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第37話 一夜

 

「アルコ様、あれは……魔王軍ですか?」

「いえ、たぶん違うと思います」


 3日前にイジス女王国の女王ネフェルデアの許可を得て、バイナン王国側へ国境を超えた。そこからシェアローン帝国との北に伸びる国境沿いを進んでいたところ見たことのない正体不明の軍に遭遇した。


 ロダンは命を狙われているため、基本的には箱庭の中で待機している。月が半分欠けた夜なので、若干暗い。だが、天才発明家アシュレの発明品の一つ、暗視望遠メガネという筒状のものを覗くと、薄暗い遠くの場所をすぐ近くのように見え、かつ昼間のように見渡すことができた。


 そしてこちらは発見されるのを極力防ぐために私のスキル百の動力(マグニチャント)で身体を10分の1のサイズまで小さくなり、正体不明の軍を草むらに隠れてやりすごしつつ、観察している。


 私と同じく身体を小さくしたハイビスが私のそばで、なぜか私の腕につかまりながら話しかけてくる。いや、そんなにくっつかれるとお互い動きにくいんじゃ……。


 それにしてもアレ(・・)はいったい何だろう?


 真っ白な体で、のっぺりとした魔族でも魔物でもない(・・・・・・・・・・)生き物。目も鼻も口もなく、これが兵士だと本当に呼べるのだろうか?


 巨大な白いうねりが平原を流れていく。

 この不気味な生き物を率いてるのは、見覚えのある男だった。


 タイタル聖王国とイジス女王国の国境付近で遭遇した左腕が2本ある男……。周囲を気にしながら行軍を率いているので、見つからないようにより草むらに深く潜り身を隠す。


「待ちな!」


 不気味な生物たちの後方からとんでもない大声量で、行軍を止めた。


「今日はここらで休憩だ」


 呼び止めた女性は、上半身だけならどこにでもいる人間の女性にしか見えない。しかし、下半身は異常に盛り上がった筋肉に包まれており、脚力が常人の比ではなさそうなのが見て取れる。


 困った。

 この場から動けなくなってしまった。

 どんなに身体を小さくしてもあの大量の不気味な生き物の間を抜けるのは至極困難。かといって、いったん後方に下がるのもリスクがつきまとう。


 やむなく自分たちもここで一泊することにした。魔法の箱庭を軽く埋め、上からダミー用の土や葉っぱをかけておく。


 その状態でハイビスとふたり箱庭の中に入った。



 ──帰ってきてしまった。


 この1か月、ハイビスが事あるたびに私のベッドに潜り込んでくる。


 私が骨だけじゃなく受肉した姿をみたハイビスは、聖女カタニアやボジョル司教、コトオドのように扱いが変わるかと恐れていたが、そんなことはなくむしろより積極的に私の身体を求めるようになった。


 まあ、身体を求められるといっても、最後までしていない。皮膚が無いせいか外部の刺激に痛みが伴うことを知ったハイビスを私が痛くないように優しく丁寧に舌だけを這わせて私の色々なところを舐めて奉仕をする。まあ色々なところといえば色々なところなのでこれ以上は私の口から恥ずかしくて話せない。とにかく夜の生活で私の頭がおかしくなりそうで、とても憂鬱なのである。


 夜中なので誰も起きていない。

 智獣たちが造ってくれた木造の家に入る。

 家は3軒あって、アシュレの研究室と家。それとは別で私とハイビスの家がある。なぜこういう振り分けになったかというとアシュレとハイビスが手を組んで、このような配置となってしまった。


 家には浴槽があり、アシュレの発明で水を家まで汲み上げて引き入れてくれるポンプと水道管なるものが導入されたので、ある意味、貴族のような生活なのかもしれない。


「アルコ様、お背中を流します」


 ──っ! ハイビスが来た。


 ハイビスが、食器の片付けをしている間にすばやく入浴を済まそうとしたのに、彼女のスキル人形俜(パペティア)でマリエッタとエミリーが食器の片付けをしてくれるのをすっかり忘れていた。


 ただ、今の私には皮膚が無い。背中をゴシゴシと洗ったら激痛にさらされるので、水を背中から掛け流してくれるだけ。


 それだけのはずだったのに……。


「ぅひゃっ!」

「どこか痛いですか?」

「いえ、痛くはないのですが、なんかムズムズして……」


 石鹸を手に付けて、私が痛くならない程度にやさしくそっと撫でるように背中を洗ってくれている。その手の這い方がなんとも艶めかしくて、ついつい変な声が出てしまう。


「前も流しますね」

「いえいえいえいえ、前はだいじょう……ぁっ⁉」


 ハイビスの両手が私の両脇から前にぬるりと前に出てきて、私の首から胸、股関節あたりを(まさぐ)るように洗っていく。


「まぁ……アルコ様、ココ(・・)が苦しそうです! かわいそう」

「──んっ」


 そこは、ホントダメ!

 身体がふわふわして力が入らない。


 私の屹立してしまった秘部を両手に乗せて執拗に念入りに洗われる。


 あっ……。


 冥界の騎兵である私の頭上で天使様が満面の笑顔で私を見下ろしている。


 幻覚を見るくらいの出来事が起きて、呆けている内にいつの間に入浴は終わっていて、気が付くと裸のままベッドで朝まで寝ていた。


 ハイビスは……。


 隣で寝ている⁉ 

 それも裸で……。









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