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初投稿です。
20X1年4月30日
『…だから来年の7月は歴史の転換期と考えているんだ。多くの民族がこの時期…』
薄暗い部屋の中、男の持つスマートフォンから音が漏れ出ている。その画面を見る男の顔は苦笑しており、陰謀論といわれる動画を真剣に聞き言っているようにはとても見えない。暇つぶしの一環としてその動画を見ているように見えた。
ベットの近くにある窓から光が差し込み、男の持つスマートフォンに画面から出される光とは違ういわば自然光といわれるものを反射させる。その光に気づいた男に世界が朝になったことを知らせる。男はスマートフォンの画面を指で撫で時間を確認し、ため息とともに行動を開始する。半分寝たような姿勢から上体を起こしベットから降りる。立ち上がった後、決して良くない姿勢で長時間いた代償を払うかのように両腕を伸ばし小さくうめき声をあげる。その行為に満足した後、クローゼットにかかっているワイシャツとスーツを手に取り、身支度を始める。ネクタイを結ぼうとしたときに何かに気づいた男はベットに無造作に投げられていたスマートフォン手に取った。男はまた動画を見始める。ただ先ほどとは違い音は出ておらず画面の中にはネクタイの結び方を見せているような動画である。その動画のおかげで結び方を理解したのかスマートフォン再びベットの上に投げ、今度は戸惑うことなく身支度を終えた。
男は机に置いてあったパソコンを開き、慣れていない様子でメールを開く。そこに添付されたURLからビデオ会議アプリを開く。椅子に座り緊張した様子で待っていたが、二分もしないうちに限界が来たのかため息とともに立ち上がる。すぐ近くの扉からキッチンのほうに行き、換気扇のしたにおいてある踏み台を椅子代わりにそこに座る。台所に置いてあったソフトタイプのたばこの箱を手に取り慣れた手つきで口にくわえ、近くに置いてあったオイルライターを手に取り、フリントホイールと呼ばれるものを親指で回転させ火花を散らす。着火した炎をたばこの先端に近づけ火をつける。煙を味わうかのように口内に溜めたあと、ゆっくりと体内に染み渡らせるかのように肺に空気を取り込んでいく。肺に入れることのできる空気に限界を感じたのか今度は逆にゆっくりと煙を吐き出していく。一度肺に煙を入れたことにより緊張から解放されたのか換気扇が回転していないことを濃い茶色に変色した換気扇のフィルター越しに理解し、電源をつける。何度かたばこを嗜んだ後パソコンをつけた部屋から音声が発生していることに気づき、たばこの火を慌ててドラム缶のような形状の灰皿に押し付ける。パソコンの前の椅子に戻り、カメラとマイクがオンになっていないことに安堵する。先ほどまでとは違い落ち着いた様子でカーソルを使いカメラをオンにする。画面越しに女性の声が聞こえる。
「本日の一次面接を担当させていただく……」
「初めに軽い自己紹介をお願いします。大学名と学部、学科、名前のみで構いません」
その声を聴き男は緊張を見せないように話を始める。
「はい。私は……大学、……学部、経済学科の奈偽心月といいます。本日はよろしくお願いします。」
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大学にある喫煙所で心月と話す声が聞こえる
「で?どうだった?面接」
「あ?だめだなたぶん。面接官途中から俺のこと見ないものにしてたし。」
男はその言葉に笑う。心月はその様子を恨めしそうに睨んだあとため息をついた。
「お前はもう決まっているからって、はぁなんでもないわ。就活始めんの遅かったかぁ。もう最悪バイト先に入れてもらおうかな。なんならフリーターでもいいか」
「もったいねぇ。大学行ったくせに」
「お前は逆に就活は終わっても卒業できるかわからんからな。まじで気をつけろよ」
「それはねぇ、そうなんだよねぇ。そういえばあれ聞いたか?…」
そんな他愛もない会話をし日々は過ぎていった。
20X2年3月9日
俺の就活は中小企業の営業ということで落ち着いた。面接は形だけのものであっという間に内定をもらった。まぁそうであろう私立大学と同じ経営グループの企業であれば人となりや生活態度などもある程度把握できるものである。就活が終わった後は激動の日々であった。バイトで稼いでは友人との旅行や飲み代に消える。時間があればバイト、時間を作って友人との旅行の繰り返しであった。今まで県外に出ることをしてこなかったため見る景色は、とても新鮮で親に連れてきてもらうことと自分で来るのでは同じ景色であっても全く違うものに感じられた。今でもインドア派ではあるがこの経験のおかげか旅行も悪くないと感じることができるようになった。充実した大学生活であったと思う。卒業式を終えたのがついさっきのことだ。ゼミのメンバーとゼミの先生での飲み会があったが幹事を任された去年の飲み会に誰も参加しなかったせいで行った面倒な作業が脳裏にフラッシュバックし、これに参加すると確実に愚痴をこぼし祝いの席を台無しにしてしまうと予想ができたため不参加にした。じゃあ今何をしているのかというとバイト先である居酒屋でいつもつるんでいた友人3人と飲んでいるというわけである。
和室のような座敷に座布団がしいてあり扉は襖である。いわゆる個室の居酒屋である。店内は禁煙であるにも関わらず、心月の部屋の卓上には灰皿が置いてある。これは勤めているもの特権ともいえる。
心月が口を開く
「この一年いろいろなことがあったなぁ。」
「確かに。なんだっけパワースポットだからとかいって心霊スポットに連れていかれたときはしんだとおもったね」
