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 まずは状況の確認から始めよう。まずは体の状態だ。背中を打ち付けたはずだが、痛みは存在していない。目が覚めた時は感じたはずなのにだ。一時的な精神的ショックのせいだと考えることもできるが、それを否定するものが一つある。起きた際に確かに右腕には瓦礫による決して浅くない切り傷と出血していることを確認した。だが今現在右腕に残っているのは乾燥していない血液のみで傷跡は目視と触れた際に感じることができない。


 あり得るものとしていつか考えられるものがある。一つは自分の再生能力が上がったということ。二つ目は流星群を眺めていた時間が自分が思っている以上に長かった。そして最後、自分の中で一番確信に近いものである流星群にからのなんらかの恩恵。まず一つ目の仮説を調べるのが簡単だ。周囲は瓦礫だらけではあるが元住居である。包丁位簡単に見つけられるだろう。さあ探索を始めよう。


 不安定な足場ではあるが軽いものであれば小さな瓦礫であれば簡単にどかせる。まず足場の安定してそうな道路を目指すことにするか。グラグラと揺れる不安定な瓦礫の山を足元を物色しながら進む。足元には砂ぼこりの原因となった砂が降り積もっている。コンクリートの破片の瓦礫と砂しか周りには見えず、元あった大きな建物は確認できない。確認できるのは家の前にあり、よく利用したコンビニエンスストアであろう建物である。


 とりあえずコンビニをめざそう。道路まで出て元いた瓦礫の山を振り返る。包丁位簡単に見つけられると考えていたが、自分の暮らしていた部屋が一階だったことを完全に失念していた。時間をかければ見つけることはできると思うが目の前にコンビニがあるのだ。そこなら何かあるだろう。コンビニへ歩きながら周囲を見渡す。コンビニの周りだけ不自然に倒壊してないのは裏手に学校の馬鹿でかいグラウンドがあるからでろう。ほかにも何か要因があるのかもしれないが専門家ではないので考えるのは無駄だ。


 コンビニに入る。倒壊の危険性もあるが「危険だから行きません」で倒壊して何も得られないが一番バカだ。店内を見渡すと人らしきものは見つけられない。だれも見ていないし、俺の生命の危機だ。火事場泥棒だってきっと許されるだろう。ドリンク売り場から2リットルの水を取り、レジの方向に行く途中でライターをポケットに五個ほど詰める。レジに流れるように入りたばこのカートンの置いてあるところから自分が愛煙している銘柄を取りそのまま何事のなかったかのようにコンビニから脱出する。これで俺も犯罪者かぁ。と感慨深く思いながら先ほど奪取したカートンの包装を破り、たばこをひと箱取り出す。新品の箱から切り口のついた部分から引っ張る。慣れた手つきではがし、解いた封のビニールのごみを手の内に入れたまま片方の銀紙を切り取るようにはがす。手の内にあるごみをそのまま地面へと話し閉じたままの銀紙のほうをトントンと叩く。振動により出てきたたばこをつまみ取り、そのまま口へ運ぶ。ポケットからライターを取り出し火をつける。一口目の煙を味わうように深く吸い込み、吐き出す。そして一言。


「ただで吸うたばこは最高にうめぇなぁ!!」


 我ながらゴミみたいな思考である。思考がクリアになっていくのを感じる。気が付かなかったがストレスがかかっていたのだろう。色々と思考を巡らしそうになるが、とりあえず持っているたばこに集中することにした。


 火のついたたばこを足もとに捨てようとしたときに、自分で考えた先ほどの仮説の検証ができることに気が付く。手のひらでいいかと考えそのまま赤く染まった先端を親指の付け根あたりに押し付ける。


「あっつ!!」


 反射的にたばこを落としてしまう。足元にあるまだ火のついたたばこを近くにある瓦礫で押しつぶすように消す。やけどした手のひらには丸いやけどの跡が残っている。数分ほどやけどの跡を眺めてみるがすぐ治る気配はない。無駄に痛いことをしただけである。裸足で出てきたため足は傷だらけになっており、わざわざやけどする必要もなかった。ほんとに無駄であった。


 行く当ても決めないまま歩き出す。立てた仮説の一つ目は否定されたわけだが、二つ目は検証しようがない。三つ目の検証に赴こう。隕石が降ってくるというアナウンスとあの爆風。隕石の落下地点は近い。一足先に確認して回収すれば金持ち間違いなし。方向はわかる足元の砂の流れから風の北方向が大雑把ではあるがわかる。そっちに行けば、きっとあるだろう。歩いていた道とは真反対だったけどな。


 二時間くらい歩いたか?まったく終わりが見えないどこに落ちたんだよ。山のふもとまで来てるぞ。てかいつになったら朝日上るんだ?月の位置は変わっている気がしない。案外二つ目の仮説が正しかったりして。三叉路についたな。どちらに行こうかな。棒とかもないし運試しもできねぇしなぁ。あぁそういえば左の道の先に神社があったな。そこの気がするな違ったらまた歩けばいいしとりあえず神社に向かうか。


