ミノタウルス成敗(屋上)
一目みて心を奪われた。
世の中にこんな素敵な女性がいるのだろうか。
じっさいは人間ではないし、生き物と呼んでいいのかわからないけど、わたしは精霊ウンディーネに恋をした。
わたしは佐藤愛。ダンジョン化した学園で国語を教えている。二十五歳の処女。小中高から大学も女子校で男性と交際したことがない。
高校でガールズラブにはまり、いまではガチユリと呼ばれる世界に身を置いている。愛読書はもちろん野獣先輩の「百合の子」。今年TVアニメ化もされている。
それにしても夏コミは眼福だった。
なぜなら、わたしの教える生徒二人が百合の子のコスプレをしていたんだから。
その生徒の名は神人こよりくんと百合崎百合ちゃん。いまでも二人の姿が目に焼きついている。
わたしのことなんてどうでもいい。
さっき廊下で神人くんと話をした。なんとウンディーネが手に入るかもしれない。
嬉しい。学園がダンジョン化してしまったのは悲しいけれど、それがなければ精霊との出会いもなかったから。
神様ありがとう。わたしの夢はようやく叶う。
学園ダンジョン化 三日目 午前
「トールハンマー!!!」
ピシャーン
屋上を占拠していた牛型モンスターのミノタウロスが黒焦げになる。
クリス・ガーランドが契約した雷の精霊トールは強かった。とくに屋外でその本領が発揮される。屋内にカミナリは落ちないからね。
「ハハハ!圧倒的じゃないかワガ精霊は!!」
やめとけクリス。変なフラグを立てるな。
ボスと思われるミノタウロスがサーヴァントカードをドロップする。水の精霊ウンディーネだ。
いちおう愛ちゃんにメッセージしておくか。ウンディーネ入手っと。
ダダダダダダ
誰か階段を駆け上がってくる音がした。バタン!!ドアが壊れんばかりの勢いで開く。愛ちゃんだった。ライムして一分だぞ。いくらなんでも早いよ。
「神人くん!連絡ありがとう!!」
「もしかして、近くで待ってました?」
「そ、そんなことないよぅ」
待ってたのかよ。そんなにウンディーネが欲しいのか。契約する精霊も幸せ者だな。愛ちゃんにカードを渡す。
「ウンディーネ召喚!!」
ぴかっ
「マスター。ウンディーむぐぐぐっ」
愛ちゃんがいきなり抱きついてウンディーネの唇をふさぐ。クリスといい合体ロボットアニメで合体シークエンス中に攻撃をしかける敵みたいなことをするマスターばかりだな。
「名乗りくらいちゃんとさせてええええ」
ウンディーネが叫ぶ。トールがうんうんと頷いていた。
さあ昼飯食べて午後もモンスターを討伐だ。
はい異世界シニアです。
七日間も解決までかからない気がしてきました。突然お話が終わったらごめんちゃい。
次回、学園ダンジョン。三日目(仮)。






