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第42話 集結

 

「アーバンテイン様、私のことはお気になさらずに」

「そうもいくまいて……大丈夫、儂に任せなさい」


 この娘を死なせてはアルコに顔向けできんわい。

 そうなると問題はあのドライグとかいうトカゲ。一気にあやつを仕留めんと時間が経てば経つほど、こちらがどんどん不利になっていく……。


「〈蒼炎装甲(ギア・サファイア)〉」


 今は亡き魔王を倒すために編み出したアーテ特有のオリジナルスキル。勇者である証、黄金の闘気……煌煌闘炎(サンブレイカー)を凌ぐスキルで、発動したからには一瞬で片付くはず、だった……。


「──ちっ、くそったれ。こんな老いぼれにここまで追い込まれるなんて」


 相手を圧倒しているものの倒すには至らない。儂の本気の剣を受けて恐ろしく自らを硬化させて攻撃を耐えている。まずいの、このままでは……。


 儂が時間をかけてしまうと兎人族の少女……ハイビスは一瞬にして白い渦に飲み込まれてしまう。──状況が刻々と悪くなっていく。だが、ここにきて転機が訪れる。


「あうん」

「ハイビス!」

「ふぁ~?」


 助かったわい。

 上位魔狼(アークフェンリル)のマルと、ハイビスと歳が近いもう一人の少女。そして岩晶主ソルダルが別々の扉から現れた。アルコのペット、マルが頼もしいことはもちろん知っているが、このタイミングでソルダルが来てくれたのは非常にありがたい。


 〈十六の巨岩像(コード・ジ・オルクス)〉──16体の巨岩兵を同時に操るソルダルの唯一無二の召喚系魔法で、特に相手が無数にいる場合にその効果を最大限に発揮する。


 マルはこちらが頼まなくとも、ちゃんとソルダルとハイビス、もう一人の少女の護衛を引き受けてくれた。これで、儂は目の前のドライグに専念できるというもの。


「しぶとさが売りのトカゲよ、そろそろ決着をつけるとするかの」

「くっ──貴様……」

「おっと、そノ辺にしてもらいましょうか」

「はえ……師匠、申し訳ないデシ……」


 儂が、本気でドライグを倒しにかかったところ、上の広場に新手が立っていた。


 あやつの名は、たしかリリモモ。長髪の魔法使いの男が、魔法の金環で首を絞めて吊るしているのはトリ。捕まってしまったらしく、ぐったりとしている。


「余計な真似をするな、リリモモ」

「負けそうにナって言うセリフではありませんネ」

「くっ──しかたない」


 ドライグが人質を取られて無抵抗になった儂を好き放題殴ってくる。大した打撃じゃ。蒼炎装甲を身に纏っていなかったら数発で再起不能になっておるところ。でもいくらスキルで防御力を底上げしていようとも着実に儂の身体は傷つき、死というモノが儂に着実に近づいてきた。


「フハハハッ、早くそノ豚野郎を殺すノです」

「どっちかって言うとお前の方が豚野郎だけどな?」

「──なっ!」


 あの者は⁉

 遠くで高笑いしていたリリモモからトリを抱えて奪い返した挙句、トリの首を絞めつけている金環を闘気で無理やり引き千切った若者。まさしく勇者特有の黄金の闘気〈煌煌闘炎(サンブレイカー)〉。この者が噂のロダンという若き英雄。


「アンタがあの有名な勇者アーバンテイン? 思ったより爺さんじゃん」

「ほっほっほっ、ぬかしおる(わっぱ)。大口を叩くならその長髪豚野郎をなんとかせい」

「ははっ、余裕余裕!」


 すこし感慨に耽っている儂に毒舌が飛んできた。


 ふむ、なかなか威勢が良いの。

 勇者ならこれくらいの意気は必要不可欠じゃ。

 なかなか見所のある後輩が育ってくれたわい。


 そんな中でさらに広場の端の扉から、二つの影が飛び出してきた。おお、あやつらは⁉


「トリの治療は私に任せてください」

「カタニア、ゾゾ、無事じゃったか」

「ええ、遅くなってごめんなさい」

「コクコク」


 マルとソルダルが円陣を組んで中の非戦闘員を守ってくれていたが、ここに治療要員も加わった。これなら儂と勇者ロダンで、あの幹部達を叩ける。


「我が八欲を身に窶せ──〈八華身(オクティエム)〉」


 頼もしい若者じゃが、まだまだ爪が甘いの。

 ロダンの実力はリリモモとほぼ互角だが、戦闘経験は向こうが上。老獪な駆け引きにまんまと騙され、あっさり魔法の詠唱を許してしまった。8体のリリモモが増殖するように現れると、5体がロダンに向かい、その間に残り3体が円陣中央にいる非戦闘員たちを狙って跳躍した。


 ゾゾが少女二人に向かってきた2体を斧で真っ二つにした。一体一体はそこまで強くない。ロダンに5体向かわせたのは陽動と足止め。本命は……。


「今、ぶち殺して差し上げますからネ!」

「私もずいぶんと見くびられたものです……ねっ⁉」

「──っ⁉」


 リリモモの本命はトリの治療に専念していたカタニア。

 ちなみに儂ら第32代勇者パーティーのメンバーはカタニアを後衛だと思っている者は誰一人いない(・・・・・・)。なぜなら……。


「ヴォギョッ! 俺ノ美しい顔が……」

「反回復魔法を使いました。あなたのその歪んだ性格通りに顔も整形して差し上げましてよ?」


 聖女なんて呼ばれているから、世間一般ではよく勘違いされるが、実はカタニアはバリバリの武闘派。素手で闘気無しなら儂でもボコボコにされてしまったりする……。


 カタニアの上段から振りかぶった鉄拳を喰らって、顔が半分以上地面にめり込むリリモモ。カタニアがその姿を見下ろしながら、皮肉を口にした。


「おっ、おノれ! 許さん⁉」

「お前の相手は俺だっつーの!」


 右半分の顔が歪んだリリモモは、もう一度カタニアに襲い掛かろうとしたが、背後からロダンに飛び蹴りを浴びせられ、白い顔無しなどを数十体巻き込みながら壁まで吹き飛んでいった。


「では心おきなく……」

「ぐああああああああああっ、ちくしょぉぉぉぉおおおお⁉」


 最大出力の蒼炎装甲(ギア・サファイア)

 スキルを発動しているのだと思うが、ドライグの身を包んでいる硬い鱗を料理をするように剣を浴びせて剥ぎ落していき、最後にドライグの頭に蹴りを入れて、勝負がついた。ロダンの方もリリモモに魔法を撃つ隙を与えないよう、近接戦に持ち込み、儂より数瞬遅れてリリモモを倒した。


 さて、あとはまだまだ数が残っている顔無しどもの始末のみ。マルとソルダルに任せっきりだったが、儂やロダン、ゾゾも加わって時間はかかったものの何とかすべての顔無しを倒すことができた。


 ちょうど顔無しどもを倒したと同時に周りの空間至る所にヒビが入り、魔宮の中から全員放り出された。


 ここは魔王城の謁見の間?

 賢者カルテタバルが彼の配下ふたりとともに倒れている。

 そして、玉座の前に背を向けている鎧姿の者は気配からしてアルコだとわかった。






 だがその様子が明らかにおかしかった……。





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