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万能やられ役小悪党ランピーチに転生しました 〜周りはβ版を遊んでいるのかもしれない  作者: バッド
6章 社長の小悪党

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201/214

201話 悪魔戦争と小悪党

 次元封印されて、細かく分断された地球。だが、地球の衛星たる月は人工精霊封印はされていない。しかし、月は空を仰いでも見ることはできない。月の重力による潮汐があるが、存在自体は遠く昔に消えている。現代の人間はそう考えていた。


 かつては寄り添う恋人のように浮かんでいた月は書物にのみ名を残すものであり、今は消滅してしまったと。


 だが違う。月は消滅することなく存在していた。ハーケーンによる空間隠蔽により、知覚はできないが、はるかな昔より存在していた。


 ——なぜならば、そこにはハーケーンの月面基地が存在しているからだ。次元封印されて細かく分断されたハーケーンの地球基地などとは比べ物にならない規模の軍事基地だ。


 いつかハーケーンの会長が目覚める時に備え、じっと待機しており、悪魔たちは微睡みの中でめざめを待っていた。


 そう表現すると、忠実なる悪魔たちとのイメージもあるが、実際は違う。悪魔たちは元は人間。しかも老人たちばかりだ。


 経営能力に長けて、出世争いに勝ち、自身の派閥を持つ役員やグループ会社の社長などなど。


 企業として存在していたからこそのデメリットであり、ハーケーンの基地の中でももっとも重要な月面基地もそのデメリットが出ており、最高責任者は元は総務出の専務である。


 無論、戦争に対する作戦能力などない。作戦は部下に任せて、かかる費用にいちゃもんを付けて削減し、彼自身は予算をもぎ取り、その予算を彼の派閥の下にいる部下たちにばらまくのが主な仕事である。


          ◇


 月面の裏側に環状に広がる月面基地。本来は起きることなどなく、悪魔たちは眠りについていたが、現在はシトリーの弄した謀略により、緊急事態宣言がされた為に、全てが覚醒している。


 待機状態であった基地は稼働しており、生物の血液が血管を流れるように多くの人間が忙しく働いている。1200年間は長い年月だ。たとえ状態保存の魔法をかけられていても、魔法が付与されていない部分、目につかないところで劣化や故障があるかもしれない。


 なによりも、基地内の兵器が問題なく稼働するかもテストをしなくてはならない。それはコンピューターによるチェックだけでは危険であり、人間の目視によるチェックが必要なのだ。


 なので、多くの人間は休む暇もなく働いている。多くの人間、反対に言うと少ない人間は働いてはいなかった。


「ゲコゲコと語尾につければ、儂の蛙のイメージに近いと思うかね? やはり自身の悪魔のイメージは大事にせんといけないと思うのだよ」


「司令官ってば、相変わらずジョークのセンスが最高ですね。いえ、寝ていた1200年間の間にますますセンスに磨きが入ったのでは?」


「そうかね? まぁ、できる人と言うのはどんな時でも上を目指すということだな、ぶわぁっ、はっはっ」


 司令官の部屋にしてはやけに豪勢すぎる部屋。デスクは重厚で司令官室に相応しいデザインだが、テーブルやソファは王侯貴族たちが使うようなやけに意匠が入った高級感のある、軍事基地には似合わない華美なものであり、壁に設置されている棚にはウィスキーを始めとした、兵士の月給数ヶ月分は軽くする酒瓶が並んでいる。せめて隠せばまだ罪悪感があるのだと思われるが、まるで自宅で酒のコレクションを並べるかのように置かれているので、司令官の傲慢さがわかる。


 司令官はソファに座り、ウィスキーを飲みながら、秘書兼愛人を隣に侍らせて、醜悪な顔を歪めて笑っていた。バーコードハゲの小太りの老人で、顔に刻まれた皺は年月の重みというよりも、人を陥れてきた罪の証に見える。


 老人の名はアスモデウス。ソロモンの悪魔の中でも、高位の者であり、持てる権力をフルに使い手に入れた悪魔体だ。なぜか悪魔の姿に変わると、蛙の身体に変身するので、本人の適合性の無さと、能力の無さからの不具合だとも陰で言われている。


『アスモデウス司令官。なんですか、その無能の演技は? 我らにそのようなことが通じるとでも思っているのであれば心外ですな』


『そのとおりです。そろそろ本題に移った方が良いでしょう』


 だが、その態度は目前に浮いているホログラムに映る他の将官たちに冷笑で返される。つまらなそうな顔で笑う者たちを見て、片目を細めてつまらなそうに鼻を鳴らす。


「ふ、君たちとの付き合いも長いのだ。この無能めと蔑み馬鹿にしてくれても良いのだよ? いや、そのような演技をして、少しは付き合ってくれても良いではないか」


『そのようなジョークに付き合うよりも建設的な話をしたほうが有意義だと思いますがね』


 秘書を押し退けて、ソファにより掛かる。ホログラムの将官たちは地球各地に配置されている軍事基地の司令官たちだ。


 彼らはシトリーとの会談後に、頻繁に連絡を取り合っており、方針を決めようとしていた。いや、方針などという前向きの意見ではない。


「まぁ、そろそろ話を煮詰めていかないとだめだとは考えておったよ。で、地球を支配した際の取り分についてはどうするかね? 儂としては最大の戦力を持つ月面基地の司令官であるこの儂が各地の分配をした方が良いと何度も言っているのだがね」


