表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怠惰に過ごしたい魔王さまの異世界ダンジョン生活、勇者付き  作者: 白瀬 いお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/23

21.魔王さま、ダンジョンを稼働させる

 王都に移民を受け入れてから半年が経過した。彼らの生活も安定し、教育についても大人も子供も最低限の読み書き計算が出来るようになったと報告を受けている。


 本来ならば、大人たちにももっと時間をかけて学ばせてやりたいところだが、現状維持では外部エネルギーの圧倒的な不足が続いたままとなってしまう。それではダンジョンマスターたるアズに伸しかかる負担を減らすことは出来ないので、次の段階に移ることとなった。


 それ即ち、ダンジョンの本格稼働——欲に駆られる者たちを誘い込み、外部エネルギーを補給すること。それと並行して移民の受け入れも続けて行くが、それはサヨとその系譜の者たちへ任せることとなっている。


(もう二年、いや、三年は教育に時間をかけたかったが……、仕方あるまい)


 大人たちには労働を、子供たちには引き続き教育を。現在では街人たちの職業適性を見つつ、各々のやりたい仕事に就かせているところだ。アズの生み出した職人系の者たちが早速指導に当たっており、既に成果を出している者さえいるという。


 今現在材料として使っているものは、アズの魔力から作り出されたものだが、それもダンジョン内で生産出来るものはして、出来ないものは貿易で手に入れる必要がある。植物は栽培をして、鉱物は王都階層に追加で設置した鉱山から掘り出せば良い。


 鉱山に眠る鉱物は、外部エネルギーを使うことで補充することが出来る——枯れることなき資源だ。もし他国に知られれば、死に物狂いで奪い取りに来るだろう。


(このダンジョンは私の国も同然。そのようなことは決してさせない)


 掘り出した鉱物をそのまま輸出するつもりはなく、全て加工してから商業都市を介して売り払うつもりだ。当然安値ではない——相応の値段をつけて、希少なものだと印象づけ、実際流通させる量も抑えて行く。


 布や服についてもそうだ。商業都市でしか手に入らない逸品、という価値をつけてやることを第一の目標にする。


 商業都市は、ダンジョンの始動と共に既に作ってあるものを平原へ転移させることになっているので、今は影も形もない。


「お。魔王さま、ダンジョンの用意、出来たっぽい」

「分かった。シュネー、階層守護者及びダンジョンに関わる者を全てここへ」

「かしこまりました」


 最後の階層である第百層の改装が終了したと、始がウインドウを開いて見せて来る。それを確認して、確かに完了していることに頷いてから、シュネーへと命令を出した。


 それに頭を垂れてから、目を瞑る彼の足元より、小さな人の形をした影が七体飛び出し、一斉に転移魔術で姿を消して行く——彼らがシュネーの声を各階層守護者とダンジョンのあちこちに散らばる者たちへ届けてくれる。


 やがて声が届けられたのだろう者たちがどんどん玉座の間へと転移して来ると、皆アズの前へと跪き、頭を垂れてそのまま静止した。全ての者が揃うまでさほど時間を要することはなく、皆の姿があることを確認してから玉座より立ち上がった。


「皆、よく集まってくれた。私から告げることは一つ——これより、ダンジョンを稼働させる。それに伴い、多くの物がこの地へと足を踏み入れるだろう。欲に塗れ、希望を抱き、成長する未来を夢見ながら……。だが、その手助けをしてやる必要はない。各々、自分の役割は自覚しているだろう。理解しているだろう。それを全うしてくれれば良いのだ。問題があれば、不安要素を見つけたら、すぐにシュネーへと報告を上げるように。良いな」

「はっ!」


 高さも声量もまるで異なる声が、重なって玉座の間へと響く。もっと長く言葉を続けることも出来た。だが、それは必要ない——これから忙しくなるのだ、それまでの僅かな間を各々の準備に充てさせてやりたい。


 全員の姿をきちんと見て、後程各階層守護者の元へ出向こうと決めてから、アズは言う。


「では、解散」


 その言葉に従い、皆が一斉に転移魔術を発動する——頭を上げて、王の微笑みをその目に焼きつけながら。


 一気にがらんとした玉座の間をじっと見てから、玉座へと飛び乗り座る。これで周知は出来た、詳しくはこの後すぐに配られる書面に書かれているので、各々それを確認してくれることだろう。


 次に行うのは、商業都市の移転だ。突如として都市が一つ現れれば、周辺国も異変を察知して様子を伺いに来る。そこで友好的な態度を取った国には同じように、敵対姿勢を見せるのならば迎撃姿勢を、鏡写しのように対応するつもりでいる。


(商業都市を治めるのは私ではなく、シュネーの系譜の者だがな。基本的に表へ出るつもりはない)


 アズがやらねばならないこと以外を全て任せるべく、有能な家臣たちを作り出したのだから、ここでその能力を発揮させなくてどうする、と背もたれへ身を預けながら天井を見上げた。


 忙しさも一過性のもの、もう暫くすれば自堕落に過ごせるはずだ。昼頃までベッドでダラダラ過ごして、食事を終えたら本でも読んで、気が向けば散歩もして、またゆっくり過ごして寝る——きっとその夢を叶えてみせると心の中で拳を握る。


「……さて。ワイズ、商業都市を平原へ転移させてくれ」

【是。これよりダンジョン第百一層をダンジョン外へ転移致します——周囲、クリア。障害物、なし。開始まで三、二、一。——完了】


 開いていたダンジョンの階層が表示されたウインドウから、第百一層が消える。それから遅れて、シュネーが外へと待機させていた部下より届いた「転移完了確認」という報告をアズへと上げた。


「平原への商業都市転移、確認されました。これより配下を派遣し、稼働を開始致します」

「ああ、頼んだ。暫くは暇だろうが、時期に忙しくなる……そうだ、あれも消しておくか」


 そう言って、パチンと指を鳴らす。それは結界解除の魔術、周辺国がこの地へと施していた封印とも呼べるそれをただ指を鳴らす動作一つで消し去り、新たに守りと監視の魔術を施した。


 魔術式の中にいるアズを慕う者たちへの守護と、それを通り抜けた者に対するマーキングだ。


「シュネー」

「はい、我が王。魔術式は正常に作動しております」


 監視の魔術は魔術陣をハンスとグレーテに設置させたので、これより先はアズが何もせずとも魔力を空気中から補充し作動し続ける。そして魔術式の作動チェックとマーキングされた者の不審行動がないかの確認を、二十四時間交代制でし続ける部隊も用意していた。


 尤も、あくまでも念のためのものであるので、使われないに越したことはない。こうして、ダンジョンの稼働は静かに、されど盛大に開始することとなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