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第13話 白日の下の陰謀とネズミのワルツ

「異議あり!」


 ヴォルフガング中佐の凛とした声が、王宮の大ホールに響き渡った。その瞬間、全てのざわめきが止まり、まるで時間が凍り付いたかのように、全ての視線が彼に集中する。私の指も、プロジェクターのスイッチを押す寸前で固まっていた。


(ヴォルフガング中佐…! なぜ、このタイミングで…!?)


 国王陛下が玉座から身を乗り出し、厳粛な声で問うた。

「ヴォルフガング中佐、これは一体何の騒ぎじゃ。説明を求めますぞ」


「はっ!」ヴォルフガング中佐は国王に深々と敬礼すると、〇〇侯爵を鋭い眼光で射抜いた。「〇〇侯爵に、国家反逆及び武器密輸の重大な容疑ありと、ご報告申し上げる次第であります! 我々は数日前、紅灯区の倉庫にて、侯爵家の紋章が押された武器多数を発見。これらは不正に蓄えられたものと確信しております!」


 〇〇侯爵は一瞬顔色を変えたが、すぐに芝居がかった驚きの表情を浮かべた。

「な、何を馬鹿なことを! 武器密輸などと、この私に限ってありえませんぞ、陛下! その紋章とやらも、何者かが私を陥れるために偽造したものに違いありませぬ! このヴォルフガング中佐こそ、政敵ジャルジェ公爵と通じ、私を失脚させようと企んでいるのでは!?」


 老獪な〇〇侯爵は、逆にヴォルフガング中佐に疑惑の目を向けさせようとする。ヴォルフガング中佐は眉一つ動かさず反論しようとするが、武器の現物がない今、決定的な証拠に欠けるのは否めない。ぐぬぬ…と中佐が唇を噛んだ、その時だった。


(今しかないわ!)


 私は意を決し、『真実を映すミラクル☆プロジェクター(β版)』の三つのスイッチを、ミラベルの「赤と青を同時に、それから黄色をゆっくりと…」という言葉を必死に思い出しながら操作した! …たぶん、これのはず!


 プロジェクターが怪しげな起動音(ゴゴゴ…ピロリロリン♪)と共に光を放ち、大ホールの白い壁に映像を投影し始めた! …が、そこに映し出されたのは、なぜかミラベルの隠れ家でチーズをかじりながら陽気に踊る、巨大なネズミのドアップ映像だった! しかも、どこからか軽快なワルツの音楽まで聞こえてくる!


(ミラベルーーー!!! やっぱり間違えたじゃないのぉぉぉ!!! サプライズ映像ってこれのこと!?)


 会場は一瞬、静まり返り、次の瞬間、「???」という困惑と、「何だあれは…?」「芸術か…?」という囁きに包まれた。国王陛下もポカンとしている。私は顔から火が出る思いで、慌てて別のスイッチの組み合わせを試す!


 すると、ネズミのワルツはブツリと途切れ、次に映し出されたのは…!

 ――武器倉庫の内部! 山と積まれた木箱に押された〇〇侯爵家の紋章! そして、あの帳簿のページが、一枚、また一枚と鮮明に映し出されていく! さらに、例の秘密会合の盗聴記録が、ミラベルお手製の分かりやすい(?)テロップと、一部吹き出し付きのイラスト(悪党たちの顔が妙にリアル)と共に、壁一面に展開されたのだ!


「こ、これは…! 武器密輸の動かぬ証拠ではないか!」

「あの会合は…間違いなく〇〇侯爵の声!」

「国家転覆を企てていたというのか…!?」


 会場は今度こそ、本当の意味で騒然となった。〇〇侯爵の顔は、先ほどのネズミ映像を見た時以上に蒼白になり、わなわなと震えている。


「ご覧ください皆様! これが、〇〇侯爵とその一派が企む、恐るべき陰謀の全貌でございます!」

 私は変装した侍女の姿のまま、しかし、背筋を伸ばし、凛とした声で叫んだ。タペストリーの影から一歩踏み出す。


「何奴だ! あの女を捕えよ!」

 〇〇侯爵が金切り声を上げる。彼の指示で、派閥の貴族や護衛の者たちが私に殺到しようとする!


(まずいわ…!)


 私が身構えた瞬間、ホールの巨大なシャンデリアが、グォングォンと不気味な音を立てて大きく揺れ始めた! まるで意思があるかのように!

「うわっ!」「地震か!?」

 貴族たちがパニックになり、私に迫っていた手下たちの足も止まる。見ると、ホールの隅の柱の影で、カレルが壁に埋め込まれた何かの制御盤らしきものを楽しげにいじりながら、私に向かってウィンクしている。


(あ、あの男…! また何か余計な…いや、助かったのかしら!?)


 さらに、どこからともなく「火事だー! 厨房から火の手がー!」という叫び声が響き渡り、会場の混乱は頂点に達した! (これは…リナが手配してくれた陽動ね! ナイスタイミング!)


 この混乱の中、ヴォルフガング中佐は冷静に、しかし力強く叫んだ。

「今だ! 〇〇侯爵とその一派の身柄を確保せよ! 抵抗する者は容赦しない!」

 彼の号令一下、武装した守備隊の兵士たちが、狼狽する〇〇侯爵派閥の貴族たちへと殺到する。次々と映し出される不正の証拠と、シャンデリアの怪しい揺れ(まだ揺れてる!)、そして火事の知らせ(誤報っぽいけど)に、彼らはもはや抵抗する気力も失っているようだった。


「ま、待て! これは罠だ! 私を陥れるための巧妙な…!」

 追い詰められた〇〇侯爵は、顔を真っ赤にして見苦しい言い訳を喚き散らす。しかし、その言葉を信じる者は、もはや誰一人としていなかった。


 国王陛下が、厳粛な面持ちで玉座から静かに立ち上がり、深く響き渡る声で一同を制した。

「…静まれい。全ての証拠、そして今の状況、朕はしかと見届けた。〇〇侯爵、そなたに申し開きの言葉はあるか?」


 万事休す。〇〇侯爵は、その場にへなへなと崩れ落ちた。

 貴族会議の場での陰謀暴露は、ひとまず成功したと言えるだろう。


(でも…まだ終わっていないわ。月蝕の夜の襲撃計画が、まだ残っている…!)


 私の視線は、崩れ落ちる〇〇侯爵の背後、静かに佇むカレル、そして、兵士たちに指示を出すヴォルフガング中佐へと注がれていた。この戦いは、まだ始まったばかりなのだ。


(第13話 了)

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