー喜んでいる場合じゃないわ。また、雅君が泣いちゃう。ー

雉子は手をアタフタと動かしながら

「ま、雅君。雅君の魔力は予測不能でしょ。予測出来ないことだから伸びしろがあるってこと。」

「伸びしろ?」

「頑張り次第で、あたし達以上に強くなるってこと。だから気にしないで。」

雉子はニカッと歯を見せ笑う。

「ありがと。」

雅就は嬉しくて泣く。雉子は後頭部をポンポンとする。微笑ましい光景に賀蓮と貴寿以外は尊い感じとなる。


「次呼ばれなかったら、あたしロッドで、おもいっきり喉元ぶつけて死にます。」

大声で自害宣言する賀蓮が場の空気を瞬時に変える。賀蓮はロッドを握りしめ中腰になり、神に祈りを捧げるポーズをする。那妃が賀蓮に慌てて近づき、

「大丈夫?」

那妃が賀蓮の背中を優しく叩く。賀蓮は祈りの姿勢をしたまま何かブツブツ言っている。那妃が耳を澄ませて聞いてみるが早口で何を言っているか分からなかった。

貴寿の方を見ると、直立して微動だにしていなかった。


リーチが紙束を捲り、口を開く。

「夢宮賀蓮。」

「しゃー‼️ウチやったで‼️とぅちゃん、かぁちゃん‼️」

賀蓮がジャンプしてはしゃぐ。周囲は冷めた目をしていたり目を丸くしている。貴寿は足から崩れ落ち大の字になる。顔が真っ青になり瞳孔が開きうわ言を言い出した。

「続きいいか?えー、中学三年生。十四歳。武器、ロッド。属性セイ魔法。魔力四。」


「四⁉️」

賀蓮は腰から崩れロッドを杖代わりにして身体を支える。

「四ってヤバ‼️何かの間違いでは?」

ショックで青ざめた賀蓮の代弁をする那妃がスターにもの申す。

「間違いではございませんわ。あの装置は正確ですわ。一部の方達は除いてネ。」

「平均魔力百ってどういう意味?一般人は魔力があるってこと?」

「少し説明すると、この世界に来た方は一般人でも魔力百ぐらいあるってことですわ。でも、貴方たちの世界では魔力はほぼ皆無。つまり皆様は各異世界に適応した能力が備わっているのですわ。賀蓮さん貴寿さん、そして雅就さんはそれが備わっておりませんわ。龍座さんはわかりませんけどネ。修業、鍛練すれば自ずと身に付きますわ。もっと努力すれば貴方達の世界にいても魔力は使えますわ。」

スターはニコリと笑う。


「だって、賀蓮ちゃん・・・‼️何してるの賀蓮ちゃん‼️」

賀蓮は喉元にロッドを充て、手に力をいれようとしていた。那妃はすかさず、ロッドを引っ張る。賀蓮の力は三馬力のように押し戻されそうになる。那妃は負けじと引っ張り、結哉と雉子が加勢する。やっとロッドを離した賀蓮は咽び泣く。

「悔しいのは分かるけど、そこまでする必要ないじゃない?」

「う、ううー、だってこの世界に適応出来ないあたしはリーチさんと対等に接することがムリってことでしょ?」


バッン!!!


と、那妃は賀蓮の左頬に平手打ちをする。

「バカッ‼️修業、鍛練して努力すれば適応できるってスターが言っているじゃない‼️死ぬんじゃないわよ。」

那妃は右手を賀蓮の前に出す。

「那妃ちゃん・・・。」

那妃と賀蓮は七十年代の少女漫画風のキラキラ目になる。賀蓮は那妃の右手を両手で掴み起き上がる。


「いったい何を見せられてるんだ?」

「さぁ?」

結哉と雉子は呆気にとられて突っ立っている。

「あれがロッドの属性魔法なんですわ。なんと恐ろしい。颯爽と対策を練るべきですわ。」

スターは興醒め顔をしている。那妃と賀蓮の顔はすぐ元の顔に戻る。二人は何事もなかったかのように雑談している。


「おい、俺はまだか?」

中腰になった貴寿が元の顔に戻る。

「森峰貴寿。高校一年生。十五歳。武器石斧。属性地魔法。身長一九二センチ。体重八十七。以上。」

リーチが紙束を紐で縛る。

「魔力は?俺だけ個人情報増えてないか?」

貴寿は起き上がろうとする。

「・・・察しろ!」

リーチの一言にぐうの音が出ない貴寿は拳を握りしめる。


「目的は改めて簡単に説明致しますわ。目の前にある建物に侵入し、アジト化している敵を倒すことですわ。武器は必須ですわ。魔法もネ。」

スターが瞬時にリーチの前に来て右前足で皆がもたれ掛けた大きな古い石壁を指す。


「今は暗くてよく見えませんが、この建物は地下四階、地上八階建てでございますわ。元々これは試験場として機能していましたの。」

「試験場?」

那妃が暗くて全貌が見えない建物を見ながら質問する。

「詳しくは言えませんの。ごめんあそばせ。」

スターは建物の方へ向き呪文であろう言葉を放つ。建物の壁は引き込まれそうな黒い大穴が開く。スターは振り返り、

「さぁ入りましょう。」

と中に入っていった。那妃達は戸惑いながらも入っていった。


全員が中に入ると穴は閉じられた。床と壁から白い光が出て辺りは明るい。中央には、いかにも罠だと言わんばかりの黄金の押ボタンが大理石っぽい台に置いてあった。


「さぁ、誰か押して下さいませ。(わたくし)たちには権限がございませんの。」

スターは台の右に移動し、那妃達を見る。

「結哉さん、出番ですよ。」

貴寿が結哉を見る。

「こういう目立つのは論外だ。君がやればよい。」

結哉は腕組みをし、フッと笑う。

「はっ?」

貴寿は結哉を睨む。

「いいから、早く押してよ!あたしは押したくないわ。こういうの。」

那妃が急かす。皆の視線が貴寿に向けていることに気づいた貴寿は

「チッ‼️」

と言い結哉をキッと睨んだ後、ガシャガシャと音をたてながら、ゆっくり中央に来る。

「押すぞ‼️」

貴寿は思いっきり壊れる程強く、黄金の押ボタンを押す。


建物内にブザーが鳴り響き、床が観音開きになった。人間達は悲鳴を挙げ、スターとリーチは知っていたようで表情を変えずに落ちていった。


浮遊しているヴァーノとフッキュは自力で落ちて行く。















 


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