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第8話 自給自足計画

 

「7-00021のクエスト達成おめでとうございます!」

「おい! 聞いたか?」

「ああ……例の誰もクリアできなかった領主絡みのヤツだろ」


 冒険者ギルドに顔を出し、クエストの達成報告を行った。これにより冒険者ランクが一気に5等級まで上がったでの少し驚いた。


 等級は、その冒険者の報奨金の累計獲得額で上がる仕組みで、本来なら2等級が白金貨1枚。3等級が白金貨5枚。4等級は20枚。5等級が白金貨100枚と途方もない褒賞金を稼がないといけないが、たった一つのクエストで白金貨を100枚以上も稼ぐことができた。


 達成報告をした後、すぐに冒険者ギルドを後にした。

 理由としては、ひとつは懐が十分に温まったので、しばらく金稼ぎが必要ないこと。

 そしてもうひとつは……。


「へへっ旦那、金を恵んでくださいよ」

「そうそう、全部置いてったら命までは取らねーから、ゲヘヘッ」


 つい先ほどまで最低ランクの冒険者だった人間が大金を持っていると聞いたら、こういう輩が現れるのはまあ当然といえば当然だろう。


 4人組の男たち。

 その視線には冒険者ギルドの中にいた時から、すでに気づいていた。

 なので早々にこの路地裏まで誘き寄せた。


「白金貨1枚で手を打ちませんか?」

「は? バカかお前。とっとと白金貨117枚出しやがれ!」

「そうですか。なるべく事を荒立てたくはなかったのですが……」


 そう、穏便に済ましたかった。

 彼らはどこまでも欲深くたとえこの場で白金貨117枚を差し出したところで、もっと要求してくるだろう。


「しゃーない。指1本もらっとくか?」

「お断りします。あなたの腕で勘弁してください」

「あぁーん? ──ってあれ……おっ、俺の腕がぁぁぁ!?」


 私の左手に触れようとした男の右腕を斬り落とした。

 男は数瞬の間の後に自分の腕が床に落ちたことに気づいた。


「ひっひぃ! 化け物」

「待ってください! ヒーラーのところに持っていけば綺麗につながりますよ」


 逃げようとする男たちに落ちた腕を投げて渡した。

 今日中に治療すれば、傷痕もなくきれいに治せる。

 そのために小ぶりの短剣で男の腕を斬り落とした。

 これが呪剣の方なら、治癒魔法は効果がないため、二度とくっつかなくなるところだった。


 邪魔者も去ったので、旅支度を始める。

 一般的には旅の食糧としては保存の効く固いパンや干し肉、干し魚、乾燥豆などを揃えるが、私にはノートルゼム公から貰ったマジックアイテム【魔法の箱庭(マジックキューブ)】がある。


 広さは約10M(メトル)×10Mくらい。

 何もない平野になっていて、端の方は視えない壁で遮られていた。

 このマジックアイテムさえあれば、寝ている時や食事をしている時に魔物などに襲われる心配もなく、物も大量に運べる。だが私の最大の目的は……。


 自給自足生活。

 家を建てて、果物のなる木を植えて、畑を耕す。

 魔法の箱庭の中に何年だって閉じこもっていられるほど充実させたい。


 ただ10M×10Mだと家を建てたら、すぐにいっぱいになってしまう。

 そこで登場するのが私のスキル〈百の動力(マグニチャント)〉。

 力を百倍にしたり、物を百倍に増やしたりできる能力。ただし、生物を百倍に増やせないのと、並行でかけることはできないのが注意点として挙げられる。


 そのスキル【百の動力】を使ったところ、魔法の箱庭の面積が100倍に広がった。

 見渡すと広げる前はただの平野だったのに、川や丘、湖、林なども確認できた。

 これだけ広ければ畑を耕すのに不自由はしないと思う。

 ただひとつ気になるのは虫や鳥、魚といった生き物がまったくいないこと。なので、これらは自分で箱庭の中に持ち込まないといけないことがわかった。


 まずは露店の並ぶ市場へ行き、ミートラディッシュやグリムウィード、七色トマタなどの種を大量に買う。次にこのアースヴァルト特産のヴァルト麦の種を買い込む。


 それから街の外れにある鳥獣店に顔を出し、家禽用のビビット鳥を10羽買って、箱庭の中に放っておいた。


 あとは当面の寝床として野営用のテントや鍋、食器を買おうと冒険者専用商店に向かった。


魔法の箱庭(マジックキューブ)持ちで使い魔が白銀狼(フェンリル)……アンタ何者だ?」


 冒険者商店で買った物をその場で箱庭に収納していたら、背後から声をかけられた。

 まだ12歳くらいの少年。濃紫青(ラピスラズリ)の瞳で険しく釣り上げた視線を寄こしながら、背負っている剣の柄に手をかけている。


 肩が震えているハイビスが兎耳を前に折ったまま、私の前に出ようとするが、手で遮って視線で後ろに下がるように合図をした。その意図を汲み取った子犬化したマルがハイビスを守りながら後方にさがってくれた。


「そういうあなたは?」

「ロダン……第35代目勇者ロダン・シェイカーだ」

「私はアルコ。お見知りおきを、若き勇者殿」

「疑わないのか?」

「ええ、そのカラダに纏っているオーラが何よりの証ですから」


 湯気のようにカラダから立ち昇る金色のオーラ。

 かつて剣と拳を激しく交わした親友(とも)と同じ色をしている。

 しかし、アルコの知る勇者とは段違いにそのオーラは弱々しく、少年がまだ駆け出しだということを物語っていた。


「俺の質問にちゃんと答えろ!」

「答えろと言われてもただの冒険者なのですが?」

「嘘をつくな、他の人間は騙せても俺は騙せないぞ!」


 濃紫青(ラピスラズリ)の瞳が一瞬、金色に点滅した。

 魔物や魔族を見極める能力があるのか? アーテは使ってなかったがこんなこともできるのか……。





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