コマンドウルフ(体育館)
「神人くん!!」
廊下で国語の佐藤愛先生に呼び止められた。
「どうしたの愛ちゃん」
「もう!先生をちゃん付けで呼ばないの」
だって生徒に愛されてるんだから仕方ない。愛だけに。でもボクはこの人の本性に気づいている。
この人は真正だ。ガチユリだ。ボクにはわかる。
「聞きたいことがあるの」
「なんですか」
「サーヴァントってみんな女の子なんだよね」
あー。理解した。完全に理解した。愛ちゃんは独身で恋人もいないらしい。そりゃ欲しいよね、サーヴァント。
「あとね」
「夜のことですか」
「うん。別に気にならないけど」
「凄いですよ」
「凄いの!!!!」
はい確定。
「で、誰が好みなんです」
「ウンディーネちゃん!!」
「お姉さんが欲しいと」
「うん!!」
もう隠す気もないらしい。はぁ。
「わかりました」
「ありがとう!!」
「生徒を守るためですからね」
「もろちん!もちろんよ!!」
次にウンディーネがドロップしたら渡そう。下手な生徒に渡すよりは安心できる。
ボクは神人こより。中学三年生。ルンルンと嬉しさを隠さずに職員室に戻っていく国語教師を生暖かい目で見送った。
学園ダンジョン化 二日目 午後
オークの生姜焼きで昼食をすませる。午後は体育館のコマンドウルフを討伐する。
コマンドウルフは狼型のモンスター。闘犬並の大きさで、動きは素早く群れで行動する。牙や爪も鋭く、人間の首なんて一噛みで折れるだろう。
問題は数。おそらく何百といるだろう。数でおされたらヤバい。
いつでも退却できるように後衛を短冊ちゃんとウンディーネに頼む。
「みんな行くよ」
「うん」
「腕が鳴りますわ」
ボクたちは頑張った。サーヴァントも全力を出してくれている。しかし多勢に無勢。数の暴力には勝てなかった。
「撤退だ!」
「そうね!」
「仕方ありませんわ!」
後退。どこにする。ボクたちはコマンドウルフに囲まれていた。
「ボクとドライアドが活路を開く。三人は逃げて!」
「やだよ!こよりちゃんを残していくなんて」
「できませんわ!わたくしも短冊様も!!」
「こより様!!」
絶望的な状況だった。その時だ。前方で大爆発がおきた。
ドカーン!!!!!
「「「!!!!」」」
「ハーッハッハッハ!!!」
「この声は」
「ハーイ!コヨーリ!!ピンチデスカ!!」
「クリスか!」
「助けにキマシタ!」
クリス・ガーランド。ボクのライバルのアメリカ人。体も声も大きいけれど同じ中学三年生。軍人の両親の力を借りてここに来たのだろう。
バズーカに手榴弾。マシンガンを派手に撃ちまくるクリス小隊が横一列に前進する。何百といた雑魚コマンドウルフがみるみる減っていく。
「ボスまでの道はミーが開く!行けコヨリ!!」
「おうよ!!」
壇上にひときわ大きい灰色のコマンドウルフがいた。ボスで間違いない。
「みんな一斉攻撃だ!」
「行け!サーヴァントたち!!」
四体の精霊の必殺技を喰らったコマンドウルフは瞬殺だった。ボスを倒せば雑魚は消える。
ボスコマンドウルフが消えた後にサーヴァントカードが落ちていた。
「雷の精霊トールですね」
ドライアドが教えてくれる。
「ほいよ、クリス」
「いいのかコヨリ」
「お前にも死んでほしくないからな」
「ま、助けてもらった礼だと思ってくれ」
「イエス。カマン!トール!!」
ぴかっ
「雷の精霊トール見参。お呼びでしょ・・むぐっ」
クリスの野郎。トールが挨拶をしているのにキスしやがった。おい、やめてやれ。ジタバタしてるうえに泣いちゃってるぞ。
見ろサーヴァントと百合ちゃんたちも可哀想なものをみる目になってる。
明日からも騒がしくなりそうだ。
はい異世界シニアです。
クリス登場です。
かわいそうな雷の精霊トールの運命やいかに。
次回、学園ダンジョン。三日目(仮)。






