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【0】 始




『誰そがれかくし(たそがれかくし)』

 


 まるで血が滲んだような夕焼けだった。


 空に浮かんだ薄い雲までもが濃い西陽に染まっていた。


 両脇に笹が生い茂った古びた石階段を降りながら、少し前に流れた夕方の防災無線のメロディをふたりで歌っていた。


 神社の境内から真っ直ぐに伸びる石階段を降りきって、周りを見回す。家々の屋根や広がる畑や神社の笹も、赤色の絵の具に厚く塗りたくられているようだった。すべてが夕焼けの重い色の中にあった。


 秋の始まる十月の中旬。


 涼しい風が吹き始めた二十年前のこの季節。


 「バイバイ」


 そう言って笑った彼女の幼い笑顔をまだはっきりと憶えている。


 赤い、赤い、真っ赤な夕陽に照らされて、だんだんと小さくなってゆくその背中をいつまでも眺めていたことも。



 












読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
 血色に染まる記憶のそれは、神社の朱色も相まって夕焼けが赤く朱く瞼の裏を視るようで、目を瞑って尚も浮かび上がる心の傷を表すかに深く刻まれているとわかりました。
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