 無駄にきれいに植林された桜の木が両脇に並ぶ道を歩く、不思議なことに桜の木は隕石の衝撃や被害を負った形跡がなく気持ち悪いほどきれいに整っている。瓦礫や砂の道を裸足で歩いていたため瓦礫は疎か小石一つ無い石畳は大変ありがたい。鳥居の前に立ち傷一つない赤い柱を感慨深く見上げる。口をあけボケっとしていると突然甲高い音が耳を劈く、耳鳴りに近い音ではあるが違う外部の音はこもっておらず、音ではない何かを聞いている感覚である。音が理解できる思念に変わる。


『一つ目の規律(ルール)が定められました。内容が開示されます。』

『前世界から生存した種、またその子孫が新たなる次元に至るための規律(ルール)

『・恩恵(ギフト)として前世界から生存した種、またその子孫(以降前種とする)に特異技能(スキル)の付与。付与に伴い「特異技能獲得のための条件」、「付与後、特異技能への一定の理解」なども追加されます。』

『・厄難(レヴィ)として「筋力、器用さなど前世界でのゲームなどで用いられていたいわゆるステータスと呼ばれるもの数値化」、「規律の変更」などが禁止されます。』

『・今後の規律の追加の際先に定められた規律に抵触する規律は定められません。また厄難に伴い一つ目の規律前種が新たなる次元に至るための規律を含めこれ以降の規律は定められた以降の規律の変更はできません。』

『・規律の策定に伴い生存する種に規律目録(ルールブック)が配られます。規律目録からは自身の特異技能、階位、加護などの確認が可能です。』

『・すべては進化のために』

 

 理解できない現象を理解できる自身の異常さに気が付いてしまう。この神社までの道を歩いてくる途中、死体や血痕などが全く存在しなかったことがこのアナウンスに関係していると理解できてしまう。このルールというものを理解できないものは進化に至れないと、スタート地点に立っていないと判断されてしまったのだろう。ルールブックを得て明確に感じる進化への道はこの階段を上った先の神社に存在すると理解できる。今まで常識という鎖で抑えられていた好奇心という獣が顔を出し始めているのを感じる。向かおうあそこへ。


 鳥居の真ん中を通り一人の階段を神を祀る社に向かおうとしている。だがその態度はとても神を崇めるものの顔とは言えず、男の顔は獣のような狂気の笑みに染まっていた。


 門をくぐり中に入る。するとそこには社は存在せず、大きな穴が広がっていた。その大穴のそこは見えず、ただ不思議なことに門のから続く道の先には下へと続く階段がある。このまま階段を下ろうとしていた足がふと止まる。


「やることあんだろ。」


 その独り言とともに流れるような動作でポケットからたばこの箱を取り出し、振動を与え、飛び出したたばこをくわえる。同時に取り出していたライターで火をつける。手に持っていた箱とライターを片手で無造作にポケットに詰め込んだあと口からたばこを離し男がつぶやく。


確認(チェック)


 その言葉とともに目の前に分厚い本が現れる。本は空中に浮いている。勝手に表紙が開き、目次が開かれる。目次には規律と書かれたものとその他の項目がありその他の下に特異技能などと書かれた文字が存在している。たばこを口にくわえ特異技能などと書かれた文字に触れる。本は勝手にパラパラと開かれてゆき、最後のページが開かれる。そこにはこう書かれていた。


 名前:奈偽 心月

 種族:人

 階位:

 職業:

 特異技能:

 加護:

 

 名前しか載ってねぇ。そもそも職業ってなんだよ。そんな話乗ったか。のってないなどこ探してもない。特定の行動をするとスキルが付与されるってことは職業もそれ絡みか?考えてても埒が明かない。そもそも規律が種族進化のためのなんちゃらだったし、その恩恵であるこれもそのためのものなんだろう。たぶん。実用化するのはこの先になるだろう。規律目録を眺めていてわかったことがある。この大穴はダンジョンらしいというのもダンジョンにもいくつか型があるらしいいま現世にできているのが大穴型、塔型の二つらしい。この大穴型の特徴として何がが落ちたような大きな穴とその穴に続くための階段が存在するとのこと。まんまこれじゃねぇか。ただ中のことは一切書いていないため自分で確かめろということだろう。この本からは「進化のための入り口は用意した。あとは自分で道を作れ」という意思をヒシヒシと感じる。


 この先なにが起きるのかわからない。未知が敵だ。いまこの状態で闘えるのか?右のポケットにはライターが5個と空いたたばこの箱、左のポケットにははみ出た状態のたばこのカートン。そして足元には2リットルのペットボトル。捨てれるものは捨てていこう。たばこのカートンだ。名残惜しいが仕方がない。一箱いや二箱新品のものを持っていこう。最悪戻ってくれば回収はできる。水のペットボトルは神社に来る途中の道でほぼ飲み干してしまった。もう飲んでしまおう。空になった容器は何かとべ便利なはずだ。持っていこう。ライターはいくら持ってても便利だから持っていこう。準備はできた。進むべき道は決めた。あとは意志だけだ。何になりたいのか。なにを目指すのか。目指すは一番。最強でも最恐でも最高でも何でもいい。俺だけの道を進んでいく。世界は変わった。俺の好きな世界になったんだ。最高の日々を。日常を。

 

 さぁいこうか。



持ち物 たばこ約3箱 空の二リットルペットボトル ライター五個 

とてもじゃないですけど、勇者の剣の代替品にはならないですよね。

ようやくダンジョンです。

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