『最大戦力であるのは認めるが、地球を実効支配できるのは、現地に基地を持つ我らだ。その点を考慮していただきたい』


『となると、要所にある基地の司令官が一番重要となりますな』


『いやいや、待っていただきたい。外郭に存在する基地は外から内を守る重要拠点です。となると分配方法はまた考えねばなりません』


 それぞれ好き勝手に口を挟む将官たち。彼らは地球支配後の分配について、熱心に会話をしているのである。


 彼らの目はギラついており、欲にまみれて、餌を前にした野良犬よりも腹を空かせているかのようだ。


『しかし、シトリー殿にはこの話を持ちかけなくてよろしいのでしょうか?』


「あの女狐は儂らをこき使うだけ使うつもりだ。あの女を話に加えるとろくなことにならん。地球支配をするのには、儂らの力が必要だからこそ苦労して規則の穴を突いたのだろうが、支配が終わった後になにくれと功績を誇り、必ずトップになろうとするに違いない。そんなことを許すわけにはいかんだろう?」


『ですなぁ。我らがこれから命を懸けて地球制圧作戦を行おうとするのに、命を懸けるつもりもなく、その利益だけを享受しようなど許せるわけもない!』


 机を強く叩き怒るふりをする男に、他の者たちも同感だと憤慨した顔で頷く。誰も彼も命を懸けるつもりはない。部下を戦地に行かせて、エアコンのよく効いた部屋で酒でも飲んでいるつもりだが、そんなことは関係ない。


 自身たちの取り分を少しでも増やすために、シトリーは邪魔なだけであったのだ。なので、アスモデウスはわざと蛙の姿でシトリーとの通信を行った。蛙の姿に嫌悪感を持たせて、自身を蔑ませて、話の流れを掴ませないためである。


 そのような小狡い技を使うことがアスモデウスは得意であった。


「しかし地球制圧後の分配の話。全く進みませんし、とりあえずは地球制圧を行ったらどうであろうか? その際の功績に従い、後に決めるというこで」


 その場合は最大戦力を持つアスモデウスが有利になるのだが、そんな内心はおくびにも出さない。それも謀略の一つである。


 それぞれ他の将官たちも、それは理解しているが、各自の部下にはそれぞれ悪魔の中でも一騎当千の個体がいる。功績争いならば勝ち目があるかもと、段々と賛成の空気となる中で、一人がポツリと呟く。


『しかし、コロニーの戦力が回復しているとのシトリー殿の話は本当なのでしょうか? 少し気になるのですが』


「そんなものは嘘に決まっておる。当時、我らの攻勢を受けてコロニーはほとんど滅んだ。そしてシトリー殿は有能だ。コロニーが戦力を回復させるようなことをさせるわけがない。恐らくは少し反撃されたことを拡大解釈しての意見だろう」


 元からアスモデウスはコロニーの戦力など気にもしていない。悪魔戦争当時、敵コロニーは全て破壊して、もはや満足に宇宙船も建造はできない程に追い詰めていた。不滅の人工精霊はいても、建造物は不滅ではない。宇宙船ドッグや武器などの生産工場がなくては継戦は不可能。後は時間の問題で、コロニー側は滅びを待つだけであったのだ。会長が次元封印をされていなければ、ハーケーンが勝っていたと固く信じている。


 その考えは偏っており、情報を無視して一方的に自軍が勝利するとの根拠なき自信ではあったが、他の将官たちも、コロニー側と戦争をしても勝利できるだろう戦力を抱えていると予測しており、これまでのコロニーの活動も確認していたので反対意見はない。


 なので、後は地球支配後の勢力争いだけに注視していたのだが、それが間違いだったと悟るのはすぐ後であった。


 司令室の部屋の明かりが突然点滅して、すぐに赤い灯りへと変わる。部屋が血のような色に照らされているのを見て、不機嫌そうに顔を歪めるアスモデウス。


「なにが起こった? なにかのテストか? 儂は聞いておらんぞ」


 緊急時訓練など説明されても、聞きもしないし、参加をするつもりもないが、会議中におきた予想外であり、恥をかかされたこともあり、荒々しく通信を行う。下手な言い訳をすれば、そいつは減俸か左遷をするかの勢いだ。


 しかし映し出されたオペレーターの顔は真っ青であった。


「司令官! 緊急事態です。コロニー側の、ハンターギルドの艦隊が出現! 現在、防衛戦の準備をしております!」


「ハンターギルドの艦隊? ちっ、封印が解けた時に基地の場所を感知されたか。仕方あるまい。さっさと追い払え。こちらは3000隻の艦隊だ、ハンターギルドのしょぼい艦隊など一掃しろ!」


「不可能です!」


「不可能? 艦隊は出撃準備ができていないということかね?」


「いえ、戦闘配備はされております。ですが、数が違うのです、数が!」


「数? ハンターギルドは全ての艦隊を集めてきたのか? 5000隻くらいか? 救援を要請しないといけない数かね?」


 その場合は、無駄に借りを作ることになる。あまり取りたくない選択肢だと、勢力争いにのみ注視するアスモデウスだが——。


「敵艦は100000隻を超えます。星空が敵の戦艦で埋まっているのです!」


「な、なに? 何隻だと………?」


 オペレーターの絶叫に、シトリーの言葉が脳内にリフレインして、アスモデウスも青褪めるのであった。

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― 新着の感想 ―
オペレーター(スマホ読み上げ機能音声)「敵艦は100000(イチゼロゼロゼロゼロゼロ)隻を超えます。星空が敵の戦艦で埋まっているのです!」 カエル&k「「な、なに? 何隻だと………?」」
[一言] な、なに? 何隻だと………? かぞえきれない、ゼロがおおすぎたんだ
[一言] 盛り上がってまいりました!!!
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