「まじですまんかった。あんなことになるとはだれも思わんって。心霊スポットでホームレスと鬼ごっこね」
「まじで殺されるとおもった。心月がキレて逆に大声出して追いかけ始めたなかったらどうなってたかわからん」
「あれは仕方なかったんだよ。あのジジイが小馬鹿にしたような笑い声をあげてたのが悪い」
「追いかけ始めてからホラーからコメディに変わったしね」
「おれ追いかけ始めたの見たとき頭ん中であの曲流れたわ」
「わかる」
「うるせぇ!おまえらだって…」
懐かしいと呼べるほどまで昔のことではないが、大学生という身分から自立した社会人へ飛び立つとき大学生の仲間と同じ方向に飛び立つわけではない。だからいま、この一瞬、一時を噛みしめることに誰も口をはさむことなどできないのだ。
20X2年4月1日
4月になり社会人としての生活が始まる。始まりとして今までもそうであったように式が存在する。入社式と呼ばれるものである。色々な人が壇の上で話す中、ふと一年前にみた動画の内容を思い出していた。今年の七月が歴史の転換期であるらしい。今までも人類が滅ぶことが陰謀論として展開されてきたが何もないことがほとんどであった。今回もそうであろうという思考のなかで俺は少しだけ退屈な日常に変化が起きることを本当に少しだけ望んでしまった。
20X2年7月4日
それからは怒涛の日々でありあっという間に3カ月が過ぎていった。3カ月の間には色々なことがあった。コミュニケーション能力が乏しい上司との諍いやその諍いによって上司の性格を理解することになりうちとけたことや同期の無断欠勤からの退職代行を使った退職などなど数えきれないほどのことがあった。立て続けにこんなに大きなことが三カ月間に起こることは人生においてなく、動画の内容を思い出し歴史ではなく人生の転換期であるなと思い立った。
苦笑とともに着慣れたスーツを脱ぎハンガーにかける。スマートフォンを机の上に置いた後、そのまま流れるように崩れるようにベットに寝転がる。するとすぐに眠気が襲ってきた。眠気で霞がかった思考でシャワーは明日の朝でいいやとそのまま意識を落とした。
20X2年7月5日
ふと目が覚める。枕元に手を伸ばしスマートフォンを探すが見つけることができない。寝起きでまともに働かない思考から寝る前のことを思い出し机の上に手を伸ばしスマートフォンをつかみ顔もとに運ぶ。スマートフォンから出る光に顔をしかめながら時間を確認する。5時50分まだ寝れるという願望から再び意識を飛ばしそうになるが頭皮の不快感によって行動を開始する。乾燥のために干してあったタオルを手に取り服を脱ぎながら風呂場へ向かう。無造作に脱がれた服をそのまま洗濯機にいれ、風呂場の扉をあける。タオルを床に落とすように手を放し、浴槽の中に立ちシャワーの蛇口をひねる。給湯器が起動して間もないためシャワーから出る水は冷水に近いが、夏の気温も相まって心地が良く寝ぼけた頭を覚醒させる。乱雑に頭皮の洗浄と体の洗浄を終える。床に投げられたタオルを拾い、髪の水分を念入りにタオルに吸収させた後、今度は体の水分をとっていく扉に手をかけドアノブをひねった。その時、けたたましい音が部屋全体に響き渡る。
『まもなく隕石が地球に落下します。衝撃に備えてください。まもなく隕石が…』
自分のベット方面から聞こえてくる音を耳で聴きとった直後、直感的に自身の現在の状況では生き残れないと感じ、慌ててパンツを履き、床に無造作に投げられている高校時代から使っているジャージのズボンを音のなるほうに進みながら履いた。ハンガーに干された洗濯済みのTシャツを無造作につかみ、しわや服が伸びることを気にすることなどないかのようにハンガーからはぎ取り着る。一連の動作を終えたあとついさっきまでスマートフォンから鳴り響いていた音が消えてることに気づき、ベットへ歩みを進め手に取る。スマートフォンの画面は暗くなっていた。電源ボタンを押しても光が点ることはない。
外から重く大きな何かを地面に落としたような音と立っていられないほどの揺れを感じる。直感的に隕石と理解した。その直後窓ガラスが割れ強烈な風圧とともに砂ぼこりが室内に入り込み後方に飛ばされる一瞬の浮遊感のあとクローゼットの扉に叩きつけられる。尋常でない風圧と軽いとはいえ一般人男性の体重の衝撃には扉は突き破られる。視界が霞がかってゆくと同時に走馬灯のように引き延ばされた感覚の中、高速回転した頭と直感でこのまま意識を失えば死ぬと感じる。抵抗を試みるが体は言うことを聞かず、何もすることができない。クローゼットの中の壁に叩きつけられる。日常生活では感じることのない衝撃に耐えることができず、意識を落とした。
20X2年7月?日
月明かりが意識の覚醒を促すかのように顔を照らしている。背中と右腕に感じる痛みにより無理やり意識が暗闇から引っ張り出される。目を開け、痛みから右腕を確認する。瓦礫の破片による切り傷ができており、今もなお右腕からの流血は続いている。止血のため動き出そうとしたときにふと照らしていた光のある上へ目を向ける。視線の先には本来あるはずの天井が存在していなかった。契約しているアパートは一階であるにもかかわらず。だがそんなことよりも注意を惹く光景が広がっていた。視界に広がった夜空にはいくつもの流星が流れており、まさに流星の群と呼べる光景であった。背中の痛みや屋根が存在しないことなどすべて忘れ流星群が消えるその時まで惹かれたように眺めていた。
瓦礫の山の中の空いた空間にいる男へ月明かりは災害を乗り越えたことを称賛するかのようにやさしく照らし続けていた。
小説書くのって大変ですね。